「ワインの王様」に異変 気候変動、ブルゴーニュの憂い

有料記事特派員リポート

ボーヌ=疋田多揚
[PR]

 世界的なワインの産地として知られるフランスのブルゴーニュ地方では毎年この時期、小粋なレースが開かれる。深まる秋に黄色く染まったブドウ畑を走り抜ける、ハーフマラソンだ。

 起点は「ブルゴーニュワインの首都」と呼ばれる仏東部の街、ボーヌ。普段は静かな街だが、ワイナリーが集まる街の地下には、たるがずらりと並ぶ酒蔵が広がっている。

 レースの号砲が鳴ると、すぐに郊外のブドウ畑の丘を目指す。アップダウンがあって体力的にはしんどいが、何といっても黄金の海原の眺めが素晴らしい。足を着地させ一呼吸するごとに、疲労物質やストレスが自然に吸い取られていくようだ。

 さらに、「給水所」ではブルゴーニュワインもふるまわれる。痛み始めて棒のようになった足に麻酔のように作用し、疲れをやわらげてくれるということなのか。私が参加したのは3年前で、心軽やかに走れたのがよかったのか、その3カ月前の平地のレースよりタイムが10分以上伸びていた(2時間8分)。

 ここの県名はコートドール。フランス語で「黄金の丘」の意味で、その豊穣(ほうじょう)のブドウ畑を目、舌、足で感じ取れるすてきなレースだ。

 このハーフマラソンは11月の第3週、「栄光の3日間」と呼ばれるワインの祭典中に開かれる。収穫を祝う毎年恒例のボーヌの行事で、今年も11月16~18日に行われた。19世紀から続くワインの競売や試飲会が盛大に催され、世界各地から買い付けに来る業者や愛好家で大いににぎわう。

気候変動で味に変化

 ところで、このブルゴーニュ…

この記事は有料記事です。残り3234文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません