『鬼滅の刃』“風柱”不死川実弥が炭治郎にキれた本当の理由とは? 「柱合裁判」の真実を考察

『鬼滅の刃』不死川実弥が炭治郎にキれた理由

※本稿は、『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴/集英社)のネタバレを含みます。同作を未読の方はご注意ください。(筆者)

 5月14日に放送されたテレビアニメ『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』第六話(「柱になるんじゃないのか!」)にて、不死川実弥・玄弥兄弟の壮絶な過去が明らかになった。

 不死川実弥は、政府非公認の鬼狩りの組織「鬼殺隊」剣士の最高位――「柱」の1人であり、弟の玄弥は、主人公・竈門炭治郎と同期の隊士である。

 もともと2人には、5人の弟と妹がおり、粗暴な父親が死んだ後は、働き者の母親を支えて、慎ましくも幸せな日々を送っていた。ところがある夜、突然の“悲劇”が彼らを襲うことになる。

 夜明け前に帰ってきた母が鬼と化し、弟と妹を惨殺したのである。とっさに実弥は、生き残った玄弥を守るため、命がけで鬼を倒す。しかし、その様子を目にした玄弥は、混乱のあまり、思わず兄にこんなひどい言葉を投げかけてしまうのだった。「何で母ちゃんを殺したんだよ!! 人殺し!!」と。

 その後、兄は弟のもとを離れ、鬼殺隊の「風柱」となり、弟は、そんな兄に謝るために同隊に入隊――だが、すっかり凶暴な性格に変わってしまった実弥は、玄弥の存在を一切認めようとはしなかった……。

不死川実弥はなぜ柱合裁判でキれたのか?

 なお、不死川実弥が、『鬼滅の刃』本編で初めて姿を見せるのは、第45話「鬼殺隊柱合裁判」(6巻所収)においてである。この時、読者の多くは彼にあまり良い印象を抱かなかったのではないだろうか。

 というのも、その「柱合裁判」の場において、実弥は、鬼舞辻無惨(鬼の首領)によって鬼にされた竈門炭治郎の妹・禰豆子の体にいきなり刀を突き立てるのである。つまり、彼は、一応は正義の側の人間であるにもかかわらず、ほとんど悪役と同じような登場の仕方をするのだ。

 妹を傷つけられ、激怒した炭治郎は実弥に向かってこう叫ぶ。「善良な鬼と悪い鬼の区別もつかないなら、柱なんてやめてしまえ!!」

 この言葉を聞いた実弥は、炭治郎に対して本気でキれるのだが、それはただ単に、上官に対する口の利き方がなってない、というだけでなく、実弥が信じている“戦うための前提”が崩れかねないものだったからだ。

 そう、前述のように、鬼になった母を殺(あや)めた過去を持つ実弥にとって、「善良な鬼」などというものはこの世に存在してはならないのである。彼の中では鬼は全て「悪い」存在であり、だからこそ問答無用で殺さなければならない。そうでなければ、自分も母も、あまりにも惨めではないか。

 むろん、禰豆子が人を襲わない鬼であるということは、“情報”としては事前に知らされていただろう。しかし、実弥は、(母や弟、妹のことを思えば)それを認めることはできなかったのである。

炭治郎と禰豆子の戦いは、味方を納得させるための戦いでもあった

 一方の炭治郎は、この時すでに、禰豆子の他にも、鬼舞辻無惨と敵対する珠世と愈史郎という「善良な鬼」と出会っている。つまり、客観的に見ても、彼の言い分は正しいのである。だが、正しいからといって、全ての人間を納得させられるとは限らない。

 じっさい、9人いる「柱」の約半分は、当初は竈門兄妹を斬首すべしという考えであったし、とりわけ、鬼を心底憎んでいる実弥(と「蛇柱」伊黒小芭内)に対しては、言葉ではなく、態度で示していく必要があるだろう。現に炭治郎と禰豆子は、この後、無限列車、吉原遊郭、そして、刀鍛冶の里での戦いの中で、「柱」や周りの隊士たちに、「善良な鬼」もいるという“事実”を命を賭して証明し続けることになる。

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