女性は排除、テロ首謀者は入閣 タリバン政権「融和」の実情

アフガニスタン情勢

バンコク=乗京真知
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 アフガニスタンでイスラム主義勢力タリバンが政権を崩壊させてから1カ月。会見で融和をアピールしながら、現実には締め付けを強めていく統治手法が明らかになってきた。

 タリバンは8月15日の政権崩壊後、国際社会の批判をかわす狙いから国内各派を含む「包括的な政権」をつくると表明した。

 ところが9月7日、主要な閣僚ら33ポストを独占する暫定政権の樹立を宣言。国連の制裁対象になっている幹部たちが入閣する一方、女性や少数派は排除された。

 カブールやヘラートなどでは9月初め、抵抗運動を支持する市民や女性の人権活動家らのデモが起きた。タリバンの実弾発射で死傷者が出たほか、取材中の記者数人が連行され、暴行された。タリバン内務省は8日の声明で「治安を乱す」としてデモを事実上禁じた。

 この日はタリバン内の最強硬派ハッカーニ派の首領シラジュディン・ハッカーニ幹部が内務相に就いた初日だった。ハッカーニ幹部は市民の犠牲をいとわない大規模テロを繰り返し、米当局が報奨金をかけて手配してきた人物だ。

止まる国際的支援 現金不足に苦しむ市民

 市民が苦しむのは現金不足だ。米国がアフガン中央銀行の資産を凍結したり、国際通貨基金(IMF)や世界銀行が支援の送金を止めたりした影響で銀行にお金がない。

 住民によると、国営銀行や都市銀行の本店だけが開き、連日数百人が列を作っているが、引き出し上限は預金者1人あたり週に200ドル(約2万2千円)だ。不動産業界や車販売業界から「商売が回らない」と悲鳴が上がる。

 カブールの国際空港の正常化は見通せない。米国人らの退避便や国際機関のチャーター機が飛んだが、人材流出をおそれるタリバンは一般の旅客機の運航を許していない。難民流出を警戒し、国境も一部の例外を除いて閉められている。

 物価上昇も著しい。政権崩壊前に比べ、主食ナンの原料の小麦粉は約4割、牛肉は約1割高くなった。

 一方、長く戦闘が続いてきた地方では、駐留米軍が8月末で完全撤退したことを評価し、タリバン支配を受け入れる人たちもいる。

 北部タハール州の40代の農民ザヒールさんは2年前、息子が戦闘に巻き込まれて死亡した。「殺し合いのない暮らしが第一だ。経済が悪化してもかまわない。この村は元々、貧しいよ」(バンコク=乗京真知

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