Apple独自設計の「Apple M1」チップが、21.5インチiMacの後継となる「24インチiMac」に搭載された。
コンピュータとしての性能をベンチマークテストで調べてみたところ、同じく冷却性能に余裕があるM1搭載の「Mac mini」と同程度の数字が出た。単にコンピュータとしての性能を知りたいならば、「M1を採用」という説明だけで十分という読者もいることだろう。
Mac miniに加えて、これまでに発売されたM1搭載の「13インチMacBook Pro」や「MacBook Air」でも、Apple Silicon搭載の利点や、ハードウェア設計、機能面への貢献が明らかになっていた。
Apple Siliconを採用する利点は、単純なCPU・GPU性能だけではなく、機械学習や映像、音声、音響の処理などiPhoneで培ってきた開発成果を生かすことだった。これまでのIntel MacではApple T2チップがその一部を分担していたが、M1を採用することで最新の開発成果をMacの設計に生かせるようになったのだ。
しかし一方で、ディスプレイ一体型デスクトップパソコンというパッケージに落とし込んだとき、Appleはどのような付加価値をM1で提供できるのか。Appleが独自にSoC(System on a Chip)を開発することの利点について、この新しい24インチiMacで明らかになった部分もある。
iMacのようなディスプレイ一体型デスクトップパソコンというジャンルは、ディスプレイやスピーカーなどをトータルで設計できるため、ディスプレイ別売のコンピュータよりもユーザー体験を演出しやすいという利点がある。
いや、そうした側面があることをiMacという商品自身が開拓してきたともいえる。黎明期の一体型パソコンは初心者向けの低価格モデルという位置付けで、初代iMacもその例に漏れずだった。
この流れが大きく変わったのは、27インチiMacに5Kディスプレイが搭載されたときのことだ。しっかりとしたカラー調整が施された5Kディスプレイは、単体の製品で入手すると高価だ。解像度の面でも、5Kモデルは製品の選択肢が少ない。
これを一体型デスクトップパソコンに採用し、長く搭載し続けることで比較的低価格で提供できたのが27インチiMacの利点だった。OSを含めたコンピュータと一体で提供することで、表示の正確性や、解像度と表示サイズのマッチングなど、使い勝手をトータルで演出できる。
この伝統は引き継がれており、24(正確には23.5)インチiMacの4.5K(4480×2520ピクセル)という解像度も、情報量と見やすさのバランス、それにDisplay P3対応の色再現、最大500nitsのHDR対応などの利点を、特別な知識の習得や設定を行うことなく、自然にユーザーが活用できるようになっている。
Appleは、iPhoneの内蔵カメラやディスプレイなどのハードウェアを互いに生かせるように作り込んでおり、自社製品内での体験コントロールを極めて厳密に行っている。
例えばiPhone 12シリーズはDisplay P3で写真や動画を記録し、動画はHDRでの収録も行えるが、ユーザーはこれらの技術的な仕様を特に意識することなく、iPhoneでもMacでも正しい色やトーンで表示できる。
当たり前といえば当たり前だが、それを意識せずに行えるようスマートフォン、タブレット、パソコンまで包括的に仕様を決めているからに他ならない。
こうしたすり合わせの範囲を、M1の採用によってSoCの領域にまで広げることでiMacの付加価値を高めようという意図が、今回の新商品ではさらに明確になっている。
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