マドリード出身のホセ・マリア・シシリア(1954〜)は、1980年代前半に画家としての活動を開始しました。荒々しい筆致と大胆な構図で身近な題材を大画面に描いた初期の作品は、当時の国際的な新表現主義の流れに位置づけられますが、1990年頃から、蜜蝋の層に日常的な事物のイメージを閉じ込めた作品を制作するようになります。90年代の半ばには、蜜蝋の支持体に、油彩で花を描いた連作に着手しました。この花シリーズで国際的な人気を獲得した彼は、スペインの画壇において、スペイン美術の枠を超えた若い世代を代表する存在としての評価をゆるぎないものとし、1997年にはマドリードの国立ソフィア王妃芸術センターで個展が開催されました。