■仕事の話をする夫の特徴
家で仕事の話ばかりする夫は、どんな人なのだろう。
「どちらかといえば、子どものころから『みて、みて~』とお母さんのうしろを追いかけるタイプの人や、他人(自分以外の人)より自分に意識が向いている人に多い傾向があります。つまり、自己顕示欲があり自己表現する人が、仕事の話をよくするタイプの人といえるでしょう」(きくちさん)
仕事の成果を、一番身近にいる妻に聞いてほしいという気持ちは、わからなくはない。
「仕事の話ばかりする人には、認められたいと思う承認欲求が強い傾向があります。そのいっぽうで、会社で自分の思うようにならない不満を抱いているケースもあるでしょう」(きくちさん)
特に後者のケースでは愚痴っぽくなる可能性が高い。それを毎日聞かされる妻はつらいだろう。
■そんな夫とうまく付きあう方法
毎日仕事の話をする夫が、いきなりしなくなるのは非現実的な気がする。せめてうまくコミュニケーションをとる方法はないのか聞いてみた。
「夫が話しだしたら、無視したりいきなり否定したりするようなことは言わず、『ああ、そうなんだ。そんなことがあったのね』 と、いったん受けとめる言葉で返すのが定石です。さらに、『それでどうなったの?』と掘りさげる質問してあげたり、『そのときどんな気持ち(気分)になったの?』と気持ちを聞いてあげたりするのも効果的でしょう」(きくちさん)
意気揚々と仕事の話をしはじめて、こうした反応が返ってくると、思わずもっと話をしてしまいそうだが……。
「夫が求めれば、妻は自分の考えを伝える。求めていない場合は傾聴と受容で十分です。総じていえることは、夫の承認欲求を満たしてあげることです。その上で、妻も自分の『こうしてほしい』という要求は伝えてよいのです。その場合の伝え方はアサーティブ(自分の気持ちや考えをストレートに表現するやり方)に、自分の気持ちに素直になり、相手には誠実に伝えることを心がけましょう」(きくちさん)
なるほど。夫婦関係で大切なのは「ギブアンドテイク」ではなく、「ギブアンドギブ」の関係になることなのだ。見返りを求めるのではなく、妻も夫もお互いに与えることに喜びを感じる関係性の構築が重要なのだろう。
■会話の中で地雷を踏まないようにするには
最後に、さすがにこれはよろしくないと思われるリアクションについても教えてもらうことにした。
「絶対にNGなのが、無視したり聞こえないふりをしたりすることです。聞いてもいきなり否定したり、言葉を遮ったりするのも同様に避けるべきでしょう」(きくちさん)
これは、大人の対応としても不適切だ。
「話をよく聴かずに、自分の意見や考えをたたみこむように言うことや、夫が話しはじめているのに、自分の話をはじめてしまうのもNGです。そして、『なんであなたはそういう人間なの!』と、人格そのものを否定することも絶対にやめるべきでしょう」(きくちさん)
心底、仕事の話を聞くのが嫌になった場合には、つい感情的になってこうした対応をしてしまうこともあるかもしれない。しかしここは冷静になり、夫婦関係を円満に継続するためにも、なんとかうまくやり過ごしたいところである。
人の性格は一朝一夕では変わらないので、ある程度は長い目で見る必要があるだろう。これからも末永く一緒に暮らしていく夫。そうであれば、うまくコミュニケーションを取る術を早めに身につけておきたいところだ。
●専門家プロフィール:きくちみよこ
家族(夫婦・親子)の人間関係に特化した相談室を開設。家族相談士で心理カウセラー。聴くだけのカウンセリングではなく目標達成まで精一杯サポートしている。著書に「しあわせ思考」がある。