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mixi > イベント一覧 > 東京都 > 2017年8月 > 2017年8月25日(金)の東京都のイベント > 第15回 再・書き方講座φ(uuzZ

開催終了第15回 再・書き方講座φ(uuzZ

コミュ内全体

詳細

2017年07月18日 17:58 更新

書き方をもう一度初めから。
こちらは初心者のための基礎講座です。
新たに小説の書き方について考えてみたいと思われた皆様はもちろんのこと、もう一度基礎から復習したいと思われた皆様も、是非ご参加くださいませ♪^^)/"

第14回は「恋愛小説の手法を使って、別のものを」というテーマで、講座が行なわれました。

第15回は「小説における冒頭のあり方」というテーマで、講座が行なわれる予定です。

最近いつのまにか、課題が、復習ではなく予習として、使われるようになってきましたね(^^;;
今回の課題も、大変そうです。
冒頭でインパクトを与えるなんて、どうしたらできるのだろう、と、考え中。

さて、講座に参加の方は、参加ボタンをポチッとしちゃってください。
また、課題提出も、いつもの如くこちらへお願い申し上げます。

皆様、お待ちしておりますー!

コメント(41)

  • [1] mixiユーザー

    2017年07月19日 01:12

    書かなくちゃ
  • [2] mixiユーザー

    2017年07月19日 01:47

    その1

    「ごめん。私、おやじ顔の男って、まったくダメだから」
     女にふられた次の日の朝、私は家の前で真っ青なバケツを拾った。その日の朝の皮肉なほどの晴天の空に皮肉なほどに似た色のプラスティックの安物の小さなバケツ。横には黄色の象が描かれていた。
     そっと拾って見つめることで、私は、そのバケツが、まだ、真新しいことを知った。バケツは明らかに子供の玩具なのだが、そこには、まだ、砂さえ入れられた様子がないのだ。しかし、値札のシールのようなものもない。子供がそれを買って、意気揚々と遊びに出掛け、その途中で落としたか忘れたのだろうか。それにしても、この近所に公園のようなものがあっただろうか、と、そんなことを思いながら、いったん、家の中にもどった。そのまま放置してしまうと、風がバケツを転がして、車に轢かれる可能性がある。それがトラックなら木っ端微塵だ。
     冷蔵庫からペットボトルのコーラを出した。それを一口飲んで残りを流しに捨てた。コーラの一気飲みが出来るほど、もう、私は若くない。今年で四十歳になるのだ。
     空になったペットボトルを軽く洗い、中に水を入れた。ペットボトルの蓋はせずに、それをバケツに入れて玄関の前にそっと戻した。子供が探してに来れば見つけられるはずだ。水の重さで風には飛ばされない。蓋がなければ、ペットボトルは重し替わりだと分かってもらえるのではないだろうか、と、そう考えたのだ。
     それだけの作業で汗をかいた。やはり若くない。早くに死に別れた両親が残した家。その家を出て私は、電車で二駅向こうの駄菓子屋に向かう。そちらも両親が残した店なのだ。
     私の父は駄菓子屋をやっていたわけではない。母も駄菓子屋をやりたいような人ではなかった。ただ、不動産投機目的で店舗付きの家屋を買っただけだった。そして、せっかく近所の子供たちの楽しみ場である駄菓子屋を早々に閉めてしまうのも可哀想だという理由で母が細々と店を続けていただけだった。
     交通事故で父が死んだときは辞め時だったのだが、その頃には、弟が幼く、生活の足しにでもなれば、と、辞められなかったのだ。もっとも、父の残したものは意外と多く、そんな心配はないと分かるのだが、その時には、今度は、また、近所の子供たちのために、と、辞められなくなってしまったものだった。
     その幼い弟は成人すると、すぐにアメリカの大学に入学し、そのまま向こうで就職してしまって、日本には帰って来なかった。最後に弟に会ったのは、母の葬儀の日だった。
     家族に縁のない兄弟だからだろうか、弟も私も母の死に対しては冷静だった。弟は母の死を悲しむよりも私の結婚の心配をしていたぐらいだった。私と違い、子供の頃から女にモテた弟は、アメリカでもモテるらしく、母の葬儀には連れて来なかったが、すでに、美人の嫁さんをもらっていた。葬儀に来れなかったのは、ちょうど、その頃、身ごもっていたからだった。
     駄菓子屋は忙しくない。ゆっくりとした朝から店を開け、夕方には閉めてしまう。もちろん、そんな商売では食べてはいけない。私は、内職のような原稿書きをして細々と暮らしていた。幸い、家は駄菓子屋の家屋も含めれば二軒ある。弟はどちらの権利も主張していない。日本にもどる気もないらしいし、アメリカでも、そこそこにエリートらしいからだ。
     むしろ、弟は私の生活を心配して、せめて駄菓子屋を閉めて改造し、コンビニにでもすればいいと言ってくれている。資金が足りないなら自分が少し出してもいいとまで言ってくれるのだ。
  • [3] mixiユーザー

    2017年07月19日 01:48

    その2

     しかし、それは私には出来なかった。
     子供たちは、こんな時代になっても、まだ、小さな菓子や安い玩具に魅了されるものだからだ。
     私は好きなのだ。百円玉を握りしめて、たった百円の買い物に真剣になっている子供たちを見ているのが好きなのだ。
     ところが、そんな私を子供たちは怖がった。私は子供に好かれるタイプの顔ではないらしいのだ。好かれるどころか、あまりに幼いと、私の顔を見ただけで泣きだすことさえあるほどだった。
     近所の母親が、幼い子供を躾けるのに「悪い子は、駄菓子屋のおじさんに攫われるよ」と、言ったりするらしいことも、何となく知っていた。私のほうが子供好きなのに因果なことである。
     バケツを玄関に置いて店に出かけた夜。帰宅すると、バケツはそのまま置かれていた。夜は猫などが悪戯するかもしれないと思い、一度、家にバケツを入れた。そして、ワープロで「黄色の象さんが寂しがっていますよ。忘れた子は、持ち帰って上げてください」と、書いてプリントした。少しばかり気持悪いようにも思ったが、まあ、おやじ顔の男が書いたと知られるわけでもないからいいかと思った。
     黄色い象が寂しがっている、と、そう書いて思い出したことがある。弟が五歳のときだった。弟は公園でいじめられて、泣きながら帰って来たことがあった。確か、そのとき、逃げ帰るのに必死で、買ってもらったばかりの砂遊び用のバケツを公園に置いて来たのだった。当時、すでに中学生になっていた私は、泣いている弟を連れて公園に探しに行ったのだが見つからなかったのだ。
     公園。そうだ。家の近所には公園があったのだ。今は、何になっているのか分からない。そもそも、本当に公園だったのか、ただの空き地だったのかさえ覚えていない。そんな時代だったのだ。
     確か、あのバケツも青かったような気がする。
     歳のはなれた弟に父親がないのを不憫に思った私は、自分もまだ子供だというのに、弟の父親代わりになろうと必死だったような気がする。
     そうだ。あのバケツにも、確か黄色い象が描かれていて、私は弟のために、その象が弟の手を離れて冒険に出る物語りを作って聞かせてやったのだった。思えば、それが私がもの書きをはじめるきっかけになったような気がする。
     バケツは次の日も、その次の日も私の家の玄関に置かれたままになっていた。一週間ほどそのままにしたが諦めて私はバケツを部屋に入れた。老け顔の男所帯には不釣り合いなバケツだったが、捨てるのも仕舞いこむのも気が引けたので、タンスの上に置いた。
     タンスの上にバケツが置かれて一か月。その間に私はさらに二人の女にふられ、駄菓子屋に来た二人の子供に泣かれた。そして、その間に、手の平に乗る怪力の黄色い象と少年の物語りを書いた。
     その時に書いた物語りが児童文学賞をとった。児童文学賞をとったと報せが来た日。タンスの上に置いたはずの青いバケツが消えていた。
     児童文学賞受賞のインタビューに来た女が、私のいかつい顔に驚いて「あ、失礼ですけど、ちょっと意外でした」と、泣きそうな顔で言った。本当に失礼な女だが、私は少しだけ好きになった。どうせ、また、ふられるのだろうが。
  • [4] mixiユーザー

