江口寿史 × ルカ・ティエリ、日伊の異才二人が描く東京の街と音楽『トーキョー・アルテ・ポップ』展レポ

江口寿史 × ルカ・ティエリ、イラスト展レポ

 漫画家/イラストレーターの江口寿史と、東京都在住のイタリア人イラストレーター/コミックアーティストのルカ・ティエリが、イラストレーション展『トーキョー・アルテ・ポップ(TOKYO ARTE POP)』を東京・九段下の「イタリア文化会館 エキシビジョンホール」にて開催中だ(入場無料、10月29日(日)まで)。

 TOKYO ARTE POPは日本語で「東京ポップアート」を意味する。これを合言葉に開幕した本展では、古さと新しさが入り混じる東京の風景とそこに生きる人物を、江口寿史とルカ・ティエリがポップに描き出す。

東京を江口寿史のタッチで記憶に焼き付けられる贅沢さ

 『すすめ!! パイレーツ』、『ストップ!! ひばりくん!』などの人気漫画を世に送り出し、イラスト界でも最前線で活躍し続ける江口。本展ではシンプルな線で描かれる「彼女」たちが、なまめかしくてちょっと無機質な眼差しをフレームのこちら側に向け、体温をも感じる空気を含んだ仕草で目を奪う。

 そのモーションを支える骨組みのように描かれた背景にも注目したい。歩道橋、レンガ塀から駅前デパートまで、近い未来に失われてしまうかもしれない街の風景が、江口のポップなタッチで脳裏に焼きついていくことを贅沢に思う。江口自身も、再開発により目まぐるしい変貌を遂げる東京の街の一コマをイラストの中に真空パックしようとしているのかもしれない。

ガレージパンクに運命を拓かれたルカ・ティエリ

 ナポリ近郊生まれのイタリア人、ルカ・ティエリは無類の音楽好きとして青春を送った。特に日本のパンク/ガレージパンクバンドに魅了されたティエリは、2004年に観光旅行で初来日を果たす。

 「イギリスやアメリカのリズム&ブルースをぶち壊せる日本のさまざまなガレージパンクを発見したことがきっかけで、初めて2004年に来日した」ー ルカ・ティエリ(展示より抜粋)

 この音楽愛こそが彼を動かし、運命を切り拓いた。すでにアーティストとして注目を浴びていた彼が真っ先に向かったのは美術館でもギャラリーでもなくバンドが演奏するライブハウスだったのだ。Guitar Wolf、JET BOYS、LET'S GO's、VIVIAN BOYS、You Got A Radio! などのガレージパンク・バンドに衝撃を受けたティエリは、その後も日伊を往復し、2010年に日本で初の個展開催を経て、2012年に東京に定住。比類なきアーティストとしての道を歩み続けている。

 アメリカのアーティストにも影響を受けたというその作風は国境と時代を超えて唯一無二。昭和で夢見た近未来の世界をポップな階調で表現し、懐かしさを呼ぶプロップ使いでレトロフューチャーを令和に届ける。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「エンタメ」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる