■重要なのは「献立力」
まずは、献立を決めて食材を買うことが節約になるか聞いてみた。
「例えば、ビーフシチューを作る時、牛肉や野菜など必要な食材がすべて特売品だとは限りません。かといって、『今日は牛肉が安くないから、お肉抜きのビーフシチュー』という訳にはいきませんよね。つまり、献立を考えてから買い物に行くのは、どうしてもコストがかかりやすくなるといえます」(和田さん)
なるほど。そうなると特売の買いだめから献立に軍配が上がるのだろうか?
「『特売』の文字を見ると、何となく買いだめの方が節約になるように感じますが、どちらがよいとは一概には言いきれません。特売品を買い込んで、食費の節約ができるのは、そこにある食材だけで献立を考えられる料理上手な人ですね。いわゆる『献立力の高い人』なら、特売の食材を活かすことができます。一方の献立力のない人は、お買い得品だけで料理を作れないケースがあります。結局足りない食材を買うことになり、何のために特売品を買ったのかわからなくなってしまうのです」(和田さん)
どちらにも一長一短はあるものの、献立力を上げ、特売品だけで料理を作ることができれば、食費の節約につながりそうである。
■ちょっとした気づきが食費節約のコツ
和田さんは、「買い物の仕方、家事のやり方を見直すのが節約の第一歩」だと続けてくれた。
「特売のまとめ買いは、一度に1週間分がおすすめです。大量に幅広く食材を買っておけば、献立も立てやすくなります。賞味期限の短いものから優先に使っていくようにしてください。注意したいのは調味料。しょうゆやみりんはよいのですが、ドレッシングやマヨネーズ、ケチャップをはじめとする加工調味料は極力買わないことですね。加工調味料は割高なうえ、結局使い切れず、冷蔵庫のドアポケットに並んでいることが多いです。自分で作るようにすると節約になりますよ」(和田さん)
また、メニューによっては食材をすべて揃えなければならないため、献立を決める時は『今日、何食べたい』と家族に聞かないのもコツだという。
■無理な節約術はかえって逆効果
近年、テレビや雑誌、ネットなどでも「節約術」が多く紹介されている。効果を上げるにあたり、どのようにはじめたらよいかを教えてもらった。
「一度に複数の料理を作る『作り置き』や、まとめ買いした食材を小分けにして保存することは、どちらかといえば家事能力のある人に適した節約術です。料理が苦手な人が無理にやろうとしても、なかなか続かないものです。前日の夕食を多目に作り、それを翌日のお弁当にするなど、できる範囲ではじめるのがよいでしょう」(和田さん)
まとめ買いをしたら、使い切るまで買い物に行かないのもおすすめだという。
「食材を使い切るには、メニューを工夫しなければならないため、献立力が身につきます。その間は余計なものを買わないので、自然と節約につながりますよ。『料理下手だから、私には無理』という人もいますが、今やネットを調べれば、たくさんのレシピがあります。それを参考にすれば、手持ちの食材で作れる料理が必ずあるはず。努力は必要ですよ(和田さん)
冷蔵庫や棚を見直し、しばらく眠っている食材があったら、レシピを見ながら消費したい。できる範囲の工夫を習慣化していくことは、食費の節約だけでなく、無駄を作らない暮らしにも役立ちそうだ。
●専門家プロフィール:和田 由貴
節約アドバイザー。節約のほかに、消費生活アドバイザー、家電製品アドバイザー、食生活アドバイザーなど、暮らしや家事の専門家として多方面で活動。「節約は、無理をしないで楽しく!」をモットーに、耐える節約ではなく快適と節約を両立したスマートで賢い節約生活を提唱している。