台湾囲む6エリア、中国が打つ有事への布石 軍事演習を専門家が読む

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聞き手・高田正幸
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 米国のペロシ下院議長の台湾訪問に強い反発を示す形で、中国は4日から、台湾周辺で異例の大規模な軍事演習を始めました。事前の公表情報などから浮かび上がる演習の狙いはなんなのか。地域や日本の安全保障環境にどのような影響があるのか。中国の軍事動向に詳しい、笹川平和財団の小原凡司・上席研究員に聞きました。

 ――今回の演習は、1995~96年の台湾海峡危機の時の演習と比べてもかなり広い範囲で行われ、台湾の主張する領海も含まれています。

 中国軍は今までも、北東と南東2カ所で同時に演習をしたことはありましたが、今回はそれ以上です。台湾を懲罰するために、実際に台湾に対する軍事侵攻を思い起こさせるような体制をつくり、台湾からも見える位置で演習をやるのでしょう。ただ、これを見せたい相手は台湾ではなく、中国側の国民なのではないかと思っています。「ここまでやっている」という強気の姿勢を示して、中国国民や社会に納得してもらわなくちゃいけないからです。

 ――どういうことでしょうか?

 ペロシ氏が最初に訪台を計画した4月、中国軍はここまで強い反応は示していませんでした。何が変わったのか。国際情勢と内政、大きく二つの変化があると思います。国際情勢の面ではウクライナ情勢を受けて、米国と同盟国は同じようなことがインド太平洋でも起こるのではないかと危機感を強めています。そうした中国に対する警戒感の強まりに、中国も危機感を感じています。

 ただ、それより大きいのは内政の問題でしょう。秋の党大会が近づいてきたからです。ペロシ氏の訪台を許したことに、党内や社会から習近平(シーチンピン)国家主席への批判が出ているとも聞いています。そうした不満が残ったまま党大会を迎えてしまうことになりかねません。

 さらに(党幹部や長老が集まって非公式に重大政策や人事を話し合う)北戴河会議がまさに行われているタイミングです。習氏はシナリオを準備して北戴河に臨んでいるはずですが、急に予定外の撹乱要素が入ってきた。事前調整されていない問題で、様々な異なる意見が出てしまう可能性がある。予定調和が乱されることに、習氏の不安があると思います。

 いずれにしろ、批判を受けている以上、強い対応に出ざるをえないわけです。

それぞれの役割担う6エリア

 ――演習エリアは、台湾を取り囲むように6カ所の空海域に及んでいます。この配置の狙いは。

 私が気になっているのは、台…

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