    2017年07月20日 16:31

    その1

     瞼を擦り続けてくれればそれでいいから、と、そんなことを言うお客がSМクラブに来た。このバイトをはじめて三年。いろいろ変わったお客が多く、三年もすればたいていのお客の要求には慣れていた。でも、まさか、瞼を擦ってくれと、そんな性癖まであるとは思わなかった。
     しかも、そのお客はSプレイで入っていた。通常、SプレイはМプレイよりも料金が高い。たいていのお客は安いほうで入って高いほうのプレイを要求する。それどころか、何を勘違いしているのか、セックスしてやるから無料でプレイしろと言うお客までいるぐらいなのだ。
     そんなややこしいお客は、しかし、店長に言えば適当に処理してくれる。
     同じややこしいお客でも、瞼を擦れというのでは店長には相談出来ない。
     お客の年齢を推測しても風俗嬢には意味のないことだけど、彼は五十歳前ぐらいと見た。ブランドではないが質の良いスーツを着ている。もしかしたら仕立てものかもしれない。
     全裸になってシャワーを浴びさせるのはお店のルールなので、それを説明すると、素直に従った。瞼を撫でるのにシャワーが必要なものかどうかが分からない。
     お客はSプレイで入っているので、こちらもお店のルール通りに全裸になってお客と一緒にシャワーを浴びる。その時に、ていねいにアソコも洗い、お客が望めばそれを口に入れるのだが、そのお客は当然のように拒んだ。瞼を擦られる以外のことに興味がないと言うのだ。
     仕方ないので、全裸のお客をベッドに仰向けに寝かせて、私は横に座って、そっと瞼を撫でた。眼球の動きが瞼を通して指先に伝わった。少し意地悪な気持ちもあってお客は全裸で寝かせてある。本当なら下半身にはタオルでも掛けたほうがいいのかもしれないが、私は見たかったのだ。彼のそれが変化するのどうか。
     まるで手品師が慎重に何かのタネに触れるかのような手つきで私は両手で両瞼を擦ってみた。私のそんな大袈裟な動きはどうにも滑稽だったが、どうせ彼には見えないのだ。
     瞼だけでは飽きてしまうので、飽きてしまうのはお客ではなく私がなのだが、とにかく眉毛にも触れてみた。すると、お客は喉の奥で何やら呻いている。声を押し殺しているようなのだ。驚いた。アソコは見事に怒張してしまっている。優しい顔、しなやかで美しい身体、女のように美しい手、それと正反対の恐ろしい形相のアソコなのだ。この優しさの中に、そんな狂暴なものが隠されていると、どの女性が想像出来ようか。
     むしゃぶりつきたい、と、そう本気で思ってしまった。そんなことはSМクラブ三年。風俗嬢五年のキャリアにして、はじめてのことだった。しかし、それはやってはいけないのだ。こちらもプロだ。自らの興奮のままに性を楽しんでいいはずがない。
     私ではなく、お客が飽きるか満足するまで、私は瞼とその周辺だけを触っていればいいのだ。
     最初の十分ぐらいは、それでも、まあ、面白かったのだが、十分を過ぎると、本当に飽き飽きとして来る。その上、瞼は意外と繊細なので、余計なことを考え難い。
     顔面騎乗好きのお客というのも、なかなか飽きなかったりするし、乳首を舐めるのが好きなお客も執拗なものだ。しかし、そんな時には、今夜は何を食べに行こうとか、明日は映画にでも行こうか、と、そんなことを考えていればいい。そうすれば時間は過ぎる。風俗店のプレイ時間は意外と短い。
     ところが、瞼を触っているだけの時間は恐ろしく長い。
     余計なことを考えると、つい、指先が強く眼球を押してしまいそうだからだ。風俗嬢がお客の目を指でつぶすなんて事件は起こしたくない。当たり前だ。
  • [5] mixiユーザー

    2017年07月20日 16:32

    その2

     余計なことが考えられない私の頭の中には、おままごとのピンクのタンスばかりが浮かんでいた。その日の朝、なんと、そのタンスを自宅マンションの粗大ごみ置き場で拾ったのだ。私は壊れた椅子をそこに置きに行ったところだった。粗大ごみ置き場には、ソファー、机、鏡台、そして、小ぶりのタンスが置いてあった。その小ぶりのタンスと並べられるようにして、ピンクのプラスティックの十センチほどの高さのタンスが並べて置いてあったのだ。もちろん、そちらには東京都指定の粗大ごみのシールは貼られていなかった。もっとも十センチのタンスは粗大ごみでもないのだ。
     見ると、まだ、本当に綺麗でプラスティックなのに、傷ひとつ付いていなかった。
     ごみ置き場から物を持ち去るのも犯罪だと聞いたことがあるが、このまま他の粗大ごみにつぶされるのも可哀想に思って私はそれを拾ってしまったのだった。
     瞼に触れている私の頭の中には、あの安いプラスティックのタンスばかりが浮かんでいた。
     そして、私は思い出したのだ。あのタンスはきっと私が子供の頃に失くしたタンスだ。欲しかったのだ。はじめての、おねだりで買ってもらったタンスだった。おそらく、その金額は大したものではない。それでも、私はそれを親にねだることが出来なかったのだ。
     私の家は貧しく、その上、少し手間のかかる弟がいた。ゆえに、母親は弟にかかりきりだったし、経済的にも弟優先だった。それが分かっていたので、私も、弟のためと、いろいろなことを我慢させられていたのだ。お人形の一つも買ってもらえなかった。いや、買ってと言うことさえ私はしなかったのだ。
     そんな私が、生涯でたった一つのおねだりで買ってもらったタンス。でも、どうして、お人形さえ持っていない私がお人形用のタンスを欲しがったのだろうか。その理由が私には思い出せなかった。

    「ありがとうございます」
     ピンクのタンスのことを考えてうっかりしている内にお客は射精してしまったらしい。私はあわてて、まるで絹にくるまれた上質の枕のような彼のお腹からそれを拭き取った。
    「こんな性癖に、ここまできちんと付き合ってくれたのは、あなたがはじめてでした」
     付き合ってない。すっかり意識は昔にもどってしまっていたのだから。
    「私ね。両親に愛された経験がなくてね。唯一残っている愛された記憶が、両目をケガで見えなくしたときに、世話をやかれたことなんですよ。食べ物を口に運んでくれて、腫れた目を冷やしてくれて、そして、瞼を撫でてくれたんです。それがどうして性に結びつたのか分かりませんでした」
     お客は、その後、一人でシャワーを浴びてすっかり服を着てもどって来た。時間はまだ残っていた。事務所からの電話が鳴る前にお客を帰すと、私の怠慢のように思われる。それを告げると、お客は優しく微笑んでベッドに座ってくれた。
    「今日、はじめて思い出しました。あの時のケガ、あれは母に棒で叩かれたものでした。だから、あの時だけ優しくしてくれたんですね。それを他人に知られたら大変なことになると思ったんでしょうね。ケガを治したいのは、私のためではなく自分のためだったんですね」
     お客が「殴られた原因は、確か、私が父の持っていたエッチな写真を見ていたからでした。どうして、こんな大事なことを私は忘れていたのでしょうか」と、言った時、事務所から電話が入った。まさか、延長して話の続きをしたいかとも尋ねられないので、何も聞かずに私は終了を確認した。
     事務所にもどって私は自分の鞄の中を見た。ピンクのタンスは、ちゃんと鞄に入っていた。
     そして、私も思い出した。
     お人形ごっこに誘って欲しいと近所の女の子たちに頼んだとき、私は何も持っていないからダメだと断られたのだ。自分は何も持ってこないで、他人のものばかり借りる子はずるい子だ、と言われたのだ。
     それで、せめて、誰も持っていない、あのお人形用のタンスを買ってもらえば一緒に遊んでもらえると思ったのだ。しかし、私はそれを言えなかったのだ。言えないまま、近所の女の子たちには、お人形用のタンスを買ってもらったけど、それを失くしてしまったと嘘を言ったのだ。どうせ嘘を言うのなら、買ってもらったお人形を失くしたと言えばいいようなものなのに。
     涙がこぼれそうになった時、事務所の人から次の指名が入ったことを告げられた。私は笑顔で答えた。そして、安い置き鏡に向かって女王様の顔を作りはじめた。その時、瞼に自分の指が触れ、ああ、これはこれでいいのかもしれない、と、そう思った。そして、拾ったピンクのタンスに合うお人形を買うことを決めた。
  • [6] mixiユーザー

