菅義偉首相のもとで発足した新たな内閣を、識者はどう見たのか――。

 女性はわずか2人で、年配の男性も目立つ。社会派の広告などを手がけ、ニュース番組のコメンテーターも務める企画会社代表の辻愛沙子さん(24)は新内閣を「令和時代の昭和内閣」と名付け、「悲しくなった。あきらめのような気持ちも正直ある」とこぼす。

 1990年代後半以降に生まれた「Z世代」だ。同世代は「将来に対する閉塞(へいそく)感や、鬱屈(うっくつ)した空気感がある」という。「年配の人が国を引っ張るなら、自分たちの声って届かないのかなと思ってしまうし、政治に対するあきらめ、経済に対するあきらめは、自分の人生へのあきらめにもつながる。いまを生きる国民の方を見て政治をしてほしい」と指摘。世界経済フォーラムによる日本の「ジェンダーギャップ指数」は世界121位だ。「中でも格差が大きいのが政治であることは明白なのに、それに向き合わないことは無責任だし、政治における男女格差を是正してほしいという我々の期待も届いていないなら、あまりにも浮世離れしている」。

 菅氏が自民党総裁選で言及した「不妊治療の保険適用」は評価しているが、「出産費用の負担軽減や育児の環境整備、収入を増やすことなど、少子化対策ですべきことはほかにもある。当事者を代弁できる人、声を拾える人が必要なのではないか」と訴える。

 「同調内閣」と名付けたのは、トレンド評論家の牛窪恵さん(52)。再任が8人を占め、「自分に異を唱えない人を(前内閣から)選んだと感じた」という。「官邸主導のトップダウンについてこられる人を集めた。脱線しにくい分、実行スピードは期待できるが、官邸への同調圧力は強まるかも」とみる。初入閣が5人にとどまったことも、「次の選挙を意識し、スキャンダルの可能性が低い人を選んだようにうつる」という。

 女性が2人にとどまり、小泉進次郎環境相以外は全員が50代以上だったことにも注目する。「上の世代の人が多くて変わった感がなく、どうしても新鮮味や期待感を与えにくい。コロナで苦しむ若い世代も多く、早めに若い人へのメッセージを打ち出してほしい」と注文した。

 河野太郎・行革担当相や田村憲久・厚生労働相ら、大臣経験者が多いのも特徴だ。経済産業省OBで政策シンクタンク「政策工房」社長の原英史さん(53)は、実務重視の姿勢が表れているとして「課題解決型内閣」と名づけた。菅首相が掲げる縦割り行政の打破やデジタル化の推進について「安倍政権の積み残し、旧来の利権の前にかけ声だけで終わってきた難題」と指摘したうえで、「実務能力が高い菅さんが、どう解決するのか」と期待を込める。

 ただし、政権が決めた方向性に「(官僚が)反対するのであれば異動してもらう」との発言が少し気になるという。「政権の方針に従わない官僚の異動は当然だが、必要な指摘をするのは官僚の職責。方針が決まる前の異論は大歓迎とのメッセージも出すべきだ」と注文をつけた。(伊木緑、渡辺洋介、矢島大輔)