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感動シャンプー

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詳細 2016年3月16日 03:10更新

こんにちは手(パー)

感動シャンプーに
感動、
感激、
心動かされた人、

書籍化を本当に待ち望んでる人、
そしてそれを実現しようとしてる人、

美容師以外の方も大歓迎ですぴかぴか(新しい)ぴかぴか(新しい)

みんなで『感動シャンプー』を盛り上げましょうexclamationexclamation

『感動シャンプー』を知らない方の為に
ボクの恩師の書いた
グランプリ作品は矢印(下)矢印(下)矢印(下)

『おばちゃんのおまじない』
 それまで知らなかった。自分の仕事で人の命を永らえる事が出来るなんて・・・。

 今から10年前。私の父は生きて退院する人の方が少ない病棟にいた。病名は“ガン”。そのフロアには他の病棟ではもう見られない程の末期の患者さんがたくさんいた。男性、女性とも同じフロアで、ただ先生の言葉にしたがい希望の無い明日におびえて生きていた。

 今まで病気一つした事のない父は、その中で異質な程明るかった。自然と言葉を交わす人達が増え、見舞いに行く私にも気さくに話かけてくれた。ある日父が言った。「頭がかゆい」。

 そのフロアの中央にナースセンターと並んでサロンにある様なサイドシャン用のシャンプー台があった。そのフロアの“住人”達は皆、首から上の大手術をした患者ばかり。私の父も、線路の様な長く大きい生々しい傷があった。

“他に出来る事ないからなぁ・・・”。先生にたずねてみることにした。予想に反して「OK」がでた・・・、出てしまった・・・。

 実を言うと傷にシャンプーをつけるのが・・・傷を触るのが・・・ちょっと恐ろしかった。腹をくくった。いつも通りに仕事をしてると思えばいい。ただ痛いといけないから水圧も洗い方もちょっと弱めに。指が傷に触れた。ちょっと動揺した。

「心配するなー。気持ちいいぞー」父が言った。

 アシスタントの時ですらかかなかった何ともいえない汗を、Tシャツがビショビショになる程かいていた。ふと気づくと、娘にいつもお菓子をくれるおばさんが立っていた。

「やだー。あんた美容師さんだったのー!!」
 こんな所にいなきゃ病人だとは絶対に思えない、そのおばさんが、大―きな声で笑って言った。

 次の週。見舞いに行くとシャンプーの予約が6件も入っていた。女の人ばかりだった。彼女達は手術のために頭を半分、丸ボウズにされているという何とも言えないスタイルだったが、やはり女性。「きれいにしていたい」と言った。

 シャンプーをしている間、彼女達は実によくしゃべった。色々な事を話してくれた。あっけらかんと笑いながら、自分の残された時間までも。週が重なるごとに週1回では間に合わない位シャンプーとカットの予約が入り、私は売れっ子の様だった。

 それから1ヶ月。


 大―きな声のそのおばちゃんは死んだ。


 前日仕事場に父から電話があり「おばちゃんがどうしても頭やってくれってきかない」といわれ、仕方なく道具をもって病院に行った。
 確かに図々しいおばちゃんだが、無理難題を言う人じゃなかった。不思議に思いながらカットをして、いつも通りシャンプーをした。傷にはもう慣れていた。だから手が雑だったんだろう。おばちゃんは私に何度も洗い直しをさせた。“おいおい私はもうシャンプーギャルじゃないんだからさぁ・・・”
 心の中で思ってた。すると、おばちゃんが言った。

「シャンプーしてもらってるとさぁ・・・やってくれてる人の心の中の声って聞こえちゃうんだよねー。今カンベンしてよって思ってんでしょうー。聞こえちゃったもんねー。まあさ、私にとっちゃこれが人生最後の美容院なんだから、あきらめて頑張って洗いな。ガッハッハ」

 息が詰まった。同時に正直“このやろう! やってやろうじゃん!”とも思った。余計なことはいっさい考えなかった。初めてその人のためにだけに無心でシャンプーした。

 上がったおばちゃんはこうも言った。
「私さぁ、本当ならもうとっくに寿命きれてんのよねー。先生に言われたわぁー。『岡田さんの娘さんに頭やってもらってたから、寿命伸びたんじゃないの』ってねー。最後に本当に心のこもったシャンプーしてもらったし、寿命まで伸ばしてもらって、本当に感謝してるわぁー。ガッハッハ」

 何にも言えなかった。自分がした事が良い事だなんて、わからなかった。ただおばちゃんのおかげで、今まで自分は何と雑に仕事をしてきたのだろうと、ガクゼンとした。

 洗いすぎて指先がフヨフヨになっていた。おばちゃんはその手を見て「まだまだきれいな手。そんな手、職人の手じゃないよー。もっと荒れてごわごわになって、そうしたら一人前だー。見たかったけど残念だー。でも、あんたは強い。一生懸命、生きなさいよ。人間、3分後に死んじゃうかもしれない。心残りないように、仕事も家庭も手を抜くんじゃないよ。約束だからね。破ったら化けて出るからね。ガッハッハ」


 次の日の朝、おばちゃんは口紅をつけて死んでいた。


 息子さんに「ありがとうございます。あなたのおかげで母は少しだけ欲張って生きました」と言われた。父が死にそうになっても泣かなかった私だが、病院中に響き渡る程大声で泣いた。

 今、自分の手を見てみる。今年で40才。美容師はじめて21年。まだまだキレイな手。もっと荒れてゴワゴワになって。心の声を聞かれても困らないよう、「どうぞまた、この人と会えますように」と願いながら仕事をしている自分がいる。そんな自分が好きだ。私は強い。おばちゃんがかけてくれたおまじない。もっと手が荒れてゴワゴワになったら、一人前。見てて、おばちゃん。私はもっと頑張れる。

(M&Ps:匿名希望)

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