第二次世界大戦終結以降、世界の美術の中心はパリからニューヨークへと移行したと言われています。その事実を決定的なものにしたのが、1964年のヴェニス・ビエンナーレで、ロバート・ラウシェンバーグがアメリカ人として初めて大賞を受賞したという出来事です。本講演では、ラウシェンバーグの国際活動を中心に、1960年代の国際美術シーンが様々なコンフリクトを伴いつつも急速にアメリカ化した背景を、現在のグローバル化した美術界の起源として検証します。当時、各地の美術家達は圧倒的影響力を持つアメリカ文化やその美術にどう対峙したのでしょうか。パリやストックホルム、東京などの都市における、アメリカ美術に対する憧憬や反発を具体的に紹介しながら、戦後の国際美術シーンを支配した力学について考察します。 <講師略歴> 専門分野は第二次世界大戦後のアメリカ美術と美術シーンのグローバル化。国際基督教大学卒業後、大阪大学とイェール大学で近現代の美術を専攻、2007年にイェール大学でPh.D.取得。2010年にMIT PressよりThe Great Migrator: Robert Rauschenberg and the Global Rise of American Artを出版予定。現在、大阪大学大学院人間科学研究科グローバルCOE特任助教。