生成AIを使った絵描きに人気イラストレーターが警鐘「依頼する方も審美眼を問われる地獄」

■生成AIでトラブル続出の可能性

 一時期のSNS上では、人気漫画家やイラストレーターが生成AIの問題に触れるのはタブーとする空気が漂っていた。しかし、最近になって言及する人が増えてきた印象を受ける。2月23日にはライトノベル『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の挿絵などを手掛けたイラストレーターのかんざきひろがXを更新し、生成AIに関してコメントした。

 かんざきひろは、“生成AIに手を染めたであろう人”が平気で仕事を募集している現状に触れ、仕事を依頼する側、すなわち編集者などのクライアント側の審美眼も問われる世の中になってきたと語った。さらに、個人間の取引では、手描きだと思っていたものが実は生成AIで描かれていたなどして、騙された、とトラブルに発展する例が増えるのではと危惧していた。

  かんざきひろが指摘した問題は既に水面下で起きており、指摘通り、企業も、個人も、生成AIを気にしなければいけない時代になっているのは間違いない。生成AIで出力されたイラストは、2年前はまだ手など細部の表現がぎこちなかった。しかし、進化が凄まじく、もはや見分けはつかないレベルに達している。しかも、画一的な絵柄ではなく、相当個性的な絵柄でも出力できるようになった。

■クライアントは数字ではなく自らの審美眼を信じるべき

 生成AIは確かに便利なものだが、使う側のモラルが問われる。出力した絵を使って、「自分が描いた」などと偽装できる状況になっているため、詐欺に使われる可能性もある。漫画家やイラストレーターのなりすましが誕生する恐れもある。さらに、「アニメ会社A社の作風で成人向けの絵」「イラストレーターB氏の絵柄で卑猥な絵」などといった要求にも対応できるため、著作権や著作者人格権の面からも問題になりそうだ。

  生成AIに関連するトラブルを防ぐため、企業、クライアントはどうすればいいのか。筆者は、審美眼を磨くのももちろん大切だが、周りの意見に左右されずに、自分の感性で好きだと思うイラストレーターに依頼をすることがもっとも大事だと考える。昨今の人々は数字に左右されすぎである。編集者も「この人は20万人のフォロワーがいるから大事だろう」「“いいね”がたくさんついているから人気がありそうだ」などと、数字を見て仕事を依頼する例が少なくないと聞く。

  生成AIが出力したイラストは、清く、正しく、美しく、洗練されていて、しかもパッと見てきれいで万人受けしやすく、“いいね”を集めやすい要素が揃っている。誰とは言わないが、昨今、SNS上で多くのフォロワーを有するイラストレーターが相次いで盗作疑惑、トレース疑惑をかけられて“炎上”したことは記憶に新しい。疑惑によって、企業側がイラストを使った商品を撤去する事態になったケースもあった。

  数字に左右されてしまうと、こういった問題を見抜けなくなり、生成AIに引っかかる可能性も高いと筆者はみている。繰り返しになるが、クライアントはこうした数字に引っ張られるのではなく、自分の感性を信じ、本当に好きで、推せると思ったクリエイターに仕事を依頼するべきではないだろうか。

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