電気自動車で使用済みとなったバッテリーをどうするのか。その問題に取り組むフォーアールエナジーの牧野英治社長は、再利用への道筋を確固たるものにすべく、メーカーの壁を越えた協業も可能との考えを示す。同氏へのインタビューの後編をお伝えする(前編はこちら)。

浪江町が最適な立地だった理由

福島県浪江町に開所した新工場「浪江事業所」は、フォーアールエナジーにとって最適な機会として実現した。およそ1年半前の2016年8月に、フォーアールエナジーと日産自動車は浪江町の馬場有(たもつ)町長の訪問を受ける。その際、馬場町長から、半年後には避難指示が解除となる予定であることから、住民が戻ることも見据えた新しい街づくりを進めたいので、EV導入と再生エネルギーの活用を支援して欲しいとの依頼を受けたのだ。

  • フォーアールエナジー浪江事業所の外観
  • フォーアールエナジー浪江事業所の内観
  • 2018年3月に開所した浪江事業所(画像提供:フォーアールエナジー)

「EVの普及と、再生エネルギー活用のためEVで使用済みとなったリチウムイオンバッテリーを事業化することは、まさに弊社設立の根幹となる構想です。その上で、浪江町での工場建設には補助金が出て、また日産のいわき工場が近いため、1パック300キロ近いバッテリーの輸送において、物流の便もよい立地です。さらに、事業所を開所できれば地元の雇用に貢献することができます。将来的にEVやPHVの普及が進めば事業拡大の可能性もあり、雇用を増やすこともできるでしょう」(以下、発言は牧野氏)

「浪江町が推進するスマートコミュニティへも、日産と住友商事でEV分科会を作り、EV普及への取り組みを始めています。さらには、町のイベントにも協力していきたいと考えています」

福島から世界へ! 新しい外灯の設置も開始

事業所の開設とともに始めたのが「THE REBORN LIGHT」の設置だ。これは、フォーアールエナジーの中古リチウムイオンバッテリーと太陽光発電、LEDライトを組み合わせることで、完全に系統電力から独立した外灯を浪江町に設置するという、日産との共同プロジェクトだ。

  • THE REBORN LIGHT

    「THE REBORN LIGHT」(画像提供:日産自動車)

「浪江町では学校が再開された一方で、スーパーマーケットがなかったり、外灯がなく暗くて不安だったりとの声が母親から聞かれました。その一端に答えることのできるプロジェクトです。同時に、これは浪江町に限ったことではなく、世界中にはまだ12~15億人ともいわれる無電化地域の人々がいて、そうした地域では疾病率が高かったり、学習が十分でなかったりしますので、そうした地域へ明かりを届けたいという最終形への第一歩の取り組みなのです」

「ビジネスという利益追求だけでなく、社会貢献の面で、まずは浪江町の街づくりに全面的に協力していきたいと思っています」

EVの普及は、単に環境エネルギー問題を解決するだけではなく、広く社会貢献や福祉にもつながる事業だ。自動車メーカーであることから一歩を踏み出した日産だからこそ、こうした展開が生まれるのではないだろうか。