「サイン色紙転売は構わない」フォロワー50万人超えの人気漫画家・ぬこー様ちゃんが肯定した理由

色紙の転売、ぬこー様ちゃんの見解

  漫画家のサイン色紙はネットオークションやフリマサイトで転売されることが多い品物のひとつだが、それに対する漫画家の反応もまた、様々である。「絶対に転売は嫌だ」という人もいれば、「別に転売されても構わない」という人もいる。基本的にSNSで受けがいいのは前者である。「転売対策をしっかり行っている」と語れば、作家の印象はよくなり、株が上がる。

  対する後者はあまり声を上げることがないが、実際は潜在的に多いと考えられる。もちろん、わざわざ「どんどん転売してくださっていいですよ」と言う人は稀ではあるが。そんななか、大人気漫画家でフォロワー50万人超えのぬこー様ちゃんが、10月22日にXを更新。色紙転売に関して、「僕は転売してもらっても全然構わない系です」と見解を述べた。

 ぬこー様ちゃんが転売をどのように考えているのかは、これ以上明言されていない。しかし、過去にはコミケで販売されたグッズの転売に対して、「メルカリに転売されるのもある意味話題になるので僕としては損がない。グッズはどうせ近々通販するから誰も困らない。みんな幸せハッピーエンド!!!!」と語っていることから、転売屋(転売ヤー)をそれほど敵視していないことがわかる。

 
転売に対する意見も様々ある

  ファンは漫画家に対し、「色紙が転売されると悲しむのではないか」と考えることが多いが、転売を特段気にしないという人がいるのも事実である。なかには色紙が二次流通市場で高くなることを、人気のバロメーターとして肯定的にとらえる作家もいる。

  記者が以前に取材したある漫画家A氏は、色紙が何度もネットオークションで転売されている。しかし、「転売されているとファンが教えてくれることがあるけれど、俺はそんなの知りたくないし、どうでもいいんだよね(笑)。そもそも、あげた色紙のことなんて、どうされようと俺は興味がないし、どう反応すればいいのか困る。転売を許さないとでも言えばいいんですかね?」と話していた。

  そして、こうも話していた。「俺のコミックスなんて、みんな飽きたら中古屋に売るでしょ(笑)。俺は正直、そっちの方が嫌だなあ。だって、中古でばかり買われると、明確に新刊の売れ行きに関わってくるし、印税に差が出るんだから。コミックスを中古屋で買われて、『ファンです!』と言われるのも困る(笑)。海賊版はもっと嫌だし。色紙なんかどうでもいいから、単行本は新刊で買ってくれよ」

漫画家の考え方も色々あるもの

  15~20年ほど前、とある美少女ゲームの人気イラストレーターの色紙などがネットオークションで転売され、数十万円の高値で落札されたことがある。現在なら、出品者がSNSで責められそうだし、購入者も「転売ヤーから買うな」と叩かれそうだ。ところが、当時の2ちゃんねるなどでは、出品者をせめる風潮は特になく、高額で購入したファンに対しては好きなものに金を出せる“オタクの鑑”のように讃える風潮があった。

   そして、さらにそのイラストレーターが所属するゲームメーカーの社長は、イラストレーターの原画集でその金額を引き合いに出し、熱心なファンがいる証拠であると、むしろ肯定的に語っている。転売した人物を批判するようなコメントは一切なかった。

 また、漫画家の色紙をファンから買い取り、販売していることでも知られるある古書店の販売カタログには、かつて藤子・F・不二雄や藤子不二雄(A)、赤塚不二夫などの巨匠のインタビューが掲載されていた。同じ号で、自身がファンに贈った色紙が数万円で販売されていたのに、巨匠たちはそのことにはまるで言及していなかった。おそらく、色紙にそれほど関心がなかったとも考えられるし、少なくとも、現在と今では転売に対する意識が大きく異なっていたことの表われといえよう。

  ここでは転売の是非について論じるつもりはないが、少なくとも、色紙に対する思いは漫画家・イラストレーターによっても様々なのだ。そして、転売を特に気にしない作家が少なくないことも、理解しておく必要があるだろう。「先生はなんで転売ヤーを放置しておくんですか!」「転売ヤーを許さなんてありえない!」のような作家への攻撃がたまに見られるが、慎むべきではないか。実際にそうした攻撃を受け、困惑している作家を記者は知っている。漫画家の思想にも多様性があることを理解すべきであろう。

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