『呪術廻戦』は無理ゲー社会を描くーー「死滅回遊」が強いる、理不尽なルール

『呪術廻戦』は無理ゲー社会を描く

 12月25日。『呪術廻戦』(集英社)の第18巻が発売された。週刊少年ジャンプで芥見下々が連載している本作は、人間の負の感情から生まれた呪い(呪霊)を祓う呪術師たちの活躍を描いたバトル漫画。呪いの王・両面宿儺の器となった少年・虎杖悠仁は、宿儺の力を消し去るために東京都立呪術高等専門学校(以下、高専)に編入。五条悟の指導の元で伏黒恵たち高専の仲間たちと共に呪術師として戦うことになる。

 2021年は『呪術廻戦』の年だったといっても過言ではないだろう。昨年末にアニメ化されたことで人気が爆発し、コミックスの売上は、この18巻で電子版も含めた全巻の累計発行部数が6000万部を突破。12月24日には『呪術廻戦』の前日譚を描いたアニメ映画『劇場版 呪術廻戦0』が上映され、公開から3日間での興行収入は26億を突破という好調なスタートを切った。

 雑誌やWEBでは様々な特集が組まれており、文芸誌やファッション誌でも『呪術廻戦』のキャラクターが表紙を飾っている。作中の言葉を借りるならば「百鬼夜行」のようなお祭り状態だ。

 その最中で発売された18巻は、新たな物語のはじまりを予感させるものとなっていた。

※以下、ネタバレあり。

 封印された五条悟を開放し、伏黒恵の姉・津美紀を救うため、羂索の仕掛けた複数の呪術師を強制的に戦わせる「死滅回遊」に参加することを決めた虎杖と伏黒。まずは力を貸してくれる呪術師を求めて、高専を退学となった呪術師・秤金次の元へと向かう。

 栃木県の立体駐車場跡地で、呪術師同士を戦わせる賭け試合を取り仕切る秤に接触するため、虎杖は高専生であることを隠して試合に参加。圧倒的な戦闘力が認められ秤と面会することになる。

 その後、二人は戦闘状態となるのだが、秤の攻撃を正面から受け止めることで相手を説得しようとする虎杖。自分の役割を「呪い」を祓い続けるための「部品」だと言う虎杖を否定する秤だったが、虎杖の放つ“熱”を認め、共に「死滅回遊」に参加することを約束する。

 一方「死滅回遊」にも変化があった。泳者(プレイヤー)として呪術師を殺して200ポイントを集めた呪術師・鹿紫雲一が、100ポイントを用いてルールを追加し、全ての泳者の情報を開示させたのだ。 

 泳者のデータを閲覧できるようになった虎杖たちは102ポイント保持している日車寛見の名前を見つけ、彼に津美紀を助けるために必要な「泳者同士のポイントの交換が可能」という新ルールを追加してもらうため、東京第一結界(コロニー)に向かう。

 渋谷事変終了後、一気に話が複雑化したかのように見える『呪術廻戦』だが、その一番の原因は、ラスボスだと思われる羂索が仕掛けた「死滅回遊」のルールが複雑で全貌が見えにくいことにある。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「漫画」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる