コラム 2019.10.10. 16:30

病魔と闘って…広島・赤松真人、阪神・横田慎太郎の残した足跡【短期連載:去りゆく勇者たち】

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短期連載:去りゆく勇者たち


 秋は野球界にとって別れの季節でもある。自ら現役引退を告げる者、球団から戦力外通告を受ける者。新陳代謝が激しく、弱肉強食が常である勝負の世界では避けて通れない非情の時だ。

 彼らはチームに何を残し、あるいは、どんな悔いを残してユニホームを脱いでいくのか? 勇者たちの散り際を追ってみる。


第2回-1:赤松真人(広島)


 今年も多くの野球人が別れの時を迎えた。特に戦力外通告を受けた者は、過去を振り返り「あの時、もう少しこうすればよかった」と悔恨の情に肩を落とすと言う。

 同じ“現役引退”でも、広島の赤松真人の場合は事情が違う。

 2016年12月に胃がんを公表、翌年1月に胃の半分を切除した。そこからの闘病を経て現役復帰を目指したが、2年半の壮絶な挑戦も一軍復帰は果たせず。ユニホームを脱ぐ決断に至った。

 15年に及ぶプロ生活はまさに山あり谷あり。2004年に阪神に入団するも、2008年にはFA移籍した新井貴浩の人的補償で広島に。俊足堅守の外野手として徐々に頭角を現すと、ひとつのビッグプレーが世界に衝撃を与えた。

 2010年8月、マツダスタジアムでのDeNA戦。左中間へのホームラン性の打球を、フェンスによじ登り好捕。この時の映像は米国のスポーツ専門テレビでも紹介され、「ザ・キャッチ」として週刊No.1プレーに称えられた。この年は当然のごとくゴールデングラブ賞を受賞している。

 大手術から3年ぶりの一軍は9月27日、中日戦だった。9回の守りで中堅に入ると、この日一番の大歓声を浴びた。打球が飛んでくることもなく、打席に立つこともなかったが、赤松の表情は晴れやかだった。大病を患って、それをバネに戦ってきた過程こそがいぶし銀のようなバイプレーヤーの生き様だった。

 「こんなにも好きな野球が出来なくなるのかと、正直何度もあきらめてきました。そんな僕に勇気や元気を与えてくれたのは家族、チームメイト、そして全国から送られてくる折り鶴や手紙などの応援でした」

 引退セレモニー。ナインの手で胴上げされる赤松の目に涙はない。868試合、1618打数403安打。打率.249と136個の盗塁記録を残し、不屈の男は第二の人生を歩み出す。


第2回-2:横田慎太郎(阪神)


 そんな赤松の引退より一日早い26日、阪神の横田慎太郎もまた現役引退の場に立っていた。

 満員の甲子園ではなく、二軍が鍛える鳴尾浜。ウエスタン・リーグのソフトバンク戦で8回二死から中堅の守備に就くと、いきなり見せ場がやってきた。

 中前打に勢いよくダッシュすると、本塁へ矢の送球。奇跡のバックホームで捕殺を記録した。横田の最後の姿を応援しようと、監督の矢野燿大や鳥谷敬、さらにはプロ入り同期生の梅野隆太郎らまでが駆けつける中、会心のプレーで応えた。


 横田もまた、病魔に行く手を遮られた一人だ。

 プロ4年目の2017年に脳腫瘍が判明。18時間に及ぶ大手術などを行い現役復帰を目指したが、その後も後遺症に悩まされて24歳の若さで決断を余儀なくされた。

 2013年のドラフト2位で阪神入団。父・真之さんが元ロッテの外野手として活躍するなど、球界のサラブレッドとしても話題を呼んだ。高卒ながら広い守備範囲とシュアな打撃で首脳陣の評価は高く、当時オーナー付特別アドバイザーを務めていた掛布雅之は「高卒2年目の外野手としてなら松井(秀喜)以上」と将来性に太鼓判を押したほどだ。

 事実3年目の2016年に一軍切符を手にするが、そんな矢先の非情な宣告だった。


 頑強な肉体を誇るアスリートでも、病はやって来る。同じ阪神では原口文仁もまた、大腸がんの手術を乗り越えて今季見事に復活を果たした。

 発見の遅れや場所によっても症状は様々だ。赤松と横田に襲った病魔が選手寿命を縮めたことは間違いない。しかし、そんな困難な状況を打破しようと戦った者には、やり切った感情があるのもまた確かだ。

 広島、阪神両球団では今後も彼らのサポートを続けていくと言う。人生レースはまだまだ長い。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)



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※お詫びと訂正※
初出時、文中の人名に誤りがありました。大変失礼致しました。

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