マイナンバー制度や訴訟社会で仕事が急増!「社会保険労務士」に注目!

将来、どんな仕事をしたい?
 
弁護士や税理士みたいに手に職をつけて自分の事務所を開業したい?
 
そう考えている人に、ぜひ知ってもらいたい資格がある!
 
それが「社会保険労務士」
 
「それって国家資格なの?」
「どんな仕事をするの?」
 
初めて聞いた職業だという人も多いだろう。
 
実は、マイナンバー制度の導入で、ますます企業からの需要が高まり、仕事が増え続けている注目の仕事なんだ。
 

では実際、「どんな仕事をしているのか?」「どうすればなれるのか?」をドリームサポート社会保険労務士法人・代表取締役の安中 繁さんに聞いてみた。
 

「会社の話はよくわからない」という人は、アルバイト先のことに置き換えてイメージしてみよう。
 

主な仕事は「トラブルを防ぐための相談」と「書類作成などの代行」

 

「経営者(社長など)が従業員(社員など)に、労働時間や給料などについて訴えられるトラブルが起きたときに相談する相手が、弁護士。
 
その訴訟問題が解決した後、『じゃあ今後、裁判にならないようにするにはどうすればいいか?』とトラブルを防ぐ相談をする相手が、社会保険労務士なんです。
 
具体的な仕事としては、例えば、その会社独自の就業規則(働くためのルール)の作成。
 
残業、在宅での勤務、育児や介護による休暇など、きちんと社内ルールを決めておけば、全従業員が同じ待遇を受けることができます。
 
そうすれば、『私だけ長時間残業させられている』『あの人だけ有給の育児休暇を取ったのはおかしい』などと訴えられることが防げます。
 
働きやすい職場づくりのために、法律に裏づけたアドバイスをするんです」

なるほど、社長や人事担当者が社内ルールを決めたり、社会保険などの手続きをするときの相談相手になるのが仕事だという。
 
会社の人事担当だからといって、必ずしも労働関係や健康保険・年金などの法律に詳しいわけではない。
 

法律が改正される際には、対応しきれない場合もある。
 
そんなときに相談できる、頼もしい存在なのだ。
 

「会社を立ち上げたばかりの社長さんから、『従業員を雇いたいけど気をつけることは?』『何時から何時まで働いてもらえばいい?』『給料はいくらにすればいい?』といった、起業時によく悩みがちな社員の待遇についての相談をされることもあります」

例えば月額10万円で企業の顧問になる契約をして、何かあったときに相談にのったり、社内会議に参加して意見を言うこともあるという。
 

社長の代わりに社員の異変に気づいてアドバイスすることも

「相談業務と並ぶ、社会保険労務士の主な仕事は、各種手続きの書類作成や給料の計算。
 
例えば従業員が入社したら、まず雇用契約書を作ります。
 
さらに健康保険、年金、雇用保険に加入する手続きに必要な書類を作成。
 
退社したときにも必要な手続きを代行します。
 
また、毎月の業務としては給料明細の作成をしています」

給料明細の作成は、経理(部活の役職でいう、会計)の仕事というイメージだが、外部の社会保険労務士に委託することがあるという。
 
なぜ社内ではできないのだろう?

「実は、給料明細の作成は、法律や保険についての専門知識が必要で、社内で給料の計算をすると間違えることが多いんです。
 
私が顧問契約している超有名企業ですら計算間違いがありましたからね。
 
日本の企業は、労働法に沿って給料を支払う義務があるのですが、例えば残業代は時間外、深夜労働、休日出勤で金額が違ってくるし、保険料の控除も一定のルールに基づいて計算式が変わる。
 
それを経理の人が全部把握して給料計算するのは大変なんですよ。
 
でも、給料って、経営者と従業員の信頼関係を維持するのに大切なものだから間違いがあってはいけない。
 
そこで、法律に詳しい社会保険労務士の出番になるんです。
 

毎月の給料を計算すると、『この部署の残業代が急激に増えている』『この人、休みがちだ』と気づいて、経営者や人事担当者に『面談してはどうですか?』とアドバイスができます。
 
仕事中にケガ人がでると労災保険の給付金手続きをしますが、何度か続いた場合、『また事故ですか? なぜ事故が起こるのか、社内ミーティングをしませんか?』といった提案もしています」

ただ事務的に手続きを代行したり、給料の計算をするだけでなく、その情報から、もっと良い会社に改善するためのサポートをするのだという。

「働きやすい職場にするために何かできることがあるんじゃないか」


と常にアンテナを張り、相談にのることで、お客さまの信頼につながる。
 
すると、お客さまがお客さまを紹介してくれて、顧問契約が増えていくのだそう。
 

 

