MIYAVIが挑み続ける、新たな表現へのアプローチ「ギターという“刀”を持って乗り込んでいきたい」

MIYAVIが挑み続ける、新たな表現へのアプローチ

 今年デビュー15周年を迎えるギタリストMIYAVIが、キャリア集大成となるベストアルバム『ALL TIME BEST “DAY 2”』を4月5日にリリースする。CD2枚組となる本作の初回限定盤には、「Survive」や「TORTURE」といった既発のシングル曲18曲に加え、「What's My Name?」や「Universe」など代表曲5曲を新たにリアレンジして再録、さらにはインディーズ時代の楽曲「Girls, be ambitious.」、三池崇史監督/木村拓哉主演の映画『無限の住人』のために書き下ろした主題歌「Live to Die Another Day -存在証明-」も収録。バンド解散後にソロとしてのキャリアをスタートさせた彼が、エレキギターをピックではなく全て指で弾く独自の“スラップ奏法”で世界的な注目を集め、朋友BOBOとのタッグにより唯一無二の存在へと進化していく、その軌跡を網羅できる貴重な内容となっている。

 そこで今回リアルサウンドでは、MIYAVIのキャリアを本人とともに振り返った。ルーツとなる音楽についてや、海外生活で受けた衝撃、家族を持つ彼の「教育」に対する考え方など話題は多岐にわたり、その全てを率直に語ってくれた。(黒田隆憲)

過去の作品を「懐かしい」で終わらせたくなかった

ーーまずは、今回ベストアルバムをリリースすることになった経緯を教えてください。
 
MIYAVI:個人的には、過去を振り返っている暇はなく、常に前を向いて進んでいる中で、気づけばもう15年経っていて。MIYAVIの歴史の中でも色々な節目というかチャプターがあり、その都度関わってくれた全ての方たち、応援してくれた全てのファンに支えられてきたからこそ、今のMIYAVIがあるんですね。その道のりを一つの形として残すことで、感謝の気持ちを伝えられたら、と。
 
ーー既発のシングルをただカタログ的に並べるのではなく、代表曲の再録や、書き下ろしの新曲なども含まれています。
 
MIYAVI:本音を言えば、もう全部録り直したいくらいだったんですけど、それをやるとベスト盤として出す意味がないらしく(笑)今、ライブでも演っている5曲だけ再録させてもらいました。あと、ちょうど映画主題歌のオファーがあり、新曲を録り終えたばかりだったので、それもコンパイルして。そうすることで、ベストアルバムでありながらも過去と現在、そして未来をも繋げられる作品になったと思います。「次のチャプターへ進んで行こうぜ」というアティテュードとメッセージも込めることができたんですよね。それで、タイトルを “DAY2”とさせてもらいました。
 
ーー「新録」には、「過去の自分をアップデートする」という思いも込められていたわけですね。
 
MIYAVI:音楽というのは目に見えないものですから、思い出や景色とリンクするんですよね。匂いを嗅いで、何かを思い出したりするのと同じで、音楽を聴くことで記憶が蘇る。そういう意味では、オリジナルを超えるものってないんですよ。ただ、やはりアーティストとしては、「そうだね、こんなことがあったよね、懐かしい」で終わらせたくないというか。今は今の景色を見ているし、明日になれば明日の景色を見ている。常に未来への道の途中なので、どうやって過去を否定せず「今この瞬間を生きている」ということを示せるか? と考えたら「再録」というのが一つのかたちなのかなと。
 
ーーそれと、最近MIYAVIさんを知った人が、これまでの軌跡を俯瞰するという意味でも、ベストアルバムには大きな意義がありますよね。
 
MIYAVI:確かにそうですね。ぶっちゃけ、自分では過去の曲はもう聴けないですけど(笑)。例えばゴッホだと、印象派の影響を受けたパリ時代があり、その後アルル地方に移り住んで大きく作風が変わるなど、生涯にわたる彼の軌跡を現代の我々は俯瞰して見ることができるわけじゃないですか。そうすると、一人のアーティストの「アートワーク」っていうのは、その人が死んだ時に初めて完成するのではないか? と思うわけです。自分をゴッホと並べるのはおこがましいですが、僕自身、この15年だけでも作風に物凄く振り幅がある。じゃあ、ここからのMIYAVIの15年は、一体どうなっていくんだろう? っていうワクワクを、今はみんなと共有したいですね。

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ーーまだキャリアを俯瞰したり、総括したりするには早すぎると。
 
