乃木坂46『真夏の全国ツアー2019』で目撃した“円熟と継承”が交差する景色

乃木坂46『真夏の全国ツアー』最終公演レポ

 乃木坂46の『真夏の全国ツアー2019』は、9月1日に明治神宮野球場で行なわれた東京公演Day3でファイナルを迎えた。キャプテンの桜井玲香がこのツアー最終日をもって卒業したことにもあらわれるように、ここしばらくの乃木坂46はメンバーの循環・継承の時期を迎えている。また同時に、卒業した人々も含めた初期からのメンバーの活躍を中心に、グループの表現としての円熟期に到達しているのが近年の乃木坂46でもある。今夏のツアーは総体として、その円熟期と継承期とが重なり合った時期ゆえのパフォーマンスが随所にみられた。

 グループの円熟期としての立ち振る舞いがあらわれるのは、ライブ序盤で畳み掛けられる夏楽曲の連続、そして東京公演ではライブ中盤に、各地方公演ではセットリスト冒頭に組まれた「インフルエンサー」「命は美しい」「何度目の青空か?」といったシングル表題曲である。全国ツアーのシーズンを告げるような夏リリースの楽曲群のパフォーマンスは、今や世間的に巨大なポピュラリティをもつアーティストとしての陽性の強さをたたえている。また、「インフルエンサー」をはじめとするシングル曲は、歳月をかけてメジャーグループとしてのスケールを伝える、乃木坂46の代表的楽曲に熟成されてきた。それらのシングルが発表された頃には振付の難度などから“挑戦”的な楽曲としても言い表されてきたが、もはやそうしたかつての印象を置き去りにして、グループの重厚さを示す作品となって久しい。現在の乃木坂46の余裕が見てとれるのは、これらの楽曲においてだろう。

 他方で、発展段階にある新進メンバーをこの充実期のグループに包摂しながら、次代の形を模索していることがうかがえるのは、ツアー限定で組まれたユニットによるパートである。これまでのアンダーライブなども含めて、特定のライブツアー限定のユニットでは、既存楽曲をいかに再解釈して異なる色をのせてゆくかが醍醐味だが、今年はとりわけこのパートに、円熟と継承とが交差する景色をみることができた。

 たとえば齋藤飛鳥と遠藤さくらによる「他の星から」はその象徴だった。元々、乃木坂46のデビュー2年目に誕生したこの楽曲はメンバー構成や振付や衣装など、オリジナル版のビジュアルが強く印象づけられた、ユニット曲のなかでも屈指の人気作品である。今回のライブでは、いわばリリース時の「型」が色濃く残るこの作品に大きなアレンジを加え、現在の乃木坂46のイメージを踏襲した振付を施し、1期と4期とを繋ぐデュエットダンスとして読み替えてみせた。

 あるいは、“NOGEAM GIRLS”としてモータウン調にアレンジして披露した「白米様」は、安定した歌唱力がなければ楽曲とのテイストのギャップによるコメディ的な精度を生み出すことが難しい意匠であった。ここに1~3各期から生田絵梨花、伊藤純奈、久保史緒里と強い歌声をもちミュージカル適性を備えたメンバーを配置できるのは、グループが長いキャリアのなかで積み重ねてきた舞台演劇への志向の結実でもある。その歴史の流れに次代を引き入れるように、4期メンバーの賀喜遥香が加わったこともまた、長期的な展望としての意味は小さくない。

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