「一般アニメの製作費の数十倍」はホント? Netflixはアニメ制作会社にとっての“黒船”になるのか 担当者に聞いた(1/2 ページ)
アニメ作品においての新たなプラットフォームになるかもしれません。
Netflixオリジナルアニメと地上波アニメは何が違うのか――。一般的な深夜アニメ作品の数十倍とウワサされる製作費、また独自のビジネスモデルについて日本本社の広報担当者を取材しました。
月額定額制でいつでもどこでも手軽にアニメや映画を見られるNetflix。海外での圧倒的なシェアはもちろんのこと、日本では芥川賞受賞作品『火花』(作・又吉直樹)のオリジナルドラマ化や、フジテレビの人気リアリティー番組「テラスハウス アロハステート」の配信など急成長を続けています。
中でも注目が集まっているのが「Netflixオリジナル」のアニメコンテンツ。既存の作品の配信に加え、8月2日には今後配信予定のアニメ作品ラインアップ発表会「Netflix アニメスレート2017」を開催し、「悪魔城ドラキュラ −キャッスルヴァニア−」「リラックマシリーズ(仮)」「DEVILMAN crybaby」「B: The Beginning」など自社のオリジナルコンテンツを発表するなど、ますます勢いに乗っています。
そんなNetflixについて、映画評論家の町山智浩さんがTBSのラジオ番組「たまむすび」で「(制作会社は)Netflixに(一般アニメの)数十倍とか(の予算)を提示されている。日本のアニメは変わる」と紹介。この意見は大きな話題を呼び、アニメ関係者の間でも議論の的となりました。
遊び心の詰まったNetflix日本本社
9月中旬、ねとらぼ編集部が足を踏み入れたのはNetflixの日本本社です。受付にはポン・ジュノ監督で話題となっている映画「オクジャ/okja」のぬいぐるみが置かれており、キッチンスペースにはテイクフリーのランチビュッフェ。フリースペースにはこれまでに手掛けてきた多くの作品のポスターや日本らしい熊手などが飾られており、随所から遊び心が感じられます。
Netflixのビジネスモデル
インタビューに応じてくれたのは、NetflixのHead of PR・中島啓子さん。2015年の日本参入時からPRを担当してきた社員です。
――日本でも話題のNetflixですが、日本オフィスの雰囲気はいかがでしょうか。
中島さん:全世界の社員約2500人の内このオフィスでは50人程度の社員が働いています。仕事さえこなしていれば、必ず出社しなくてはならないということもありませんし、有給はありませんがお休みも自分で自由に取れます。社員の約半数は現在も技術職なのですが、私のようなITリテラシーが低い人間にも丁寧に説明してくれる人が多く、偉ぶっている人もあまりいません。純粋に「作品がうまくお客さまに届くといいな」と思って働いている人が多いと思います。
――Netflixのビジネスモデルを教えてください。
中島さん:基本的にはサブスクリプションフィー(会員費)をお客さまからいただくことのみで、事業を成立させています。
――ということはある程度の会員者数が必要になる、ということですよね。
中島さん:確かにそうですが、私たちは会員者数を増やすということだけではなくて、「1日の(1カ月間の)視聴時間をどうやって伸ばしていくのか」ということを大きな命題としています。そのため、「今だけキャンペーン」など一時的に会員者数を増やすといったことは行いませんし、会員者数の目標も立てていません。
――「視聴時間を伸ばす」という部分ではどういった取り組みを行っているのでしょうか。
中島さん:飽きることなく、Netflixのサービスを楽しんでいただくべく、幅広いバリエーションの作品を用意しています。特に「Netflixオリジナル」についてはかなり力を入れています。
――「Netflixオリジナル」とは、一体どのような作品のことを指すのでしょうか。
中島さん:NetflixがSVOD(※)の独占契約をすること、またタイムラインにおいて、たとえ数時間であったとしても全世界においてSVODで史上最速で作品を配信できることが基本的な原則です。例えば「テラスハウス」の場合はNetflixで先行配信し、その後フジテレビで地上波放映というスタイルでした。こういった既存作品で、Netflixで再度映像化するという取り組みもありますし、完全オリジナルでイチから作品を製作するといったものもあります。
(※)SVOD……サブスクリプション・ビデオ・オン・デマンドの略。インターネット回線を使用してドラマや映画を定額制で楽しめるサービス。
――アニメ作品ではどんなものがありますか。
中島さん:先日の「アニメスレート2017」で発表した「B: the Beginning」「DEVILMAN crybaby」「悪魔城ドラキュラーキャッスルヴァニアー」「リラックマシリーズ(仮)」などは完全オリジナルですね。重要視しているのは5年後、10年後に見ても新作の作品であり続けられるということです。つまりお客さまがどのタイミングで見ても新鮮さを感じていただけるというのがひとつのポイントです。
――地上波放送だと、視聴率や番組の中で流れるCM(広告)が大事だとよく聞きますが、Netflixだとそういったものがありませんよね。その代わりに再生回数のノルマなどはあるのでしょうか。またこれがヒット作、という作品はありますか。
中島さん:再生回数のノルマはありません。そもそも回数という概念というのが何を表しているのかはまた難しい話ですが、Netflixで扱う作品にはドラマシリーズもありますし、映画もありますので、作品によって視聴時間そのものも変わってきます。ですから再生回数を増やすというよりも、先ほど触れたようにNetflixの視聴時間を伸ばすための努力がお客さまの満足度につながると考えています。またNetflixにとってのヒットは再生回数が伸びることだけではありませんし、日本ではまだ始まったばかりのサービスなのでこれがヒット作だと一概にいうのは難しいです。
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