暗証番号なしの「マイナンバーカード」に意味はある? カギは「券面情報」(1/3 ページ)

» 2023年07月14日 06時00分 公開
[井上翔ITmedia]

 最近、マイナンバー(個人番号)カードに関するニュースを耳にしない日はありません。特に、同カードを健康保険証として利用する「マイナ保険証」については、保険者の情報登録ミスに起因するトラブルが相次いでいます。

 そんな中、主に高齢者がマイナ保険証として利用することを想定して、11月をめどに「暗証番号設定のないマイナンバーカード」の発行を開始できるように検討が進められています。

 SNSの反応を見ると「ここまでやって保険証をマイナンバーカードに統合する意味が分からない」という声を見かけます。しかし、本当に意味のないことなのでしょうか……?

マイナンバーカード 暗証番号のないマイナンバーカードって本当に意味がないんですかね……?

マイナンバーカードには「保険証」のデータが“ない”

 まず、そもそも論として、マイナンバーカードのICチップには、どのようなデータが搭載されているのでしょうか。箇条書きすると、以下の通りです。

  • 券面アプリケーション(AP):カードの券面情報を画像として保管
    • 表面はもちろん裏面の情報も記録している
    • 券面が物理的に改ざんされていないかどうかをチェックする際に利用する
  • 券面事項入力補助AP:カードの券面情報をテキストデータで保管
    • 保管されているのはマイナンバー(個人番号)と「基本4情報」(氏名、住所、生年月日、性別)
    • 保管データを“全て”読み出すには、4桁の暗証番号(※1)が必要
    • 保管データの一部を読み出すには、カードに記載された所定の情報が必要
  • 電子証明書AP(JPKI-AP)
    • 電子申請時に署名を添付するための「署名用電子証明書」と、本人確認時に利用する「利用者証明用電子証明書」の2種類を併載
    • 署名用電子証明書を添付するには6〜16桁のパスワード(数字/英大文字)が必要
    • 利用者証明用電子証明書を読み取るには4桁の暗証番号(※1)が必要
  • 住基AP:カードの所有者に割り当てられた「住民基本台帳番号」を保管
    • 読み出すには、4桁の暗証番号(※1)が必要
  • 条例利用AP:国または地方自治体が独自に利用できる領域(空き領域)
    • 国が利用する場合は、総務省(総務大臣)が省令などで利用方法を定義する
    • 地方自治体が利用する場合は、条例を定めて利用方法を定義する

(※1)利用者証明用電子証明書、券面事項入力補助AP、住基カードAPの暗証番号はそれぞれ個別に設定可能(同じにしても構わない)。ただし、自身の生年月日やセキュリティコード(カード表面にある4桁の数字)は設定できない

 ICチップには上記以外の情報は搭載されていません。勘違いしている人も多いのですが、マイナンバーカード自体は健康保険証としての情報を持ち合わせていないのです。

搭載内容 マイナンバーカードのICチップに搭載されているのは「券面AP」「JPKI-AP」「券面入力事項補助AP」「住基AP」「条例利用AP」の5種類のデータで、それ以外のデータは一切保存されていません(総務省のWebサイトより)

保険証として機能するために必要なのが「オンライン資格確認」

 繰り返しですが、マイナンバーカード自体には健康保険証としての情報は搭載されていません。「じゃあ、どうやって健康保険証として機能するの?」という疑問に対する答えは、健康保険の「オンライン資格確認」という仕組みです。

 オンライン資格確認の大まかな流れは以下の通りです(既に「マイナポータル」での登録が済んでいることを前提としています)。

  1. 被保険者(患者)が医療機関にあるリーダーにマイナンバーカードを置く
  2. 被保険者が画面の指示に従って本人確認(認証)を行う
  3. 「社会保険診療報酬支払基金(支払基金)」または「国民健康保険中央会(国保中央会)」に被保険者情報を照会
  4. 照会結果を「資格確認端末」「レセプトコンピュータ」に反映(表示)

 この一連の流れによって、マイナンバーカードの保有者は被保険者本人なのかどうか被保険者はどのような健康保険に加入しているのか(していないのか)を即座に確認できます。この際に、医療機関にはマイナンバーは伝わりません

仕組み マイナ保険証における「オンライン資格確認」の流れ。マイナンバーそのものではなく、マイナンバーカードにある本人確認情報を使って照会を行っているので、医療機関にマイナンバーが伝わることはありません厚生労働省の資料より:PDF形式)

 最近ニュースで話題の「他人の情報が表示される」「資格情報なし(≒保険未加入)と表示される」問題は、保険者が支払基金/国保中央会に登録する情報に誤りがある(または速やかな情報変更を怠っていた)ことが原因です。これはマイナ保険証固有の問題ではなく、現行の健康保険証でも、オンライン資格確認を行うと起こり得ます

厚生労働省が公開している「オンライン資格確認」の事例紹介動画。オンライン資格確認は、マイナ保険証だけでなく通常の保険証(医療証)の資格確認でも利用するものです
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