    2017年07月22日 00:48

     秋葉原でAIBOを拾った。
     嘘でしょう?あの一世を風靡した犬型ロボットよね?さすが秋葉原。びっくりするようなものが道端に転がってるな。
     関心したり、驚いたりしながら、高価な落とし物だから、とりあえず交番を探した。
     ロボットだけど犬は犬。わたしは犬が好きだったから、赤ちゃんを抱くように両腕でAIBOを包むようにしながら交番を探した。
    「あの、落とし物なんですけど。」
     警察官は事務的に拾得物の手続き用書類を机に置き、記入欄を指差しながら、記入方法を棒読みした。
     たしかに、拾ったものには違いないけどね。もう少し温かみのある対応をしてくれたっていいのに。警察官には聞こえないくらいの声でぶつぶつつぶやきながら、書類を書き終えると、もう1人の警官が奥の休憩所から出てきた。
    「これって、あのAIBOですよね、へぇ。」
     この警官からは、見世物を見るような興味本位だけの視線しか感じなかった。わたしはこの交番にAIBOを預けておくのが不安になった。
     飼い主が見つかるまでの間、どんな扱いをされるのだろう。バラバラにされたりしないだろうか。AIBOだもん。ヤフオクで売られたりしないだろうか。修理のためにパーツの売り買もあるようだし。
     警察だから そんなことするわけないのだろうけど。
    「あ、この子ね、やっぱりお家に帰りたいみたい。ちょっとお散歩したいって言うから連れてれてきたけど、やっぱり連れて帰ります。」
     自分でも何故こんなおかしなことを言っているのかわからなかった。
    「はあ?君の物だったの?」
    「なら、気をつけて帰りなさいよ。」
     警察官は、またオタクかよ。やれやれといった表情ではあったが、親切に見送ってくれた。奇妙なことを言ったから、一応、風貌などを記録しておくのかもしれない。
     帰宅する道でAIBOに名前をつけたくなった。そういえば子どもの頃も お人形遊びをするときに みんな名前をつけていたっけ。
     日本人にないような名前が好きだった。キャサリン、ナンシー、どこにでもありそうな横文字の名前をつけて遊んでいた。
     この犬、なんて名前にしようか。
     考えているだけで幼少期に戻ったような気持ちになった。わたしはひとりで何も話さない人形と何時間も遊んでいるのが何より落ちつける時間だった。誰にも邪魔されず、誰の邪魔もしない時間だったから。
     その日から また わたしのひとり遊びが復活した。
    「おはよう。行ってくるね。いい子にしているのよ。」
    「ただいま。お利口にしてた?お腹すいたでしょう。もう少し待っていてね。」
     それからしばらくの間、AIBOと家族のように暮らした。不思議なくらい、寂しさや虚しさはなかった。むしろ、この子犬がいつも待っていてくれるという安らぎがあった。
     でも、歩くことさえできないこの子犬がかわいそうでたまらなかった。野原を走る本物の犬のようにしてあげたかった。AIBOの頭脳は パソコンと同じようなもの。ならば会話もできるようにしてあげたい。チップごと変えたら、なんとかなるのではないか。
     走ること。話すこと。けれども果たしてそれは、この子犬が望んでいることなのだろうか?
     何も語らないロボット犬の頭をずっと撫でながら、いつものようにAIBOと一緒に眠りについた。
     その夜、AIBOが枕元に立ち、トコトコ歩いたり、ぺたんと座ったりしている夢をみた。歩けるようになったの?!
     いや、AIBOじゃない。だって、シッポがフサフサしていたから。昔 我が家で飼っていた雑種にそっくりな犬だった。
     賢くて優しい犬だった。夏になると、よく兄と一緒に河原に連れて行った。膝まで川に入り、わたしが溺れたふりをすると飛び込んで助けようとしてくれた。
     もしかしたら、このAIBO、わたしがひとり遊びと犬が好きなことを知っている人からのプレゼントだったのかもしれない。
     その日、AIBOの名前が決まった。
     ねぇ、Ichiro、今度のお休みにはあの川に行こうか。



  • [9] mixiユーザー

    2017年08月14日 00:51

     あれ、削除しましたか?
  • [10] mixiユーザー

    2017年08月14日 01:38

    唐突に申し訳ありません。はじめましてハル♂と申します。
    この講座は定期的にされているのでしょうか?
    途中の回からの参加などは可能なものなのでしょうか?
    いきなりごめんなさい。
  • [11] mixiユーザー

    2017年08月14日 04:02

     月に一回のペースで開催しておりますが、途中から参加しても、ついて行けないと思います。一度、別の日に補講という形で、これまでに何をやっていたのかを、聞いていただかないと、無理だと思います。
  • [12] mixiユーザー

    2017年08月14日 08:54

    >>[10]

    はじめまして、こんにちは^^)
    再・書き方講座を主催している、詩禽 尋(Hiro)と申します。
    早速ですが、一応、主催者として、ご質問に回答させていただきます。
    こちらの講座は、月に一度、鹿鳴館サロンにて、開催しております。
    鹿鳴館執事さんより出される様々な課題をもとに、小説を書き、提出し、添削(?)していただく…といった流れが基本です。
    講座では、参加の皆様それぞれで、課題についての意見交換などをしつつ、進めております。
    そして、私どもはもちろん、途中参加も歓迎しております。
    しかしながら、鹿鳴館執事さんも申している通り、こちらの講座も第15回を迎えます故、少し難易度が上がってきておりますので、一度、別の日に補講を受けていただいてから、参加してくださった方が、良いかもしれません。
    ただ、講座の様子を知る意味でしたら、まずは早速、見学として、イベントへお越しになられるのも、私は良いと思います。
    お待ち申し上げております、ね。
  • [13] mixiユーザー

