"混乱。恐怖。ただひたすら、平和を待った" 戦場で育った子どもの声

ぼくたちは戦場で育った サラエボ1992─1995
『ぼくたちは戦場で育った サラエボ1992─1995』
ヤスミンコ・ハリロビッチ
集英社インターナショナル
2,268円(税込)
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 1992年4月から1995年10月まで続き、ボスニア戦争なかでも最も多くの犠牲者を出した"サラエボ包囲戦"。

 サラエボのまわりを囲む丘の上から、セルビア民族主義の武装勢力が銃や大砲を町のなかに撃ち込み、学校や病院、図書館や博物館を破壊、出勤途中の人々や公園で遊ぶ子どもたち、産科病院の乳児まで、あらゆる人々を大量殺戮しました。足掛け4年の間、11000人以上が殺され、そのうち1600人は子どもだったといいます。

 その犠牲者数からもわかるように、戦争中は大人のみならず、多くの子どもたちもまた、死と隣り合わせの生活を送っていました。1988年にサラエボで生まれたヤスミンコ・ハリロビッチさんもそのひとり。食料不足に苦しみ、初恋の相手を失い、次の瞬間には自分自身も殺されているかもしれないという恐怖に苛まれる時を過ごしたそうです。

 そして戦争が終結して15年。2010年6月にヤスミンコさんはインターネット上で、戦争中サラエボで幼少期を過ごしたことのある人々に向け"子どものあなたにとって戦争とはなんでしたか"という質問を投げかけました。すると、世界中から1500以上ものメッセージが返ってきたといいます。

 本書『ぼくたちは戦場で育った』には、それらの中から約1000のメッセージが収録されています。

 簡素な回想文というコンセプトのため、ひとつひとつのメッセージは160文字以内と短いものですが、その文字数には決しておさまり切ることのない、さまざまな思いが伝わってきます。

 たとえばこんな言葉。

"恐怖。4年もの長いあいだ、水も電気もなく、あるものといえばそこらじゅうでの爆撃"

"おじいちゃんが市場から帰ってくるのを待っていた......でも今も帰ってきていないわ"

"混乱。恐怖。ただひたすら、平和を待った"

"戦争のなかで子どもでいることなんてできない。不幸にも私たちは一夜にして成長し、大人と同じ心配をした......"

"その後の人生にこんなにも影響し続けるのに、自分のまわりで何が起きているのかまったくわからなかった"

"夜、横になると、ママが「おやすみ」って言う。でも休めるかどうか、無事に朝を迎えられるかどうか、だれにもわからない......"

"「闇のなかの幼少期」。あちこちの地下やシェルターに隠れ、日の光も空もめったに見られない"

 こうした数多くのメッセージを受け、ヤスミンコさんは次のようにいいます。

「こうした回想文のひとつひとつが、子どもにとって戦争とはなんであるのか、という問いへの答えである。それぞれの短い回想文の裏には、一個人と、その人独自の人生観が存在していることを、忘れてはならない」(本書より)

 幼少期に戦場を生き抜いた人々になかに刻まれている、当時の記憶の集積。今年日本は戦後70年を迎え、戦争の記憶は遠いものとなりつつあります。しかし、世界に目を向けると、戦争とはもっと生々しいものだということを改めて知らされます。

 本書が訴えかける数々のメッセージ、みなさんならどう読むでしょうか。


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