藤ヶ谷太輔「楽しかった思い出は一つもない」 三浦大輔監督との過酷な撮影を明かす 映画『そして僕は途方に暮れる』【インタビュー】

2023年1月8日 / 12:00

 2018年にシアターコクーンで上演され、各所から称賛を浴びたオリジナルの舞台を、脚本・監督の三浦大輔と主演の藤ヶ谷太輔が再タッグを組み、映画化した『そして僕は途方に暮れる』が、1月13日から公開される。本作で藤ヶ谷が演じるのは、平凡なフリーター・菅原裕一。ほんのささいなことから、恋人、親友、先輩や後輩、家族…とあらゆる人間関係を断ち切り、逃亡する姿を描く。藤ヶ谷と三浦監督に、過酷だったという撮影の裏話を聞いた。

(C)2022映画『そして僕は途方に暮れる』製作委員会

-この作品を映画にという思いは、以前からあったのですか。

三浦 舞台を作っている時から、映像化できないかなという思いはずっとありました。僕の中で、藤ヶ谷くんの表情がとても印象的だったんです。その表情を映像ならばもっと伝えられるし、舞台とはまた違った『そして僕は途方に暮れる』ができるんじゃないかとも思っていたので、今回、なんとか実現できて良かったです。

-藤ヶ谷さんは、映画化の話を聞いてどう感じましたか。

藤ヶ谷 また裕一に会えるんだという喜びと、舞台でできなかったことを立体としてお見せできるのではないかという期待があったのですが、同時に、これは相当ハードな撮影になるなと(笑)。

-実際に、ハードな撮影になりましたか。

藤ヶ谷 まず、楽しかった思い出は一つもないです。なので、舞台あいさつで共演者の方と、「あのシーンではあんなことあったよね」「やめてくださいよー」みたいな、楽しいやり取りは一切できないと思います(笑)。舞台の稽古もそうでしたが、三浦さんの中での「OK」はどこなのか、小さな穴に細い針を通し続けるような感覚で演じていました。ここだ!と思っても、次のシーンではそこじゃないこともあって…。

-OKテイクが出るときは、藤ヶ谷さん自身にも手応えはありましたか。

藤ヶ谷 あるときもありましたし、分からないときもありました。一回でOKということは100パーセントなかったので、模索しながら演じていました。なので、出来上がった映像を見たときに、自分がどんどんやつれていく感じがリアルに映っていて、こんなことになっていたんだと(笑)。この現場に、裕一にしてもらったという感覚でした。三浦さんは、こうしてお話していても分かるように、すごく柔らかい方で、撮影のときも、お昼ご飯を食べながら「今日こそ早く帰りたいよね」なんて会話をしているんですよ。それなのに、現場に入ってモニターの前に座ると人格が変わるんです(笑)。

三浦 それは僕の悪いところです(笑)。藤ヶ谷くんが全身全霊で演じてくださっていたので、僕としても必死にならざるを得なかったんです。

-舞台の演出とはまた違う感覚でしたか。

三浦 むしろ僕がテイクを重ねるのは、舞台出身ということが関係しているのかもしれません。舞台は、その場で起きたことを稽古して作り上げていくものだと思うので、映像でも同じようにその場で細かい点まで訂正しながら完璧に作り上げるものだと、どこか考えてしまっているのだと思います。僕がまだ力を抜くべきところだったり、時間をかける必要性だったりをつかみ切れていなくて、全カットを必死に撮ってしまうということは反省点としてあります。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

若葉竜也 主演の杉咲花は「常に新鮮で驚かされます」 4度目の共演となる医療ドラマに手応え十分「アンメット ある脳外科医の日記」【インタビュー】

ドラマ2024年5月13日

 カンテレ・フジテレビ系で毎週月曜夜10時から好評放送中の「アンメット ある脳外科医の日記」。元・脳外科医の子鹿ゆずる氏が原作(漫画:大槻閑人氏)を務め、『モーニング』で連載中の同名漫画を原作に、不慮の事故で記憶障害を抱えた脳外科医・川内ミ … 続きを読む

「素晴らしい技術も、全ては皆さんを映画の世界に連れていくためのサポートに過ぎないと思っています」『猿の惑星/キングダム』ウェス・ボール監督【インタビュー】

映画2024年5月13日

 現在から300年後、人類と猿の立場が完全に逆転し、猿が独裁支配をもくろむ衝撃的な世界を大胆に描いた「猿の惑星」新サーガの第1章『猿の惑星/キングダム』が公開された。来日したウェス・ボール監督に話を聞いた。 -最初の『猿の惑星』(68)から … 続きを読む

「光る君へ」第十八回「岐路」女にすがる男たちの姿と、その中で際立つまひろと道長の絆【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年5月11日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。5月5日に放送された第十八回「岐路」では、藤原道長(柄本佑)の兄・道兼(玉置玲央)の死と、それによって空席となった関白の座を巡る道長と藤原伊周(三浦翔平)の争いが描かれた。  妻・定子(高畑充希 … 続きを読む

【週末映画コラム】映画館の大画面で見るべき映画『猿の惑星/キングダム』/“お気楽なラブコメ”が久しぶりに復活『恋するプリテンダー』

映画2024年5月10日

『猿の惑星/キングダム』(5月10日公開)    今から300年後の地球。荒廃した世界で高い知能と言語を得た猿たちが、文明も言語も失い野生化した人類を支配していた。そんな中、若きノア(オーウェン・ティーグ)は、巨大な帝国を築く独裁 … 続きを読む

「場所と人とのリンクみたいなのものを感じながら見ると面白いと思います」今村圭佑撮影監督『青春18×2 君へと続く道』【インタビュー】

映画2024年5月9日

 18年前の台湾。高校3年生のジミー(シュー・グァンハン)はアルバイト先で4歳年上の日本人バックパッカーのアミ(清原果耶)と出会い、恋心を抱く。だが、突然アミの帰国が決まり、落ち込むジミーにアミはあることを提案する。現在。人生につまずいた3 … 続きを読む

Willfriends

page top