そして、こういったトラブルに対して、菩提寺は先祖代々のお墓という奥の手を使う。つまり菩提寺の言うことが聞けないなら、お墓に納骨をさせないぞと言うのだ。「教えて!goo」でも菩提寺ともめているという方から「菩提寺と納骨に関して教えて下さい」という質問が寄せられている。
■菩提寺とのトラブルは現在進行形で頻発している
今回はこの菩提寺とのトラブルについて、全国で家族葬を執り行っているという「心に残る家族葬」の葬儀アドバイザーに話を聞いてきた。
「弊社のコールセンターでも、菩提寺様についての相談をよく頂いております。その多くはお布施が高いから、無宗教で葬儀をしても問題ないか?あるいは他の寺院を紹介して欲しいというものです」
葬儀の現場でも菩提寺とのトラブルが起こっているようだ。
「別の寺院を紹介して欲しいというご相談には、基本的にはお断りしています。菩提寺様があった場合、その菩提寺様の許可がない限り、なんと言われようとこちらで寺院の紹介は致しません。なぜなら無断だと明らかになった場合に、菩提寺様がお怒りになり、結果的にお客様と菩提寺様でトラブルになるからです」
■無縁墓の増加
菩提寺との関係を簡単に解消できない理由は、そのお寺に先祖代々のお墓があるからということがわかったが、そういったことが影響しているからか、お墓が放置されて、その数が増加傾向にあるという。いわゆる無縁墓問題だ。
無縁墓問題は、檀家とのトラブルだけが原因ではない。理由は少子化による墓守の不足、墓守の高齢化、墓が遠くて管理できない、信仰心の希薄化、墓以外の埋葬方法(散骨や手元供養など)の多様化などさまざまである。
「無縁墓の増加は度々メディアでも取り上げられています。ご指摘通り、いろいろと事情がありますが、一定条件を満たすとお墓は撤去されてしまうので注意が必要です」
ちなみに無縁墓が増えるということは、その分お寺の収入も減る。お寺の経営という観点で考えると、撤去という対応も致し方ないのかもしれない。
■お寺はどうやって稼ぐかが問われている
檀家制度は江戸時代にキリスト教を禁止するために生まれた。その内容は、葬儀や供養に関して寺院に一切を任せることを条件に、寺院に対してお布施という形で経済支援を行うというもので、全国民が対象となった。
今でも檀家制度は存在しているが、崩壊しつつあることは間違いない。事情は複雑であるため、簡単には片付けられないが、檀家制度の崩壊がお寺の経営を悪化させているということと、菩提寺と檀家のトラブルに相関関係はあるだろう。そしてその結果、菩提寺と檀家の関係が悪くなり、さらに無宗教の葬儀が増えるという負のスパイラルだ。
檀家としては離檀や墓じまいや改葬、他の埋葬という方法で菩提寺とのトラブル回避は可能だが、お寺の経営問題は悪化していく一方だ。お寺には、檀家のお布施に頼らない新しいお寺としての在り方が問われている。これからはお寺が新しいことにチャレンジしていたら、金儲けなどと批判せずに、温かい目で見守ってあげた方がいいのかもしれない。
●専門家プロフィール:心に残る家族葬 葬儀アドバイザー
家族葬こそが、故人との最後の時間を大切に過ごしたいという方に向いていると考え、従来の葬儀とは一線を画した、追加費用のかからない格安な家族葬を14万3000円から全国で執り行っている。
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