■Alice Miller
1923年ポーランド生れ。1946年スイスに移住。哲学の学位取得後、精神分析家の養成を受け資格を取得。約20年間精神分析の療法と分析家の養成に携わる。1979〜81年にかけて『才能ある子のドラマ』『魂の殺人』『禁じられた知』の三部作を刊行、世界的ベストセラーとなる。1988年精神分析と決別し、以後は著述活動に専念。近年はカナダのグループと協力して子ども虐待防止を訴えている。
■ミラー氏のホムペはココ↓
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■管理人からの挨拶
AC(アダルトチルドレン)などが話題になり、児童虐待を受けた人が自らも児童虐待をするようになるというACの連鎖が問題視されるようになってきてはいます。
また、近年、モラルハラスメント(言葉や態度による知的・精神的暴力)という言葉が人口に膾炙し始め、この目に見えない暴力が、身体的・物理的・性的暴力よりも遥かに恐ろしい力で人の人格を破壊し、時に自殺にまで人をおいつめる戦慄すべきその残酷性に光が当てられ始めています。
[モラルハラスメント・言葉の暴力]
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しかし、アリス・ミラーの放つ問いの光の照度はもっと強く、もっと深くにまで達しています。
日頃、私達が「教育」とか「躾」とか呼んで、それを「暴力」とは思っていないものの中に、最も恐ろしい「暴力」が潜んでしまっているということをミラーの言葉はラジカルに照らし出してくれるのです。
AC論やモラルハラスメント論は、実は問題の表層をかすめて言い当てているに過ぎません。その中には、虐待や暴力を受けている弱者への感傷的同情はあっても、ミラー程に強烈で感動的な、人間の人格の尊厳を要求する偉大な思想が欠けているのです。
ミラーが私達に見据えることを強いるのは、モラルハラスメントよりも一層みえにくく一層みにくい暴力と残酷の世界、諸悪の根源である、私達の住むこの現実の社会の真相の姿です。すなわちモラルハラスメントにすら見えないもののなかにもっとおぞましい暴力=権力があり、それがそれを「悪」と見る私達の視力をすら奪ってしまうのだという残酷な事実です。
人間の人格を破壊することを「善」としモラルとする社会のなかに私たちは半ば欺かれて生きている。この欺瞞の光からこそ闇が不断に生み出され、子供の非行や青少年の犯罪、恐ろしい猟奇殺人、自傷行為や薬物依存、メンヘラーやニートたちの適応障害(適応なんかすべきじゃないですからね)、自殺の蔓延、更には、ファシズムのような恐怖政治や、戦争といった悲劇を生み出す温床になっている。
この欺瞞の光を打ち砕く真実の光が欲しくはありませんか? それはとても苦い認識を私達に強い、そしてこれまで以上に一層苦しい、狂気の権力との戦いを私たちに強います。しかし、私達は、この厳しい真実の光の中においてしか、真実の人間を見出すことはできず、また、真実の救済も革命も起きることは無いのです。
ミラーについて、また人間を巡って、深く語りえあれば幸いです。