mixiユーザー(id:2230131)

2012年04月17日21:55

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My Aim is True/Elvis Costello

 僕にとってエルヴィス・コステロのイメージは、ジョン・レノンやボブ・ディランに匹敵する皮肉屋ロッカーで、そのくせやたらと良い声でバラッドを歌いこなす英国を代表するシンガーで、さらにはアメリカン・ルーツをこよなく愛する職人気質の音楽家だったりする。とにかくコステロというのは、ベスト・アルバムを聴くだけじゃ全貌の掴めない捉えどころのない存在であった。

 もともとパブ・ロックという音楽ジャンルに対して良い印象を持てずにいた僕は、名盤と誉れ高いソロ・デビュー作『マイ・エイム・イズ・トゥルー』も避けて通ってきたところがあったんだけど、今回手に取ってみて、昔とは異なる発見を得ることができた。

 まず、言うほどパブ・ロックしてないというか(そもそも誤解してたんだけど)、荒削りにザクザクと刻まれるシャープなギター・サウンドにコステロの怒れるパンク魂を見る。おもしろいのは、これだけシンプルなバンド・サウンドを中心に添えた作品なのに、どこかシンガー・ソングライター的な手触りというか(実際そうだけど)、コステロの存在感だけグッと前に浮き出ているような印象があるのだ。

 それはひとえに、あの唯一無二のボーカルあってのこと。このころの歌唱はまだ若さで押し切っているようなところがあるけど、それもまた新鮮な魅力に感じられる。
 曲作りについても同じで、制作期間の短さもあってか、おそらく手癖だけで書かれたコステロの曲はその後に比べて全然練られていない。だが、その類稀なるソングライティングの才の片鱗は随所に感じられる。たとえば“ノー・ダンシング”のコード進行に縛られないスリリングなメロディ展開だったり、“レッド・シューズ”の爽やかなギターのバッキングだったり。とりわけ“アリソン”でのムーディーな演奏にはいかにも不釣り合いな、ぶっきらぼうに吐き捨てられるニヒルな歌唱がとにかく最高。

 この曲の存在感が、アルバムの格をひとつ上に押し上げていると言ってもいい。ミスター・チルドレンのキャリアで言えば、“抱きしめたい”に相当する初期を代表する名バラッドというか。
 …って、なんでいきなりミスチルに例えたのかというと、桜井の声とコステロの声がちょっと似ているのと(本人パロディ済み)、どこまでいっても「歌モノ」の印象から脱しないミスチルの音楽性を本作の印象になぞらえることも可能なんじゃないかって。

 でもマジで、「昔の桜井さんの声が好きだったわ〜」っていう婦女子(別に婦女子に限らんけど)も必聴の一枚。パブ・ロックは予習程度で。
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