愛に気付いたらもう戻れないだろ「ハイスコアガールII」21話 ハルオ、告白への決意(1/2 ページ)
長かったねー。
ゲーセンで燃やした青春があった。ゲーセンで育った恋があった。格ゲーが盛り上がっていた90年代を舞台に、少年少女の成長を描くジュブナイル「ハイスコアガール」(原作/アニメ)。ゲームを愛した2人の少女と1人の少年の、エモーショナルな恋の物語。
20話で複雑な顔をしている大野晶に出会ってしまった矢口春雄(ハルオ)。大野と距離が開いてしまったことで気付いたことがある。ついにハルオが自らの恋心に向き合い、動き出す。ここまで長かったねえほんと。
街のいたるところに君がいる
ハルオが大野を好きだ、というのは周囲の誰から見ても火を見るより明らかな状態。とはいえ、人を「好き」だとか「愛している」だとかの境目って、分かる人はそうそういないもんです。まして趣味のゲームにも自分にも真っすぐに生き続けるようなハルオには、器用にこなして理解しろって言う方が無理な話。
鈍いと言うよりは、決断して一歩踏み出すことが出来ない性格、という方が近いかもしれません。友人の宮尾いわく「流されっぱなしのハルオ見てっとイライラするぜ」。
そんななあなあだったハルオが、ついに自覚をします。彼が恋心を抱いていたのを認識した決め手は、思い出の在り方でした。
どこにいっても、何をやっても、大野のことを思い出す。何年もたってから過去を何度も思い出すなんて、よほどじゃない限りありません。「俺にとっての大野の存在がここまで大きくなるとは」と考えるハルオの脳裏には、小中高と歩んできたさまざまな大野との日々が、浮かび上がり続けます。このカットに詰まっているのは超名シーンだらけ。それぞれ大野がどういう視線を、どんな気持ちで向けていたのか、視聴者側から考えるだけで心臓がおかしくなりそう。
ハルオ「街のいたる場所が大野とともにいた記憶で溢れかえっている」「楽しかった 大野といるのが一番楽しかった」「熱かった 闘志と別の何かが燃え上がっていた」
小学校時代に自転車二人乗りで遠出したシーン。まだ仲が悪いと思っていた、でも何かお互いの心に芽生えていた幼い日のことが、頭をよぎる。
無意識に思い出し、考え、心が動く。この感覚を、彼は「好き」だとやっと認識しました。
ハルオは特に目がゲームに向きっぱなしなので、もともと一目ぼれとかはするタイプではないんでしょう。関係を積み重ねていくことで情が育まれるタイプ。手を握ったり一緒に寝たりと、人から見たら「にぶい」といわれてしまう数々の大野との出来事は、彼の場合一度通過して振り返ることで、真の恋愛の糧になっているようです。
長かったね〜〜〜
ハルオが恋を打ち明けてからというもの、周囲は大盛りあがり。ハルオのお母さんナミエ、大野の姉の真、友人の宮尾光太郎と土井玄太。ぶっちゃけ面白がっている比重のほうが大きく、ハルオはおもちゃにされている状態。
まあでもここは、みんな今まで見守ってきたのだから、ちゃかしてもしょうがない。ハルオはしっかり自分のペースで心をかみ締めたのだとはいえ、周囲から見たらほぼ両思いにしか見えないのに付かず離れずな2人の関係は、見ていて落ち着かなかったわけで。特にお母さんと真は、ハルオと大野を後押しすべく手を組む最中で仲良くなった関係。この状況を「面白がっている」とは言っているものの、2人とも本音は別にあるはず。
それぞれのハルオ分析がかわされているのも楽しい。母親としては「長かったねー」という感想を持ちつつ、恋愛感情や性的好奇心がスっぽ抜けていることを心配していた様子。ハルオを強引に大野と一緒にいさせるなどしてもなお、なかなか動かなかった今までを考えると、なにかあるのではと考えるのも仕方ない。
この作品の名脇役すぎる存在の宮尾は「恋をすっ飛ばして…愛から始めてしまった」という抽象的な発言で説明。宮尾は献身的すぎるほどハルオのために動く少年。むしろお前の友人のあり方こそ愛だよという気がしてならない。彼はハルオを俯瞰してアドバイスし続けてきました。名言が多いのですが、彼も高校生のノリと勢いで言っているところがあります。ハルオが過去に宮尾の言った発言を覚えて自分を見直していたのに、宮尾側が覚えていなかった、なんてシーンも。
このごちゃごちゃなメンツの中で、大野とハルオのストII対決の重さを理解しているのは、宮尾だけです。
宮尾「誰をも寄せ付けない絆を前にして……告白だとかプロポーズを促すのはよくないことなのかもしれない」
もちろん宮尾にもハルオの本当の心理は分からないです。しかしただの恋愛関係ではない、さまざまな悩みや葛藤や戦いがあった2人の様子を遠巻きに見てきたからこその、宮尾の視点です。ゲームでの勝負にこだわるのは、意地を張ってるわけではない。越えることでスタートラインに立てる重要なポイントなのだと、宮尾には分かっているようです。
大野、最後の大会遠征
もう1人今回の名脇役といえば、萌美先生。四角四面で融通が利かない厳しい大野のお目付け役でした。ハルオがスパIIXの大会に行くことを聞いた大野。自分も行きたいと萌美先生にを許可を取ることに。当然NGが来るかと思いきや、行くなとも許さないとも言わない、「あきれ返った」とだけ言って言葉の裏で気遣いを見せました。
以前大野と仲たがいをして心を改めたこと、またハルオが誠実だったことを見越した上でのナイスパス。さあ道は整った。ありがとう萌美先生。変なメガネない方が似合ってるぜ。
といっても必ずしも幸せな展開とは言い切れない。萌美先生と大野は、ロス移住が決まっていて、これがハルオとの最後の遠征なのを知っている。
2人とも遠征に行けることになり、新幹線で新横浜から一路大阪へ。顔を合わせほほえむ2人の姿は、これからの未来への希望に満ちたものなはず。なのに大野はもうこれが最後なのを知っている。ハルオは何も知らない。
ハルオが告白に向けて並々ならぬ情念を燃やしていることに気づいているであろう大野。彼女の心中を考えるとやりきれない。勝負には真剣だけれども、どう転んでも理不尽な力により、悲しみが訪れる。
でも伝えない大野。彼女が徹底してしゃべらない設定(?)なのが、ここに来てどんどん重いものになります。
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