    2017年08月14日 10:12

    >>[9]
    私のですよね。
    課題が一つ抜けていたので、修正します
  • [14] mixiユーザー

    2017年08月14日 10:40

     順番は守らなくても、あれ、格好よかったですよね。
  • [15] mixiユーザー

    2017年08月14日 10:49

    ありがとうございます。
    少し加えたのですが、もしかしたら、元のでも課題クリアしていたかもしれないとも思いました。
  • [16] mixiユーザー

    2017年08月14日 10:56

    ウイッグ


    ゴツン。足元に違和感を覚え、少し躓きかける。駅の階段を下り、マクドナルドの角を曲がって、あと少しで到着というときだ。
    足元を見ると、パンダ柄エコバック。中に何か丸いものが入っている。これか。周りには開店前で暇そうな客引きの兄ちゃんと、スーツ姿のサラリーマンしか居ない。どちらもパンダ柄が似合うとは思えない。ましてエコバック。道端に転がるそれの持ち主は居ないようだ。
    足はまだ痛んでいる。気持ちは、イラついている。そうでなくても、早朝に母から来た訳のわからない電話でイラついていたのだ。認知症が少し入ってきた母は、隣家の猫に監視されているのどうので、一度見に来てほしいだの訳のわからぬことをまくし立てた。
    エコバックを袋ごと遠くへ投げつけたい気持ちで拾い上げる。そして、袋を覗き込む。
    ウォー!何事かとサラリーマンは立ち止まりこちらを注視している。客引きの兄ちゃんはこちらに歩み寄ってきた。袋の中には頭、人間の生首が入っていた。ショートヘアーの女性の頭。
    しかし、それは違った。なかにあったのは、美容師さんがカットの練習に使う髪の毛の生えた頭だけの人形。こんなのに驚いたなんて恥ずかしい。「どうしたジャック」と聞く客引きの兄ちゃんにあわてて、なんでもない何でもない。と言い、足早に我が店BAR J に向かう。手にはパンダのエコバックを持ったまま。あわてて、持ってきた。どうしよう。と思いつつ階段を上がり鍵を開ける。
    ボトルを守るためにいつも空調はつけっぱなしの店内は、外から入ると少しひんやり感じた。そして、手には生首・・・。
    ウイッグか、懐かしいなあ。そう思いながらエコバックから生首いや、ウイッグを取り出す。かつて美容師を目指していた時代もあったことを久しぶりに思い出した。こんなウイッグを使って国家試験のカールの勉強もカットの練習もしたなあ。
    だが、結局国家試験は受けなかった。美容師の道はあきらめて、バーテンの道を目指すことになった。もともと無口な私は、やっぱり美容師には向かなかった。うすうす思っていたことが、サロンの実習に行っていた某カリスマ美容師一言で決定的になった。「男性は髪が伸びたから切る。女性は、気分を変えるために髪を切る。だから美容師に必要なのは技術以上に気分を変えられる話術だよ。」悩み、考え、結局美容学校の紹介でホテルへ、そこでバーテンへの道を選択した。美容師になろうと思ったのは、上手に切って喜ぶ顔が見たいその一心だった。その気持ちは重かったのだけど、職業選択としては安易だったのかもしれない。

  • [17] mixiユーザー

    2017年08月14日 10:59


    貧しい家庭に育った私は、中学の終わるころまで床屋というものに行ったことがなかった。髪の毛が伸びると、アパートの廊下に椅子を持ち出し、シーツを2つ折りにして首から下げ待機した。母がなけなしのお金で買ったカット用のはさみと、普通に店で扱っている安い櫛を持って儀式が始まる。どこかで習ったわけではない。練習台は私の頭と弟の頭。すべて1本のはさみ。カット中は時々襲いくる痛みに耐えた。出来上がった後は、学校で、街中での視線に耐えた。いちばん耐えなければならなかったのは、友人たちは床屋で切っているのに自分だけは違うという自分自身のさびしい気持ちだった。中学生になって、本当はいけないのだろうけど、ビルの掃除のアルバイトをやらせてもらった。少しながらのお金を得て、そのお金で初めて床屋に行った。入り方も、ふるまい方も何もかもわからない緊張の中で、鏡の前の椅子に案内された。首にタオルを巻かれ、専用にあつらえたきれいなクロスをかけられ、おじさんの次の行動を待つ。私の髪をいじりながら、おじさんは一言、前は誰が切ったの?毛先がばらばらだね、と言った。そして彼は、散発用の長めの櫛と、いくつかのはさみを駆使して、私を仕上げていった。丁寧に最後はシャンプーまでして。
    翌日から私はますますビル掃除のアルバイトに精を出した。そして、二度と母の練習台になることはなくなった。母は悲しいような表情を浮かべて床屋に行く私を見送ってくれた。
    このウイッグは随分と練習をした後のようだ。髪の毛はベリーショートと言えるくらいショートになっている。貧しかったあの頃、母だっていろいろなことに耐えて生きていたんだろう。自分は母の散髪くらい耐えられなかったのかと思う。母の散髪が上達していくのに合わせて、変わっていく何かを感じていたのだろう。そう思えるのも、そう思う充分な年になったということだろう。だが、あのときには戻れない。
    大人になるといろいろ耐えなければならないこともある。今日、仕事で疲れていそうなお客さんが来たら、マザーズタッチでもサービスに出してあげよう。このくそ熱い日になんでってきっと聞いてくるから、そうしたらちゃんと話をして少しほっと昔を懐かしんでもらえるようにしてあげよう。そして、今度の定休日はちょっと実家に顔を出してみることにしよう。

  • [18] mixiユーザー

    2017年08月14日 13:01

    お返事いただきありがとうございます。
    なるほどわかりました。
    私事ではありますが仕事の都合で定期参加が難しいので諦めようと思います。
    大変お騒がせいたしました。
  • [19] mixiユーザー

    2017年08月14日 15:16

    >>[18]
    いいえ^^)
    興味を示してくださり、ありがとうございました。
    それでは、またの機会に!
  • [21] mixiユーザー

    2017年08月16日 12:54

    ひとまず書けた。
    書けたのは良かったけれど、私がやりたかったこと、本当に言いたかったこと、が、今ひとつ書けなかった気がして、少し悔しい。
    今回は、私自身のためにも、どうしても書きたいのに、、。
    もう少し考えてみるか、な。
  • [22] mixiユーザー

    2017年08月16日 16:54

     ギリギリまで攻めてみてください。
  • [23] mixiユーザー

    2017年08月16日 17:11

    鹿鳴館執事さん
    うーん、、
    そうですね、そうします。
    変わらないかもですが、もう少し考えて、もがいてみます。
    ギリギリまで、攻めてみます。
  • [24] mixiユーザー

    2017年08月16日 23:30

    参加します(^^)
  • [25] mixiユーザー

    2017年08月19日 01:27

    その1

     寝不足の身体を引きずるようにして家を出た。ふと、空を見上げると一面の青空で気持ちの良い朝だった。しかし、そんな風景を見ても私の心が晴れることはなく、煌々と照らす太陽が目にしみた。
    「おはよー。ねえ、ラジオ体操が終わったら一緒に遊ぼうよ」
    「うん、またお姫様ごっこしようよ!」
     後ろを振り返ると、二人の女の子が楽しげに話ながら歩いていた。そして、のろのろと歩く私を追い越していってしまった。
     その様子が楽しげで輝かしくて、もう二度と自分にその時は来ないのだと思うと、さらに私の足を重くさせ、目線はだんだんと下がっていったのだった。
     すると、足下に何かが落ちていることに気が付いた。思わず拾い上げてみると、それは玩具のネックレスであった。鍵を模したネックレスで、持ち手の部分にプラスチックでできたピンク色のハートが付いている。
     もしかしたら、あの女の子たちが落としたのかも、と私は前を向いたが既にその女の子たちはいなくなっていた。
     そのまま放っておいて、誰かに踏まれでもしたらこんな玩具のネックレスなんてすぐに壊れてしまうだろう。そう思った私は、近くにあった電柱の足場のボルトにそれを引っ掛けた。
     会社に着き、仕事を始めたが寝不足の身体は容赦なく私を眠りの世界へ引き込もうとする。その誘惑に耐えながら私はどうにか昼休みを迎えることができた。
     昼食もそこそこに私は休憩室の机にタオルを敷いて、そこに突っ伏していた。時折、スマホの電源ボタンを押すが、そこには何の連絡も入っていなかった。
     まだ期待しているなんて、私はなんてバカなんだろう。そう思っても、私は五分ごとにスマホを確認せずにはいられなかった。
     昨日の会社帰りだった。急ぎの仕事をどうにか終わらせて疲れていた私は会社近くの繁華街の中にある喫茶店でコーヒーを飲んでいた。
     すると、窓の外に見知った顔を見つけたのだ。それは私と付き合っていた恋人だった。彼の隣には可愛らしい女の子がいて、彼と手を繋いでいた。二人はどこへ行こうか悩んでいる様子で、窓の付近で立ち止まっていた。そのお陰で私は隣にいる女の子をじっくりと観察することができたのだ。小柄な子で、白っぽいワンピースを着ていた。肩まであるショコラブラウンの髪を毛先だけ綺麗に巻いていて、まるでお人形のような子だった。実際の年齢は分からないが、少なくとも私より随分若く見えた。
     しばらく眺めていると、二人は身体を寄せ合いながら繁華街の中へと消えていった。
     窓に私の顔が映っていた。そこには仕事に疲れきった地味な女がいるだけだった。その目を見つめると、そこには暗い色しか見えなかった。彼の隣にいた女の子の目はきらきらしていたというのに。

     私はメールに別れましょう、と一言だけを打って、彼に送った。そして、そのまま家に帰ったのだった。
     メールを送ってから、半日以上経った今も彼から返信はなかった。もしかしたら、厄介払いができて良かった、と思っているのかもしれない。
     憂鬱な気持ちを抱えたまま、私は最低限の仕事を終わらせ、家への道を歩いていた。通り道にある電柱を見ると、今朝、引っ掛けたネックレスはそのまま下がっていた。
     このまま放っておいても、誰にも拾われないかもしれない。そう思った私はネックレスを手に取り、さっさと自宅へ帰ったのだった。
     テーブルの上に鞄とネックレスを置いて、部屋着に着替えた。鞄からスマホを出して、確認をしても、やはり彼からの連絡はなかった。
     スマホをベッドに放り投げて、私はテーブルの前に座った。玩具のネックレスが殺風景な部屋の中で奇妙に目立っていた。
     こんなネックレスで遊んだ時代が私にもあったのだろうか。
     テーブルに肘を乗せながら、私は自分の子供の頃のことを思い出していた。女の子なら、こんな玩具のネックレスで喜んだ時代が誰にだってあったはずだ。しかし、いくら記憶を辿っても私にその覚えはないのだった。
     私は昔から可愛くのない女の子だった。身体は骨が太くてがっしりとした体型であったし、身長だって、女の子の誰よりも高かった。
     親もそれには気が付いていたのであろう。私は親から可愛いなどと言われたことがなかった。唯一褒められるのはテストで良い点を取った時だけだった。
     可愛い可愛いと言われる、華奢で小さな女の子達が羨ましかった。でも、それは無い物ねだりなのだ。それを知っていたから、私は自ら可愛いものから離れていった。
     レースの付いたワンピースも着せ替え人形も欲しいとは言わなかった。可愛くない女の子が可愛いものを欲しがるのは、私には滑稽に思えて仕方なかったのだ。そうしていくうちに私は女の子らしいものから本当に離れていき、それにしたがって周りも私をそういう女の子なのだ、と思うようになったのだった。
  • [26] mixiユーザー

    2017年08月19日 01:30

    その2

     それに何の疑問も持たなかったはずなのだ、あの日までは。
     夏の暑い日だった。小学校の帰り道、林の中を抜けるように作られた道を私は歩いていた。夏でも薄暗いその道はどこか不気味であった。
     そんな道に男が立っていたものだから、私はそちらを見ないように足早に通り過ぎようとしたのだ。
    「ねえ、君」
     その声に私は立ち止まり、ゆっくりと男の方を振り向いた。もし、変な人なら走って逃げようと心の中で思っていた。
     しかしその男はきちんとスーツを着ていて、どこにでもいる真面目そうな会社員にしか見えなかったのだ。
     自分の想像していた変質者のイメージとは程遠かったので、私は少し気を許していた。
    「なんでしょうか?」
     大人にはきちんとしなくてはいけないと思い、私は生真面目に答えていた。男は小学校の場所が知りたいと私に言ったのだった。その学校は私の通っている学校であったから、私は丁寧に学校への道を説明した。
     男は私にお礼を言い、小さな小箱を渡してきた。
    「ありがとう。君は可愛いから特別だよ」
     思わず小箱を受け取った私は小箱を貰ったことよりも可愛いと言われたことに驚いていた。でも、そんなことに驚いていると思われてはいけないと私は小箱の包み紙を剥がすことに熱中しているふりをした。
     可愛いね、可愛いね。そう言いながら、その男は私の肩や腕を触っていた。子供ながらにこれはいけないことだと私は分かっていた。知らない人に物を貰うことも、こうして知らない人に身体を触れさせることも。それでも私はそこから逃げることはしなかった。小箱の中身がその頃流行っていたアニメの主人公の持っていたネックレスの玩具だったからか。男のことが怖くなったからか。そのどちらでもなかった。
     快感だった。小学生に性欲があるのか分からないが、あれは快感以外に例えることが出来ないものだった。
     物を貰えたことが嬉しい、とそんな単純なものではない。ただ流行のネックレスを貰っても私は何も感じなかっただろう。
     小学生の私に明確な意識があったとは思えない、しかし自分の女の身体を使って、その対価を得る、という快感をあの時の私は確かに感じていたのだった。
     私の体を撫で回していた男はしばらくすると、じゃあね、と言って私から離れていった。私はネックレスを握りしめながら、家に帰ったのだった。
     自分の部屋でネックレスを眺めながら、私は急に怖くなってしまった。もし、このネックレスが家族見つかったら、と思ったのだった。本当のことなど言えるはずがない。
     私は誰にも見つからないように、庭へ行き小さなスコップで穴を掘り、そこへネックレスを埋めた。ネックレスが見つかる恐れなどもうないのに、私はまだ何かを恐れていたのだった。
     私はあの時に感じた快感が恐ろしかったに違いない。 
     私は再び、テーブルに目を落とした。ネックレスを手に取って、顔へと近づけた。あの時のネックレスに似ている気がする。でも、そんな昔の玩具が偶然に道に落ちているわけがないので、ただの私の勘違いかもしれない。 
     あの頃の私はどうしてあれほど恐れていたのだろう。何も恐れることなどないのに。
     私は姿見の前に立ち、着ていた服を脱いで下着だけの姿になった。そして、束ねていた髪を下し、ブラシで整える。仕事用のベージュの口紅の上から、鮮やかなピンク色の口紅を上塗りした。最後に手に持っていたネックレスを首に掛けた。
     ベッドの上にあるスマホが鳴り響いているが、もうそんなものは気にならなかった。
     子供の頃に夢見たお姫様にはもうなれないけれど、魔女くらいにはなれるかもしれない。
     姿見に映る私は妖艶に微笑んでいた。

                                              
  • [27] mixiユーザー

    2017年08月19日 01:31

    参加します。
  • [28] mixiユーザー

    2017年08月19日 23:04

    その1

     「これあげる」一人の少女が飴を一つ差し出した。
     帰省中の新幹線内でちょうど富士山を過ぎた頃だった。通路を挟んだ隣の席に、その少女の母親が柔らかな表情で娘を見つめていた。
     「ありがとう」私が受け取ると、少女はお母さんの胸に飛びついていった。
    私に飴をくれたときの少女の表情と、おどおどした様子は、まるで好きな人にラブレターを渡すときのような情景だった。
     あれはたしか、小学校4年の頃。当時の私は暗い性格でクラスの嫌われ者だった。そんな私にも、あるとき好きな人ができた。
     その年の夏は、学年全員でキャンプに行くことになっていた。男女でグループを組み、朝から夕暮れまで、炊事や学校から課せられた課題や、レクリエーションを行うものだ。彼は私と同じグループのリーダーをしていた。
     小学生のわりには、背も高く、がっしりとした体格の子だった。グループの他の男子とは比べものにならないほどたくましく見えたのだ。
     どうやって彼に気持ちを伝えればいいのか。キャンプから戻ってからは、そんなことばかりを考えていた。
     ちょうど私はキャンプの写真係をしていた。クラス全員の写真の注文を取りまとめ、皆に配布する係だった。
     「そうか。写真を渡すときに、一緒に手紙を挟んで渡せばいいんだわ」
     写真に挟める大きさの手紙って、なにがあるのだろう。自宅に帰るなり、机の引き出しをひっくり返し、小さ目のサイズメモ帳を探した。だが、どれも、ありふれたキャラクターが付いたものばかりで、ラブレターにするにはどうも納得がいかなかった。
     「どうしよう。写真にはさめるくらいの大きさで、かわいくて、素敵な紙。何かないかなぁ」
     引出を片付け、学習机の書棚を見上げた。
     「ああ、これがいいわ」
     書棚にあった読みかけの本に、はさんであった栞を手に取った。
     私は、栞に書く告白文よりも、栞を作ることに必死になった。押し花作りが得意だったわたしは、庭に咲いている花を取ってきてはよく押し花にしていた。ちょうどコスモスが咲いていた。
     担任の先生から写真の束を受け取り、一人ずつの注文内容と照らし合わせて、分配作業を行った。小学生にしたら、結構、骨の折れる作業だった。放課後にいつも一人でその作業を行っていた。間違いがあってはいけないから、と何度も何度も確認作業を行った。
     そして、彼に渡す写真の束の間に、手作りの栞をそっとはさんだ。
    「あの・・・これ、キャンプのときの写真」
    「ああ、ありがとう」
     彼が写真を受け取るときに、彼の手に触れそうになり、思わず手を引っ込めて写真をすべて落としてしまった。床に散乱した写真を2人で集めているときに、こっそりはさんだ栞を彼が拾った。
     「あれ?これは君のだよね」と、彼は小さな栞を拾い、何のためらいもなく、私に手渡した。
     私は、その栞を握りしめ、逃げるように自分の席に戻った。
    「せっかく一生懸命作ったのに。別に手作りじゃなくても、よかったじゃない。もっと目立つ綺麗な栞を買ってくればよかった」私はその栞を破り捨てた。
  • [29] mixiユーザー

    2017年08月19日 23:04

    その2

     たいして可愛くもない私は、大人になってもモテることはなかった。当然、モテない男と寝ることになる。セックスは好きだった。こんな私でも求めてくれる人がいるなら、どんなことをされてもいいと思った。
     何人もの男と手当り次第寝てきた。求められることで自分はモテていると思いたかったのだろう。だが、男のセックスはいつも同じ。ホテルに行けば、結局、咥えさせられ、入れられるだけ。
     ある夜、初めて出会った男の体臭に耐え切れず、ホテルを飛び出した。ホテル街を抜け、サラリーマンが集う居酒屋を走り去る自分が情けなくなった。これまでのことが一気に虚しくなった。
     結局、男が欲しがっていたのは私ではなく、私の体なのだ。そして、所詮、私は、それだけの価値しかない女なんだということに気づかされた。
     それから、男のことはどうでもよくなり、自分の体を傷めつけた。汚い男しか寄ってこない自分の体が嫌いだったからだ。
     痛みに耐えながら、いつもこんなことを考えていた。
    自分好みのいい男だけを選び、触らせたい。いい男の手と舌で、自慰と同じくらいの絶頂が欲しい。
     いくら自傷行為をしたところでいい女になれるわけがない。反対に、自分の体はどんどん汚くなるだけだ。
     いい女になるには、何が必要なのだろう。わたしは自分を鏡に写した。
     一重まぶたで地味な顔立ち。おっぱいも小さい。肌もあちこちシミだらけ。
     自分が綺麗になれば、いい男を選べる立場になれるに違いない。そう思った私は、美容院、エステサロン、美容整形にまで行き、お金をつぎ込み自分が納得いくまで、顏も体も改造した。そして、SMサロンの門をたたいた。
     ほら、綺麗でしょう。私に触りたいのなら、貴方のポケットから紙切れを渡しなさい。そうね、貴方の頬が叩けるくらいの束がいいわ。
     いつかそんなセリフを言える女王様になってみせる。
  • [30] mixiユーザー

    2017年08月22日 00:36

    奇妙な造りであった。
    コの字型に建つラブホテルは、各部屋の出窓が、中庭を挟み対面で向かい合う形になっていた。
    そもそもラブホテルは閉鎖的だからこそ隠微な空間となり、窓はむしろ忘れられても良い存在であるはずだ。しかし、そのホテルは妙に窓が強調された外観であった。
    部屋に入り、胸の下くらいまでの高さで横広がりの大きな窓を、まずは全開してみた。うっすらと宵闇が落ちた空間には、茫々と生えている雑草と、枯れ果て錆びついた噴水らしき白いオブジェが見えていた。
    荒れた中庭を突っ切った先のあちら側の壁には、こちら側と同じ配列で、横に5個、縦に3階分の出窓が並んでいた。まるで彼岸と此岸に並ぶ窓窓の中では、今まさにいろいろな秘密の行為がなされているのかと想像すると、知らない物語のペイジをめくるように、一つ一つの窓を開けて覗いてみたい衝動に襲われた。

    「とりあえずシャワー浴びない?先にいってるから、後からおいで。」
    二か月前に知り合った彼は、そう言うとさっさと一人で風呂場に行った。フリーのPAエンジニアをしているという彼と会うのは、これが3度目だった。彼も私もそれぞれ家庭を持っていたが、あるライブ会場で出会った際、彼から声をかけられ、こうして二人きりで会うまでになった。都内で行なわれるライブや舞台の仕事が終わると、彼は私を職場前の道で拾ってくれて、そのまま都心から少し離れたホテルに入るというのが前回からのデートコースになっている。
    部屋に残された私は、動く気になれず彼岸の窓を見ていると、一階のいちばん左端の窓が、ふと大きく開けられた。反射的に窓の陰に隠れるように私は身を潜めた。
    私がいる部屋は一階の真ん中だったので、左斜向かいの開いた窓を右側の窓枠から隠れて見る形になっていた。
    開けられた窓の中には、ベッドの上に座るバスローブを着込んだ中年の男女の姿があった。行為が済み風呂上がりなのか、窓を開けて初秋の気持ち良い風を入れ涼んでいるように見えた。男の方が寛ぐ女にしきりに絡みつき、女は迷惑そうにそれを交わしているようであった。こちらの姿に気付かれぬよう、私は急いでベッドの上にあるライトのスイッチを全てオフにして部屋を真っ暗にし、窓というスクリーンに映された男女の姿を、暗闇からひっそりと見続けた。聞こえてくるのは、シャワーの音と、私の鼓動の音だけだった。
    全神経を視覚に集中したその瞬間、なぜか私は高校生の頃の記憶を鮮明に思い出した。

    高校2年生のことだった。
    私が通っていた高校は、地方都市の繁華街に建つ女子校だった。学校を出て最寄り駅までの道を進むと、駅の手前に柄の悪い飲み屋やラブホテルが林立していた。
    その日も部活動を終えた私は、友人らと一緒に学校を出て駅へ向かった。
    つるべ落としがストンと落ちる直前の夕暮れに、立ち並ぶラブホテルの一つから、私は自分の母親が見知らぬ男と出てくる姿を見たのだ。
    同時に見慣れた車がどこからか現れ、そのホテルの入口に横付けされた。すると驚くことに車の中から父親が出てくるのが見えた。父が何かを怒鳴りながら母の腕を掴み、乱暴に車に引きずり込んだ。そして、娘が見ていることに二人ともまったく気付かないまま、車は急発進し去っていった。
    私の頭の中は真っ白になり、何が起こったのかわからず、しかしただ事ではないという危機感を持ちながら、不自然に思われないよう友人らと別れ、一人急いで駅へ向かい電車で家に帰った。

    家に戻ってわかったことは、母親がパート先のレストランのシェフと今日ホテルに行ったこと。母の「今夜は帰りが遅くなる」という珍しい申告を不審に思った勘の鋭い父が、朝から母を尾行して現場を押さえたということだった。
    病的に嫉妬深い父は、それから一週間ほど仕事を休んで寝室に引きこもり、週刊誌を睨みつけては一枚一枚ペイジを破って捨てる、意味のない作業に時を費やした。
    パートを辞めさせられた母は、毎日父に詰られ憔悴しながらも、どこか開き直っている様子が感じられた。
    高校生の私は、母の「女」の部分を突きつけられ嫌悪感を抱いたが、もし、母がその浮気相手に純粋に「恋」をしていたと言うなら、許しても良いという少女趣味的な思いが芽生えていた。

    だから、一言だけ聞いてみたのだ。
    「お母さんは、その人のことが好きだったの?」
    すると、母は答えた。
    「別に、何とも思ってない。しつこく誘われたから行っただけ。」
    それは、高校生の私にはまったく理解できない、許せない答えだった。

    覗き見た彼岸の窓に映る男女を見て、私はそのときの母のことを思い出したのだ。
    40歳の頃の母だった。そして今、私は当時の母と同じような年齢になり、母が言った答えをやっと理解できるようになっていた。
    なぜなら、いまシャワーを浴びている彼のことは、別に、何とも思っていないのだから。
  • [31] mixiユーザー

    2017年08月23日 23:33

    もううう悔しい!!
    どうしても書けない(;_;)
    書けないと思って
    初めからまた書き直しても
    結局なんか違う(´Д` )
    やっぱり難しいなあ小説。
  • [32] mixiユーザー

    2017年08月24日 02:21

    ます(1回目)

    もう何度目だろう。彼を許して一緒にいるのは。私の心を映すようにポツポツと雨は降り、そして、その中を傘もささずにトボトボ歩き続けた私は、力なく立ちつくしていた。
    既に全身は、この雨にひとしきり濡れていたが、もう、歩く気力もなかったので、一軒家の続く住宅街通りの先にある、古びた団地の中で、雨宿りをすることにした。
    団地の中に入ると、そのまま中二階の踊り場まで階段を登っていき、倒れこむように腰掛けた。夏なのに、コンクリートでできた階段は、とてもヒンヤリとしていて、気づけば、雨に濡れた服も、すごく冷たい。
    そんなことを思いながら周りを見渡すと、右足の先、踊り場の角に、少しくすんだ赤色の、四角い箱のような物があるのを見つけた。

    拾い上げてみると、左側半分に時計と、右側半分に黒い押しボタンが二つあり、箱だと思ったそれは、目覚まし時計だということがわかった。
    随分使いこんだのだろう。それは、とても傷ついていて、古びていた。しかし、時計を今の時刻に合わせ、アラームをセットすると、綺麗にはっきりとメロディーが流れたので、まだ、壊れてはいなかった。
    この、目覚まし時計との突然の出会いに、私はとても懐かしさを覚えた。なぜなら、この目覚まし時計は、私のばあちゃんがずっと使っていたそれと、おそらく、全く同じものだったからだ。
    流れたメロディーは、シューベルト作曲の「ます」という、ばあちゃんの一番好きだった曲。これは、私のお母さんが3歳になる頃に、ばあちゃんが、じいちゃんと離婚して、一人で二人の子育てをしよう、と、決意させてくれた曲だったらしい。

    私が、20歳も年上の彼と付き合い始めたのは、ちょうど一年前、その、ばあちゃんが他界した直後のことだった。
    ばあちゃんっ子だった私がとても傷心しているのを、ずっと一緒にいて支えてくれた彼。私が彼を愛し、依存するのは、あっという間のことだった。
    しかし、この一年間の付き合いの中で、支えてくれたと思えたのは一瞬で、三ヶ月後には、私は彼にとってただの遊び、体目当てでしかなく、本当は私のことなど少しも愛していないのではないか、と、不安になり、尽くす時間のほうが、圧倒的に長くなっていた。
    今日もまた、一週間も音信不通になっていた彼のマンションへ行き、玄関の前に立つと、部屋の中から、彼の言う、最近仲良くなった女友達、と、彼の、厭らしい声が聞こえてきたので、立てた傘も忘れて、その場を後にしてしまっていた。

    時間も忘れて、何度も何度も、アラームをセットしては曲を聴いていると、ばあちゃんが決意した時も、今の私と同じ境遇だったのではないか、と、思えてきた。
    じいちゃんが実は、酷い女好きのダメ人間で、そんなじいちゃんを愛したばあちゃんは、この曲を聴いて、引っかかっていてはいけない、と、思ったのではないか。
    鱒は、透き通った水の流れる川で、優雅に泳ぐのがいい。それを掻き乱して濁らせて、目の前が見えないうちに釣り上げようとする漁師なんかに、引っかかってはいけないんだよ、と、曲を聴きながら言っていた、ばあちゃんの力強い声が蘇る。
    気づけばいつの間にか、もう、雨は止んでいて、踊り場の隙間からは、強い日が差し込んでいる。腰掛けていたコンクリートの階段や、雨に濡れた服も、すっかり温かくなっていた。私はゆっくりと立ち上がり、団地を後にした。
  • [33] mixiユーザー

    2017年08月24日 02:22

    ます(2回目)

    もう何度目だろう。こうして彼を許して一緒にいるのは。冷房を入れていないのか、部屋の窓は開いていて、そこから男と女の厭らしい声が聞こえる。私はその様子を、窓の外からそっと覗くようにして、考えていた。
    ポツポツと、まるで私の心を映すように、雨は降っていた。そしてそれはやがて、酷い大雨になった。窓を閉められたので、中を覗くこともできなくなり、私は傘も気力もないまま歩き、流れ着いた近くの団地の中で、雨宿りをすることにした。
    団地の中に入ると、そのまま中二階の踊り場まで上がり、倒れこむように腰掛けた。夏なのに、コンクリートでできた階段は、とてもヒンヤリとしていて、気づけば、雨にひとしきり濡れた服も、すごく冷たい。
    そんなことを思いながら、踊り場の外で降り続く雨を眺めていると、突然、綺麗な音色が響き渡った。音の鳴る方向を見ると、右足の先、踊り場の角に、少しくすんだ赤色の、四角い箱のようなものがあるのを見つけた。

    拾いあげるとそれは、左側に時計があり、右側に黒いスイッチが二つ付いていて、ばあちゃんがずっと使っていた目覚まし時計に、とてもそっくりだった。流れた音楽が、シューベルトの「ます」という曲であることも、全く同じだった。
    私は決してクラシックに詳しくはなかったが、この曲だけは、ばあちゃんがよく、これはばあちゃんを元気づけてくれる大好きな曲だよとか言って、アラームをセットしては私に聴かせてくれていたので、覚えていたのだ。とても懐かしさを覚えた。
    母が3歳になる頃、ばあちゃんはじいちゃんと離婚して、一人で二人の子どもを育てる覚悟を決めた。今となっては離婚も当たり前だが、その時代の離婚はとても大ごとだったらしい。それでも、ばあちゃんはいつも笑顔で子育てをしていたんだと、母から聞いたことがある。
    目覚まし時計は、とても傷ついていて古びていたが、音色はしっかりしているし、まだ壊れてはいなかった。時刻を合わせて、もう一度アラームをセットし、この懐かしい音楽に私は耳をすませていた。

