「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。

ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。

  • 「買って買って!」という子どもに、プレゼン力を鍛える会話を


本連載では子どもの「自己肯定感」を育てるために、「認める大切さ」についてお伝えしていますが、"認めること"を"全て許していいなりになること"だと勘違いされている方も多いように思います。

例えば子どものモノを買って欲しいという発言に対してです。今回は、「子どもがあれもこれも欲しい、買って買って! というので困っています。認めることが大事だとわかっているのですが、どこまで認めて買ってあげたらいいのでしょうか」というご相談に、親子コミュニケーションアドバイザーがお答えします。

親ではなく子ども自身に判断させる

「認めること」と「いいなりになること」は違います。子どもが泣いてわがままを言えば聞き入れてくれると勘違いして育つことは危険ですね。どんどんわがままな子に育ってしまう可能性があります。

そこで親は、自分の主張を認めてもらった上で、どうしたら自分も相手も納得できるのかを考える力を育てることが大切です。子どもの「欲しい」という気持ちを認めることが大事なのであって、何も考えずに買い与えることを許すべきでありません。

また、子どもが「欲しい」と言った時に、頭ごなしに「ダメ! 買いません」と言うと、子どものなぜ欲しいのか、なぜ買わないのかを考える力は育ちません。そのうえ子どもには、買ってもらえなかったことよりも、自分を否定されたという思いだけが残ってしまいます。お母さんお父さんに話すことをあきらめて育ってしまったら悲しいですね。

親は子どもの「欲しい」という気持ちを認めた上で、自分で要る要らないの判断をできるよう子に育てるべきです。ではそのために、どのように接すればよいのでしょうか。

子どもが「買って買って!」とわがままを言い出した時、ついついそのおもちゃに気を取られますが、まずは、子どもの真意を考えることが大事です。もしかしたら、おもちゃが欲しいのではなく、ママパパを振り向かせたいだけなのかもしれませんし、疲れてきてぐずりたいだけなのかもしれないからです。

まずは、「このおもちゃ面白そうだしいいよね」と肯定的に受け止め応えることで、子どもも自分の発言に反応してもらえたと思い、わがままは収まるかもしれません。

その後で、「眠くなっちゃったね」「お腹すいたし美味しいもの食べようか」など、お子さんの気持ちにぴったりの言葉を伝えることで、単にわがままを言うのではなく、本当に自分の言いたいことを伝えられるように成長していきます。

おもちゃが欲しいという我が子を受け止めた後、このおもちゃのどこがどんなふうにいいのか、たくさんお話しできるといいですね。そして、この会話の後、本当に買うのか買わないのかを子ども自身が判断できるようにしていきましょう。

つまり、冒頭のご相談への答えは、「親が買う・買わないの判断をするのではなく、子ども自身が判断できるように肯定的に受け止め、会話を重ねることが大事」なのです。

子ども自身で、他のおもちゃとどう違うのか、本当に欲しいのか、自分は何が好きなのかを、お母さんお父さんとの会話を通して、より深く考えることができるように導きましょう。

「認めること」とは、買ってあげることではなく、「子どもの考えや判断を尊重すること」です。その判断材料を親が示せるとよりいいですね。

子どものプレゼン力も鍛えよう

子「これ買って!」
親「このおもちゃいいよね! この赤色かっこいいね。こっちの青色のとどっちがいいの?」
子「赤がいい!」
親「青色より赤色がいいのは、何が違うの?」
子「赤は、青より強いんだよ!」
親「どこが強いの?」
子「うう……決まってるの!」
親「へー、面白い! 誰が決めたの?」
子「んー……みんな……」
親「そうなんだ。うちにも同じような赤のがあるけど、どっちが強いの?」
子「うちの方が強い!」
親「うちにあるのは強いんだね、すごいね」
子「うん! あれは最強なんだよ」
親「お! いいの持ってるね。家に帰って遊ぼうか?」
子「うん、急いで帰ろ」
親「このおもちゃ、どうする?」
子「もういいや!」
親「買わなくていいの?」
子「うん! いらない」
親「そうだね、今持ってる方がかっこいいんだもんね」
子「うん!」
親「自分で決めて偉いね!」

このように、子どもの欲しいものに親も興味を持ち、一緒に理由を考える会話をすることで、自分の本当に欲しいものが明確になっていきます。また同時に、親を納得させられるプレゼン力も年齢に応じて身につけていくでしょう。親も子どもも納得して買えば、それを大切にするはずです。

この繰り返しで、子どもは親(相手)を納得させられるもの、自分が本当に欲しくて大切にするものを選択できる力を養っていきます。

いずれ人生の大きな進路を自分で選択する時のために、日頃の小さな買い物から一緒に練習をし、子どもの判断力を育てていきましょう。