折しもの新型コロナウイルスによる影響で、昨今声高に叫ばれているのが “新しい生活様式”という言葉。これは、コロナウイルスを想定した日常生活を送っていくために、厚生労働省が定めた新しいライフスタイルのことです。

 食事も例外ではなく、例えば食べているときも他の方との身体的距離の確保、いわゆる“ソーシャルディスタンス”を保つことを推奨され、各メーカーも様々な手法で対策を練っています。

 そんな中、先日兵庫県神戸市にある駅弁メーカー「淡路屋」の8月7日に販売する商品の紹介ツイートが先日ちょっとした話題に。

 「【淡路屋・弁当箱情報】「飛沫感染予防シールド付き弁当箱」を開発。蓋を開けると、中に飛沫感染を予防シールドが折り込まれており、組み立てると三方向に壁ができあがる仕様。弁当を食す際、自分が咳込んでも、飛沫が飛ばないように工夫。他者の飛沫からも食材を守ります。(原文ママ)」

 「飛沫感染予防シールド付き弁当箱」だと……?飛沫感染予防とは、マスクやフェイスシールドを着用することで、咳などによるコロナ感染を予防するという意味合いですが、弁当箱にはどうやって“実装”するのか?好奇心が抑えられない筆者は、さっそく近くの淡路屋の店舗に足を運び購入して来ました。

 帰宅してまずは弁当箱の確認。商品名は“令和の嗜み弁当”なんですね。確かに令和に入って2年目に発生したこのコロナ禍による新しい生活様式ともあれば、“嗜み”といっても差し支えないのかもしれません。

 さーて、噂の“飛沫感染予防シールド”はと……パカッ(開封した音)。おっ、この「あなたを守るみんなも守る飛沫感染予防シールド」と銘打っているやつがそれか!文字の横には、疫病退散できる妖怪でこの頃話題な“アマビエ”のイラストも描かれており、昨今のトレンドも意識した造りになっています。

 しかしこれをどうすれば“飛沫感染予防シールド”になるんだろう……と、両側に差込口にアマビエのイラストの下部分に出っ張りがありますね。どうやらこれをはめ込めば良いみたいです。それではさっそく……ガコン(はめ込む音)。

 ぱっと見は食洗器のような形状になりました。確かにこれはこのまま食べても他の方への飛沫予防になりますね。先ほどの飛沫感染予防シールドという表記も、傍からはっきり見えるようになっています。なるほどこういう仕様なんですね。

 と、ここまでただひたすらに弁当の形状について言及していましたが、あくまでこの記事の“本分”は食レポ。ということで、“本文”でもそろそろ実食に入りたいと思います。今更ですがこの令和の嗜み弁当、商品としては幕の内弁当に分類されるのですがおかずはなかなかに豪華。販売価格は1000円(税込み)とは思えないクオリティです。

 ご飯やおかずが入った敷居の数は12ですが、料理の種類はそれ以上。それでいて見た目もとても鮮やかです。ちなみにおかずの詳細ですが、

ご飯もの
・白米(梅干し入り)
・赤飯
・炊き込みご飯
・紫蘇入りご飯

肉魚類
・牛肉のしぐれ煮
・鶏つくね
・鶏肉煮
・焼鰆

野菜類、練り物
・小松菜のおひたし
・ひじきとこんにゃくの煮物
・筍とがんもどき煮
・酢レンコン
・カボチャと子芋と人参の煮物
・かまぼこ

デザート
餡入り餅

 といったラインナップ。「ひっぱりだこ飯」や「炭火焼肉たむらのすきやき弁当」などの数々の有名駅弁を取り扱っている淡路屋らしく、純粋な駅弁として買っても損はしないクオリティと価格はさすが。願わくば新幹線に揺られながら食べたいところですが、そこは我慢でいただきますモグモグ。

 ご飯ものに関しては、4種類とも毛色の違う調理方法なので楽しみながら食べれますね。ただ小食な私にはちょっと量が多かったです。

 続いて肉と魚をモグモグ。やはりメイン料理ということでしっかりと作りこまれてますね。特に牛のしぐれ煮は、牛肉もですが味付けや糸こんにゃくとの絡ませ方が絶妙。駅弁でこれだけの料理はなかなかお目にかかれないです。

 野菜系はどうでしょうかモグモグ。味はもちろんのこと、食感がしっかり残っていますね。駅弁だと、保存上の問題でおうちで作ったような食感を再現するのは難しいのですが、このお弁当はそれが出来ているのは開発担当者の大変な苦労があったのではないでしょうか。

 そしてデザートですが……これはうまい!正直駅弁についているデザートなので、そこまでの期待はなかったのですが、なめらかな舌触りの中でも餅特有の食感はしっかりとあり、なおかつ餡の上品な甘みがマッチングした本格感のある和スイーツです。個人的にはこれ単品を別途でいただきたいくらいです。

 というわけで、駅弁としても十二分に満足できるものでした。新幹線や電車に乗らずともおうちごはんで駅弁を食べるのもなかなかに乙でございますね。ごちそうさまでした。

(向山純平)