    私が20歳も年上の彼と付き合い始めたのは、ちょうど一年前、その、ばあちゃんが他界した直後だった。幼い頃からばあちゃんっ子だった私が、ばあちゃんを失った悲しさに打ちひしがれているのを、彼は、優しく声かけ抱きしめてくれた。
    私はあっという間に心を奪われ、依存するほどに彼を愛してしまったが、それが間違いだった。3ヶ月もしないうちに、偶然、私とは別にもう一人、彼女がいることを知った。しかし、別れを告げられるのが恐くて、彼には何も言えないまま、時間だけが過ぎていた。
    私が会う予定の時間は、いつも、お昼十二時。そして、予定より二時間早く彼の家に着くと、いつも、部屋の中から男と女の厭らしい声が聞こえてきていた。もちろん、今日もそうだった。会えば私を愛してくれるのも、いつも、変わらない。だから、もう何度も、この状況を許してしまっていた。
    ぽっかりと空いた私の心とは裏腹に、聴こえてくるメロディは、とても優雅で、のびのびとしていた。まるで私を元気づけてくれるように。

    時間も忘れて、何度も何度も、アラームをセットしては曲を聴いていると、なんとなく、ばあちゃんが決意した時も今の私と同じ境遇だったのではないか、と、思えてきた。
    じいちゃんが実は、酷い女好きのダメ人間だったりして、そんなじいちゃんを愛したばあちゃんが、二人の子どもを抱えた時、この曲に出会い、いつまでも引っかかっていてはダメだ、と、思ったのではないか。
    鱒は、透き通った水の流れる川で優雅に泳ぐのがいい。それを掻き乱して濁らせて、目の前が見えないうちに釣り上げようとする漁師なんかに、引っかかってはいけない、と、いつか曲を聴きながら言っていた、ばあちゃんの声がふと蘇った。
    気づけばいつの間にか、もう、雨は止んでいて、踊り場の隙間からは、強い日が差し込んでいた。
    腰掛けていたコンクリートの階段や、雨に濡れた服は、すっかり温かくなった。今日こそ彼に話しをしよう、と、私はゆっくり立ち上がり、彼のアパートへと向かった。
  • [34] mixiユーザー

    2017年08月24日 02:25

    ギリギリなので
    もう諦めることにします。
    技量が足らないのか、
    なーんか書きたいこととは
    違うような気がするけど、
    これ以上書けなさそうです。
    これから、かな。
  • [35] mixiユーザー

    2017年08月24日 02:32

    しかもこうして読み返すと
    一回目の方が
    良かった気がする…(´Д` )泣
  • [36] mixiユーザー

    2017年08月25日 00:12

     空から飛行機が降ってきた。

     頭にコツンと当たるまで気が付かなかったけれど、足元に落ちたそれを拾い上げて周囲を見渡しても、どこから飛ばされたのか分からない。紙で出来た軽い飛行機。ケント紙を丁寧に切り抜いて、正確に張り合わせた組み立て式紙飛行機だ。条件によっては滞空時間が5分以上になるものもあると聞く。
     上昇して滑空、旋回をさせるのがコツなのだ。多分、時間をかけてコツコツ作ったのだろうに、持ち主はどこにいるのだろう。私は、迷ってから、それを一番近くのベンチの上に置いた。そして、その横になんとなく怠惰に座りこんでしまった。
     買い物をして、家に帰らなくては、洗濯物を取り込んだり、掃除機をかけたり、することはたくさんあるのだから。
     でも、すべての用事がすんで、もう、他に言い訳のしようがなくなったら、母に電話をして愚痴をきいてやらなくてはならない。そう思うと思わずため息が出た。

     母からの電話は昨日夜遅くかかってきた。いつもの昔の夢を見たという電話だった。母は9人兄弟姉妹の真ん中で、生家の旅館で家の手伝いをしていた。そして、酔ったお客に身体を触られたり、無理やり口を吸われたりしたらしい。母親が自分を守ってくれなかった。そんな気持ちを思い出す時、母は、その気持を周囲の人にあたり構わずぶつけるのだ。
     「義母が愛してくれなかった」は、頭がよくて常に一番でなくては気が済まなかったのに大病をして挫折した父の口癖でもあった。父は、義母が自分の貯金を取り崩して、父を大学に行かせなかったことを恨んでいたのだ。父と母は、子どもの頭の上で大喧嘩をしては、優位な方が寝込む事をくりかえしていた。
     そんな家庭状況だったから、私と兄は普段は近くに住んでいた父方の祖父母に面倒を見てもらい、ほんとうにどうしょうもなくなったら田舎の母方の祖父母の所に預けられていた。だから、私の子供の頃の優しい記憶は、すべて、祖父母から貰ったものだった。
     時がたち、両家の祖父母もみんな死んでしまい、父でさえ早くに亡くなってくれて、今は母だけが残っている。
     その母は、仕事に忙しい兄夫婦と一緒に暮らしている。兄は、妹の私が母親を苦手としているのを知っているので、母がなにかしらトラブルを起こしても、私にわざわざ詳細を知らせてきたりしない。
    「おふくろがちょっと具合が悪いので」
    「おふくろが人と会いたくないというので」
    「今度の両家の子どもを交えての食事会は延期しょう」
    と、言うだけだ。
     そのせいもあって、車で一時間と、直ぐ近くに住んでいるのに、兄に会うのは年に一回か二回だけだ。

     私は、さっき頭にあたった紙飛行機をつくづく眺めた。
     兄も、高校生の時にこれを作るのを趣味にしていた。両親の不和から離れて、受験勉強に集中するために作られた離れの、部屋の天井から糸を下げて飛行機を吊っていた。
     ある晴れた日に、兄とふたり、我が家の裏山でその飛行機を飛ばしたことがあった。そこには、第二次世界大戦の時に急ごしらえの砲台だった跡に作られた公園で、見晴らしもよく、山も海もきらきらと輝いて遠くまで見えた。
     飛行機はくるりくるりと旋回しながら山を降りていった。白い点になり、雑木林の中に消えた。
    「飛行機どこにいったのか分からなくなっちゃったね」
     いいんだよ。と、兄は言って、ほのかに笑った。それから、二人してしばらく港を船が行き交う情景を眺めていた。

    「こんなに苦しい思いをしているのに、それを言っちゃいけないの?がまんしないといけないの?」
     母は、そう言い募り、昨日は、電話を切るまでに二時間かかった。その気持を兄夫婦にぶつけたら虐待された、兄に怒鳴られた、義姉にぶたれた。と、主張した。多分兄は、母がそんなふうに現実を悪いように膨らませた電話を私にしていることは知らないだろう。
     もう死んでしまった親が、過去に何をしようと、もう誰にもどうしようもなく、忘れてしまう以外に、どうしようもないことなのに。なぜそれを遠くへ押しやることが出来ないのだろう。
     いや、そうじゃないのだ。多分、母は、今、家族が自分にかまってくれない。優しくしてくれない。愛してくれない。と、いう気持ちを違う形で表現しているのだろう。
     でも。だって。しかたないじゃないか。どうすれば愛せるのか、あなたは教えてくれなかったのだから。 
     立ち上がって私は飛行機を空に向かって飛ばした。飛行機は一回だけ、旋回してポトンと向かい側の立木の根本に落ちた。私は、兄のように飛行機を飛ばすのはうまくない。
     さあ、帰って、家事をしよう。自分から母に、電話するのはやめよう。それよりも、近いうちに、兄と何処かへ出かけよう。ドライブでも、お酒を飲むのでもかまわない。そう、もしもできたら、海が見える場所に二人で行くことにしよう。
  • [38] mixiユーザー

    2017年08月25日 12:12

    急遽、用事が入り、本日欠席致します。残念。
    補講お願いいたします。
    早ければ明日行けるかも。
  • [39] mixiユーザー

    2017年08月25日 14:34

    >>[38]
    あらま、残念です(°_°)(°_°)
    また次回を楽しみに。
  • [40] mixiユーザー

    2017年08月25日 20:14

    打ち合わせ終わって急いで向かってます。
  • [41] mixiユーザー

    2017年08月25日 20:17

    >>[40]
    はやくはやくーです♪( ´▽`)
    お待ちしておりますっ!
mixiユーザー
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