スマホ置き忘れ、車の運転ミス…40代でこんな兆候が現れたら アルツハイマー型認知症は発症25年前から密かに進行する

松井 英子 松井 英子

アルツハイマー型認知症の予防は40歳ごろから意識することが良いと言われています。なぜなら、最近の研究では「認知症は発症の25年前から症状なく進行している」ことがわかったからです。

認知症とは、病気ではなく状態を指す言葉です。脳の病気や障害などによって、認知機能が低下し、日常生活に支障が出てくる状態のことを言います。認知機能が低下すると、同じことを繰り返して話したり、慣れた道で迷ったり、信号に気が付かないなど運転のミスが多くなります。

認知症は原因から4つに分類されますが、6割近くがアルツハイマー型認知症です。

アルツハイマー型認知症は脳神経が変性して脳の一部が萎縮していくことが原因と言われています。脳神経の変性は、ベータアミロイドというタンパク質が脳に少しずつ沈着することで起こります。簡単にいうと、脳にゴミがたまっていくことで、神経がうまく機能できなくなるのです。これは40代から始まります。研究の結果、症状が現れる25年前からじわじわと進行しているとわかりました。

そのため、40歳から認知症を予防する生活を意識しようと提案されています。症状が出てからでは手遅れというわけではありませんが、予防は早くから取り組むほうがいいといえます。

誰もがいきなり認知症になるわけではありません。何かしらの兆候が現れることがほとんどです。認知症の予備軍を軽度認知症障害(MCI)と言います。MCIになったからといって、必ずしも認知症に移行するわけではありません。この段階で発見して早期に対応することで改善が期待できるのです。つまり早期に対応することが大切なのです。

では、どんな兆候に気をつければいいのでしょうか。

まずはもの忘れ。「スマホ、どこに置いたかな」というものの置き忘れや、「それ、なんていうんだっけ」と名前が出てこないことが何度も続くと要注意です。また、判断が鈍くなり、運転などのミスが多くなったと感じることも危険信号です。

精神面に影響が出ることもあります。「あんなに好きだった趣味にも興味が持てなくなった」と変わることも。何をするのもめんどうになる、以前よりもささいなことで怒りやすくなったなどと、一見うつを疑うような「変化」が起きやすい傾向もあります。40代の場合、他の精神疾患や女性なら更年期障害と間違えられることも少なくありません。「疲れているんだろう」と見過ごしてしまうこともあるので、専門医のいる病院で早めに医師に相談しましょう。

最近では認知症の進行を遅らせたり、予防できることが研究でわかっています。それは、適度な運動の継続、質の良い睡眠をとる、禁煙する、人との交流をとる、趣味を楽しむことです。

▽運動の継続

定期的な運動を続けることが予防に対して有効なことは研究で表れています。

40代で予防に取り組むなら「週150分以上の早歩きやもっと激しい運動」がベストです。しかし急に始めるとなるとハードルが高く感じます。運動は継続することが大事なので、すぐに取り組める「一駅手前で降りて早歩き」から始めてみましょう。また、音楽に合わせてのエクササイズなら、人の目を気にすることなく自宅で取り組めます。少し汗をかくぐらいの運動負荷が望ましいです。続けることで、体力も向上し、運動不足も改善できます。結果、生活習慣病の予防にもなり、健康な体を手に入れられます。

▽質の良い睡眠をとる

睡眠不足は認知症のリスクを高めます。認知症の原因となるベータアミロイドは眠っている間に洗い流されます。睡眠時間が減れば脳の掃除時間も減ってしまいます。質の良い睡眠をとるために4点意識しましょう。日中は、朝起きてすぐ太陽を浴びたり、適度な運動を行います。夜は就寝の2時間前までに食事や飲酒を終えるようにし、スマホやパソコンをながめるのをやめるようにしましょう。また、7時間以上の睡眠をとることが長生きにつながります。

▽禁煙しよう

喫煙は脳を萎縮させます。喫煙することで大脳皮質がどんどん薄くなってしまうことがわかりました。大脳皮質は記憶や言語、認識といった重要な認知機能を働かせるところです。萎縮したり薄くなったりすることで、脳の機能はどんどん下がります。禁煙を続けても、一度ダメージを受けた脳は元には戻りません。生活習慣病の予防の観点でも禁煙をおすすめします。

▽人との交流をとる、学び続ける

孤独が認知症を発症しやすくなることが研究でわかってきました。人と交流をすることは、会話をしたり、相手の話を理解したりと常に脳を刺激する状態になります。また、ゲームや囲碁、麻雀などは人と交流するツールになったり、勝つために考えることが脳を使うことになったりします。新しいことへの挑戦も脳を積極的に使うことにつながるので、楽しんで取り組んでいきましょう。

   ◇   ◇

長生きすればほとんどの人が認知症になります。95歳になれば8割の人に症状が現れます。いわば長生きの証なのです。認知症専門医の長谷川和夫さんは、自身も認知症になられました。「認知症になっても見える景色は変わらない」と、家族に支えられながら講演会などの活動を現在も送られています。認知症の予防法は、健康を維持するためにも必要なことがたくさんあります。心身ともに健康に老いるために、自分が楽しみながら取り組んではいかがでしょうか。

【参考文献】

▽「認知症疾患診療ガイドライン2017」一般社団法人 日本精神神経学会
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/nintisyo_2017.html

▽認知症の正しい理解と包括的医療・ケアのポイント 快一徹!脳活性化リハビリテーションで進行を防ごう 第3版  山口晴保 協同医書出版社 2020

▽認知症ポジティブ!脳科学でひもとく笑顔の暮らしとケアのコツ 山口晴保 協同医書出版社 2019

▽認知機能低下および認知症のリスク低減 WHOガイドライン
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/column/opinion/detail/20200410_theme_t22.pdf

▽精神科医が教える ストレスフリー超大全ー人生のあらゆる「悩み・不安・疲れ」を無くすためのリスト 樺沢 紫苑 ダイヤモンド社 2020

▽認知症の第一人者が認知症になった NHK NスペPlus
https://www.nhk.or.jp/special/plus/articles/20200121/index.html

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