第1回「俺って役に立っていない」 東京から逃げ出そう、55歳の決断
【A-stories】55歳の「逃げ恥」体験 無給で働いた1年
私は現在56歳。アラ還の一記者だ。
20年以上、医療や介護、年金など社会保障の取材を続けてきたので、専門記者といわれることもある。
一方で管理職のポジションとはほぼ縁が無く、出世とはほど遠い生活を送ってきた。
そんな私が2021年春から朝日新聞社を休職し、大分県にある社会医療法人で1年間、無給の「研修生」として過ごした。
なぜ、そんなことをしたのか。
「医療・介護の現場での体験を通して、より専門性を深めるため」。こんな、世間体のいい語りもできる。
しかし1年の休職を決めた理由は、もっと差し迫ったものだった。
一言でいえば、新型コロナを引き金に、メンタルがだんだんとまずいことになったのだ。
ここ数年、配属されていたのは、社会保障とはあまり関係ない部署だった。必死になって新たな分野を取材して、自分の居場所を見つけようとした。
だが、自らに「有用感」を持てない状態が続き、少しずつ心に疲れがたまっていった。
一つ原稿を書き上げても、次の原稿にとりかかるエネルギーがすぐには湧いてこない。でも評価を得るためには、動き続けなければならない。
常に何かに追われるような気分なのに、心身に力が入らず、息切れした。
ステイホームが続く中、リア…