「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。

ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。

  • 挨拶のできる子になるためには?


コミュニケーションの第一歩は「挨拶」からだと思っています。多くのお母さんお父さんは、我が子が元気にご挨拶できるようになってほしいと願っていますが、言葉かけを間違えると、かえって言えなくなってしまいます。

今回は、「幼稚園に送って行ったとき、息子に『大きい声でご挨拶は? 朝はなんていうんだっけ?』と何度言っても、挨拶ができません。他のお友達は元気に言えるのに恥ずかしいです。家では練習して言えるのに、どうしたらいいでしょうか」というご相談に、親子コミュニケーションアドバイザーがお答えします。

自分に置き換えて考えてみよう

子どもに挨拶ができるようになってほしいと願うお母さんの一生懸命な様子が浮かびますね。しかし、毎日お母さんから「大きい声で挨拶は?」と言われている男の子の心を想像すると、泣きそうな気持ちになります。

「叱っているわけでもなく、優しく言い聞かせているだけなのにどうして?」と思われた方は、自分のことに置き換えて想像してみましょう。

例えば、お姑さんに「美味しい朝食は? どうやって作るんでしたっけ?」などと、毎朝言われ続けたらどうでしょうか。

「私の作る朝食は美味しくないんだな……」「頑張って作った今日も、美味しくなかったんだ」「私はダメな妻なんだ」「もう料理したくない!」と、どんどん自信を失っていくのではないでしょうか。

挙げ句の果てに、「私はうまく作れません」と泣きそうになって言ったら、「あなたの努力が足りないのよ。練習しなさい!」と言われたとしたら、どうでしょうか。「私は料理ができません。才能がないんです」と、自分で自分のことをできないと決めつけてしまいそうですね。

子どもならなおさらです。毎朝毎朝、「なぜ言えないの?」と繰り返し言われ続けたら、「自分は挨拶できない子だ」と決めつけてしまうかもしれません。

挨拶のできる子になってほしいと思っている親の願いとは逆効果ですね。ですから、「挨拶は?」と指示して言わせる言葉かけはやめましょう。

自然と言いたいと思うような気持ちを育てる

指示して言わせるのではなく、幼稚園の門を潜るのが楽しくなるような言葉かけをしましょう。ワクワクして、「おはよう!」と自分から自然に言いたくなるような気持ちにすることが大切です。

例えば、「今日は幼稚園で何して遊ぶのかなあ! たのしみだねー」などなど。「ことば」を言わせる前に、「気持ち」を育む方が重要なのです。

「おはようございます」と我が子が言えると親は安心しますが、気持ちが伴っていなければ、意味がありません。まずは、「ワクワクする!」「先生やおお友達とコミュニケーションを取りたい!」と思う気持ちを育てる方が先です。

ですから、お子さんが「おはようございます」と言えなくても、いまは言いたい気持ちを育んでいる真っ最中だと割り切って、それを指摘しない方がいいですね。できれば6年間くらいは、気持ちを育むことを見守りましょう。

親がお手本となる

お子さんが気持ちを育んでいる間、お母さんお父さんは楽しそうに挨拶をするお手本を見せましょう。

先生に言われる前に、親が率先してするくらい、元気に「おはようございます!」と先生(相手)に挨拶できるといいですね。

「子どもが言えなくて……」とご相談される方の多くは、実はご本人が挨拶をできていない場合がほとんどです。おそらく自分では気づいていないと思いますが、お母さんお父さんが相手に言われる前に挨拶をする方のお子さんは、何も言わなくても、自然と挨拶できるようになっています。

お子さんのことが気になったら、まずは自らを振り返り、自分を変えてみる方が早道です。

他の子と比較をしない

他のお子さんができると、つい比べてしまって焦る気持ちもわかりますが、できないところばかりを気にしてもできるようにはなりません。またそればかりか、自己肯定感を育むチャンスも逃してしまいます。

そのため、そんな時こそ過去のお子さんと比較して成長を実感し、言葉にして伝えられるといいですね。

例えば、「こんなにも元気に歩けるようになったね」など、そんなの当たり前と思ってしまうようなことでも、数年前までハイハイしていたのを考えれば、すごい成長です。

子どもが生意気なことを言っても、「そんな風に自分の考えを話せるようになったんだ」と思えば、数年前まで言葉を話せなかったときと比較して、ちゃんと成長しているのだなと感じられます。

お母さんが「ご挨拶できるかできないか」なんてことにこだわっている間に、子どもはぐんぐん成長しています。ぜひその成長を見逃さないよう我が子のできるようになったところを見つけて、言葉にしてお子さんに伝えられるといいですね。

一つひとつ自信をつければ、挨拶はあっという間に言えるようになるでしょう。