個人訴訟の増加やマイナンバー制度導入で、どんどんニーズが拡大

「今、社会保険労務士のニーズはすごく増えています。
 
そのきっかけのひとつが、2002年に新しくできた『個別労働関係紛争解決促進法』という法律。
 
それまでは、社内でトラブルが発生したら労働組合(労働条件の改善のために社員などでつくる団体)が訴訟を起こす団体戦だったのが、ひとりでも訴える個人戦ができるようになり、裁判が急増したんです。
 
昔は経営者の立場が圧倒的に強かったけれど、今は社長が社員に『嫌なら会社をやめてくれ』と言った1~2週間後に訴状が届きますからね。
 
一度訴えられた経営者は、裁判で300万円とか500万円もっていかれるくらいなら、日頃からトラブルを防ごうと考えて、社内ルールを定めるために社会保険労務士を雇うんです」

 
さらに、マイナンバー制度の導入も仕事を増やしている。

「マイナンバーが始まって、各種手続きの書類作成などを代行する仕事を請け負う契約が増えましたね。
 
従業員や扶養家族のマイナンバー情報を提供してもらったり、それを管理する業務のためだけに新たな従業員を雇うわけにはいかないし、かといって無法地帯では危険。
 
じゃあ、法律に詳しい社会保険労務士にお願いしよう、となるんです」

国家資格をもっているから信頼して仕事を任せることができると、社会保険労務士の存在価値が高まっているのだという。
 

 

大学生のうちに国家資格を取得しておくのがねらいめ

 
では、社会保険労務士の仕事をするにはどうすればいいの?
  
国家資格を取得しても、自分の事務所を開くなんて大変なのでは?

「ニーズの増加に伴い、お客さまが新たなお客さまを紹介してくださるんですが、請け負いきれないこともあります。
 
そういうときは後輩の社会保険労務士を紹介するんです」

安中さん自身も、個人事務所を開業したときに先輩からお客さまを紹介してもらったそう。
 
社会保険労務士の集まりなどに参加して、先輩に売り込んでおくと、声をかけてもらえるのだ。

「国家資格を取得すれば、若い人は気軽に話がしやすいから、あっという間に仕事がくると思います。
 
ベテランの社会保険労務士は自分の経験というワクの中でジャッジすることが多いのですが、駆け出しの新人だとまっ白な状態でスッと話を聞いてくれるから、お客さまが相談しやすい。
 
私も自分より若い後輩を積極的におすすめしていますね」

2016年度の国家試験の最年少合格者は20歳。
 
合格すれば、実務経験がなくても社会保険労務士として登録できるので、大学時代に資格を取って、卒業後に個人事務所を開業することも夢ではないのだ。
 

 

人の役に立てる、感謝される、やりがいの大きい仕事

 
では、大学での学部は何を選べば有利なのだろう?

「やはり法学部が強いけれど、経済学部、経営学部、社会学部でも関連した勉強ができると思います。
 
試験問題には暗記モノも多いから、社会人より勉強する時間がある大学生は有利。
 
合格率は高くないものの、やった分だけ得点に反映される試験なので、根気よく取り組めば合格できます。
 
また、アルバイトをしていたら、従業員の立場から、労働時間や給料などの待遇が【良い】のか【ブラック】なのか、考えてみましょう。
その経験は仕事をするうえで役立ちますよ」

一度合格したら一生ものなので、大学生のうちに国家資格を取っておいて、社会人経験を得てから開業してもいいし、もちろん資格が就職活動の武器になることも。
 

「社長さんは社内だけでなく、取引先など社外にも目を向けなくてはならないので、従業員を大切にしたいと思っていても全員の働き方や労働状況までは、注意が行き届かない。
 
だから、従業員に常に目を向ける係を社会保険労務士がバックアップするんですよ」

社長や人事担当者は相談相手がいると心強いし、社員は働きやすい職場になれば、喜んでくれる。
 
たくさんの人のためになる、やりがいの大きい仕事なのだ。
 
「人と接するのが好き」「誰かの役に立ちたい」「自分の事務所を開業したい」という人は、大学生になったら、国家資格取得へのチャレンジを考えてみては?
 

【安中 繁さん】
大学卒業後、メーカーで事務職として勤務。
 
28歳の時、出産後もキャリアアップをあきらめることなく働き続けたいと思い、社会保険労務士の国家資格を取得して、個人事務所を開業。
 
2015年にドリームサポート社会保険労務士法人を立ち上げ、代表取締役に就任。
 
上場企業を含む約300社の顧客と契約を結ぶ。
 
自らも1児の母として仕事と育児を両立させながら、「週4正社員制度」を実施。
 
週4日は正社員としてやりがいのある仕事を続けながら、知識の研鑽(けんさん)、育児や介護、趣味などに週3日の時間を費やす、新しい働き方を提唱している。
 
●著書『週4日勤務のススメ』(産労総合研究所 出版部 経営書院)2017年4月25日発行
https://www.dream-support.or.jp/
http://office-3s.com/

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