MIYAVI:だって、15年前の自分が今の自分を想像できたかというと、見据えている未来は今も昔も一緒ですが、今の自分は想像していませんでした。「世界各地の大きな会場でコンサートをする」というのも「成功」の基準の一つなのかもしれないけど、その一方で、自腹で難民キャンプへ行って、アコギとマイク、カホン(ペルー発祥の箱型パーカッション)だけで、子供達の前で演奏するのも、今の自分には同じくらい大きな価値があります。そんな自分の姿は想像もしなかったですね。これまで沢山の失敗もしてきたし、今でもしますけど(笑)、全部ひっくるめて今の自分がいて。それを肯定していたいし、15年後もそれを貫いていてほしいですしね。
 
ーー本作だと、一番古い音源はインディーズ時代の「Girls, be ambitious.」ですよね。当時はどんな気持ちで作りましたか?
 
MIYAVI:もう忘れちゃったけど、うーん……やっぱり初期衝動ですかね。「自分はここにいるんだ!」っていう叫びと、それから目の前で聴いてくれている人たちに向けてのメッセージ。その両方が込められていると思う。しかも、その濃度がものすごく濃いなあと思います。目の前の「あなた」に向けて発信するメッセージと、世界に向けて発信するメッセージ。当時の楽曲から学ぶことは、今もきっとあるでしょうね。
 
ーーバンド活動を経て、2002年10月31日に「雅-miyavi-」名義でソロアルバム『雅楽-gagaku』をリリースし、本格的なソロ活動がスタートするわけですが、当時の心境はどんなものだったのですか?
 
MIYAVI:まさか自分が歌うなんて思ってもみなかった。でも応援してくれている人たちのためにも、とにかく「転がり続けるしかない」ただただ、進もうという気持ちだけでした。
 
ーーDISC 2の「-DAY 0-」に収められた楽曲には、MIYAVIさんのルーツを伺わせる楽曲が多く並んでいます。「結婚式の唄-with BAND ver.-」にはフォークミュージックからの影響を感じるし、「セニョール セニョーラ セニョリータ」は南米音楽を取り入れた歌謡曲にも通じるものがある。「Selfish love -愛してくれ、愛してるから-」はブルースへの憧憬を感じます。実際、MIYAVIさんの血肉になっている音楽っていうと何でしょう?
 
MIYAVI:ほんと雑食というか、多岐に渡るというか。ギタリストとしては、例えばロバート・ジョンソンやバディ・ガイ、スティーヴィー・レイ・ヴォーン、ジミ・ヘンドリクスなど、たくさんの素晴らしいギタリストに影響を受けてきました。ダンスミュージックでいうと、Basement JaxxやDaft Punk。ロックだとNine Inch Nailsや、RAMMSTEINなんかも聴いてきましたし、デヴィッド・ボウイ、T.Rex、Bauhausの影響も大きいですね。もちろん、マイケル・ジャクソンやエルヴィス・プレスリーといったロックスターの存在も欠かせない要素です。

ーー元々は、どんなきっかけで音楽を始めたのですか?
 
MIYAVI:15歳の時にサッカー選手になるという夢を諦めて、そのあとギターに出会って。何というか、導かれたんですよね。ギターを弾いているとき、「自由」になれると思った。それでバンドを組み解散し、ソロアーティストとして転がり続けていく中で、19歳の時に初めて海外公演を行ったんですけど、その時「自分って一体何なんだろう」という壁にぶち当たった。「アジア人である自分に、ギターを弾く意義って何だろう」と。ジミヘンやクラプトンもいる中、どうやったらオリジナルな存在になれるか試行錯誤していく過程で、三味線からヒントを得た「スラップ奏法」を編み出したんです。
 
ーー三味線がヒントだったのですね。「ギターを弾いていると『自由』になれる」とおっしゃいましたが、それは、「自分」というものを表現するのに最も適したツールだということ?
 
MIYAVI:そうですね。サッカー時代はボランチをしていたので、ゲームを作るのが好きだったんですけど、そのフィールドがギターでは指板に変わって、その上で自分はどんなものが創れるんだろう? って常に考えています。人はいつか死ぬし、死ぬからこそ何かを残したい。人によってはそれが「子供」であり、「生きてきた証」なんですよね。「ここにいたぞ、俺たちここにいたぞ」を、次の世代につないでいくというか。何かを残したいという本能的な「承認欲求」があるんですよね。それを僕は、ギターに見い出すことができた。それは僕にとって「自由」を手にしたということでした。

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