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“巣ごもり需要”で急増する宅配ドライバー。未経験でのリアルな報酬は?

 昨今のコロナ禍による業績不振により、減給や解雇、倒産などにより生活にも精神的にも追い込まれていたところに、これでもかととどめを刺すように出た2度目の緊急事態宣言。多くの企業が危機に瀕している中、コロナ禍を追い風に業績を伸ばしている業界がある。
宅配ドライバー

写真はイメージです

 そのひとつとして挙げられるのが宅配業界。大手宅配会社は、前回の緊急事態宣言後の業績は前年度を上回り、今回の緊急事態宣言により更なる売上げを見込んでいる。特にこの年末年始は、人手不足のなかにコロナ禍による巣ごもり需要、お歳暮などの年末商戦、大雪による悪天候も相まって混乱を生じるものだった。しかし、この難局を無事乗り越えられたのは“委託宅配ドライバー”の存在があるからである。  その個人事業主としての宅配事業が密かに人気となっている。未経験の人間が、個人事業主の宅配ドライバーとして独立するのはアリなのか。考察していきたい。

個人の宅配ドライバーの実情

 宅配業界未経験の人がいざ現場に出てみると戸惑うことが多い。  まず、最初に戸惑うのが、配達時に欠かせない端末機器の操作だ。この端末で配達の情報を吸い上げる。配達完了や不在の情報が逐一わかるのはこの端末機器があってこそだ。この端末を使いこなせてはじめてスムーズな配達ができる。  そして次に戸惑うのが荷積み。簡単そうに見えるがこれが意外に難しい。テトリスが得意だったとしてもワケが違う。様々な形状の荷物、上乗せ厳禁の荷物、横倒し厳禁の荷物と注意を払いながら詰め込まなければならない。きっちり隙間のない積み方をしないと、積める荷物も積めずに再度取りに帰る羽目になる。時間との勝負の宅配ドライバーにとってはかなりの痛手となる。  そして、最大の難関は配達ルート。一筆書きのルートといかない。時間指定があればその荷物を優先に配達しなければならない。また、配達エリアもいつも同じとは限らない。配達ルートの覚え方のコツを掴むまでにはかなりの苦労が要する。

荷物を1個運んで得られる報酬は?

 また、荷物の個数と実際の配達する個数は違う。  宅配便会社によって委託金はそれぞれ違うが、1個120円~150円程の料金で請け負う。時間あたりでいえば、ベテランでも1時間あたり15~20個、未経験の場合だと1時間あたり10個が関の山だろう。  朝から晩まで実働12時間で運び続けたとして、1日の配達個数は120個。不在の荷物は報酬に含まれないので、不在率が20~30%とすると、実質の稼ぎは1日100個。月25日稼働したとして、120円×100個×25日=30万円。  個人事業主なので、ランニングコストも相応にかかる。駐車場代・リース代(リース車の場合)・軽貨物車のローン代(購入者)、社会保険料、車両保険代、配達時のパーキング代、フランチャイズ加盟などしていたら加盟料、修理代など金額は人それぞれであるが、5万~10万円くらい。差し引きの手取りは月20万~25万円といったところだ。  これ以上稼ぐにはどうすればいいのか。それはただ単純に労働日数と時間を増やせば稼げるという話でもない。貨物自動車運送事業法の改正により個人事業主にも改善基準告示が適用されるようになり、個人事業主でも労働関連法令が適用されることとなった。稼ぐには、配達ルートや時間配分が重要になる。ここは経験で補うしかない。
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「委託切り」の落とし穴
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