【少女漫画】名作『君に届け』スピンオフはときめく展開いっぱい! 一生続く幸せってなに?

『君に届け』スピンオフはときめく展開いっぱい! 

 椎名軽穂『君に届け 番外編~運命の人~』の3巻が7月25日に発売された。『君に届け』のスピンオフ漫画となっているこの作品は、本編・主人公の黒沼爽子の恋のライバルだった「くるみ」こと胡桃沢梅が主人公だ。

 同じ大学に進学した爽子とくるみ。気乗りしない合コンに、爽子を誘って参加したくるみだったが、おかしな男に絡まれ……。そんなときに助けてくれたのが「えーじお兄ちゃん」。爽子のイトコ、赤星栄治と言うが……。

■報われない恋を経て

 実は赤星は椎名軽穂『CRAZY FOR YOU』に登場していた人物。ヒロインの幸に想いを寄せるものの、実らず……いわば、「当て馬」的なポジションだったが、高い人気を誇っていたキャラクターでもある。

 そして、くるみは爽子の恋人・風早翔太に長く片想いをしていた。爽子と風早の仲を邪魔しようといじわるな行動も起こしていたが、そのピュアで真っすぐな想いは多くの人の共感も呼んだ。

 そんな2人が出会い、距離を縮めていくわけだから椎名軽穂ファンとしては胸が熱くなる展開である(それよりなにより、好きなキャラクターには幸せになってほしいという思いもあるが……)。

■いくつになってもときめいてしまうズルい展開

 率直に言って、赤星の登場の仕方や現れ方がズルい。ヒーローの登場の仕方である。好きな人に「来てほしい!」と思うナイスタイミングで現れる。恋愛に慣れていないくるみはそんな赤星に振り回されてしまうが、わりと赤星のアプローチは真っすぐだ。「好きだから好きと言っている」というような潔さがある。

 が、くるみはヘタにモテていたり、見た目で近づいてくる男が多かったり、何より、自分はかわいげがない、と思っているので、そんな赤星の気持ちを素直に受け止められない。どちらかと言うと、赤星がくるみに振り回されていて、かつ、それを楽しんでいるように見える。

 3巻では「今すぐ会いに来てほしいの」とくるみが言ったところ、走って家までやってくる赤星。これも「しかたないな」とか「めんどくさい女だな」などと思うことなく、「オレが早く来たかっただけだし」と言う。そして、それは本音だ。要は、くるみのワガママぐらいはなんてことなく受け入れられる器の広さを持った人間なのである。羨ましい限りだ……。ずっと一緒にいて、と素直にくるみが言えるのも、赤星の器の広さがあってこそだ。

■くるみの「運命の人」は?

 素直に受け止めれば、くるみの運命の人は赤星なのだろうが、3巻の表紙に描かれているのはくるみと、赤星、そして爽子だ。

 くるみの「爽子ちゃんはやっぱりわたしの運命のひとなんじゃないかなあ」という言葉があるが、きっと、爽子とくるみ、お互いにとって「運命の人」なのだろう。ただの恋のライバルだけではなく、本音でぶつかり合って、親友になれた。こんなふうに友情が成立するのはうらやましいと思う人も多いのではないだろうか。おばあちゃんになっても2人がきゃっきゃと盛り上がってくれていたらいいな、と思う。

 ちなみに、本編のヒーロー・風早の出番は少なかったが、今も元気に爽子一筋でなによりである。少し、爽子と風早が仲良くしているだけの話が見たい気もする。

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