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「自分だけのキャラを作りたい」 AIで美少女を「無限生成」、若きオタクエンジニアの挑戦(1/4 ページ)

» 2019年04月26日 07時00分 公開

 女の子の瞳、髪形、表情が万華鏡のように目まぐるしく変化し、何体ものキャラクターが生まれていく――AI(人工知能)ベンチャーのPreferred Networks(PFN、東京都千代田区)が、アニメやゲームの制作会社向けにそんな技術の提供を始めた。深層学習(ディープラーニング)を活用してアニメキャラクターを自動生成するサービス「Crypko」(クリプコ)だ。

photo 深層学習を活用してアニメキャラクターを自動生成するサービス「Crypko」=Preferred Networksの動画より

 このサービスは、複数のキャラクター画像の特徴を組み合わせ、“遺伝”させるように新しいキャラクターを作り出せる。ブロックチェーン技術も応用して、生成されたキャラクターの情報とユーザーをひも付けて管理し、一つ一つのオリジナリティーを確保する。同社によれば、生成できるキャラクターのバリエーションは「無限」だというから驚きだ。

photo キャラクターの合成例。AIのアルゴリズムである「敵対的生成ネットワーク」(GAN:Generative Adversarial Network)を用いた。GANは、画像を生成するAIとその画像を評価する別のAIを「敵対」させ、生成されるイラストの精度を向上させていく。そうすることで、より高品質で幅広いジャンルのキャラクターが生成できるという

 もともとCrypkoは昨年5月〜8月ごろ、美少女キャラクターを生成・収集するゲームとして、一般向けにβ版が公開されていた。登録ユーザー数は約1万人、生み出されたキャラクターは約80万体に上ったが、大反響の中で公開を終了した経緯がある。そんなサービスが今年4月、法人向けサービスで復活した。

 このサービスを開発したのは、金陽華さんと朱華春さん。中国の大学に在学中、β版を制作。卒業後、PFNに新卒入社した若きエンジニアだ。日本のオタクカルチャーに親しみ、「自分の想像通りのキャラクターを形にできるサービスを作りたい」と意気込む2人に開発の舞台裏を聞いた。

開発メンバーは「美少女ジェネレーター」の生みの親

 β版のCrypko開発がスタートしたのは昨年1月のこと。上海の復旦大学に在籍していた金さんと朱さん、大学の友人の3人で開発・運営を始めた。金さんは自身が大学で研究していた深層学習、朱さんはブロックチェーン技術の開発を主に担当した。

 Crypkoの「アニメキャラを生成する」コンセプトは、日本のアニメカルチャーへの関心から生まれた。開発メンバーは、京都大学への交換留学を経験した仲間だという。 金さんと朱さんは中学生の頃から日本のアニメに親しみ、大学のサークルでオタク趣味をきっかけに意気投合したそうだ。

 中心メンバーの金さんは、Crypko以前にもアニメキャラクターを生成するサービスを手掛け、注目を集めたことがある。京都大学に留学中の2017年、パーツや表情を組み合わせ、好みの美少女キャラクターを生成するサービス「MakeGirlsMoe」を個人で開発した。同年、コミックマーケット92(以下コミケ)で公開したところ「萌えキャラがポンポン作れる」と日本のオタク界に衝撃が走った。

photo 髪や目の色を設定し、好みの美少女キャラクターを自動生成してくれるサービス「MakeGirlsMoe」

 MakeGirlsMoeに対する想像以上の反響に「もっといいものを作りたい」と思ったという金さん。留学を終えて中国に帰国後、その情熱から生み出したのがCrypkoだった。

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