ストリートオブファイヤー

　 オープニングと同時に鳴り響く「NO WHERE FAST」の軽快な旋律、黒のバックに浮かび上がるタイトルと序文
−STREET OF FIRE−
−ROCK & ROLL FABLE− (ロックン・ロールの寓話)
−ANOTHER TIME ANOTHER PLACE−(いつか、どこかで)
　 ロック・クイーン・エレン・エイムのライブ会場に続々と足を運ぶ観客の群れ。そして僅かにライト・アップされたステージで続く前奏に、徐々に高まりゆく期待と興奮。そしてステージ中央に躍り出たエレンの熱唱と共にドラマは始まる。
　 映画「ストリート・オブ・ファイヤー」のオープニングは何度観ても心地よい胸の高鳴りを感じさせてくれる。多数のヒット・ナンバーに乗せてテンポ良く流れるシーンの連続。そしてクールで悲しげな目と、力強さを兼ね備えたヒーローの背に漂う哀愁。青春物のミュージック・ムービーは数多くあれど、単純明解なアクションと音楽が見事に融合したこの名作を世に送り出したウォーター・ヒル監督は、娯楽映画の神髄という物を本当に良く理解している。そしてこの作品を観ると素晴らしい作品には素晴らしい音楽がいかに欠かせないかという事が良く分かる。”勧善懲悪”の西部劇のストーリーをそのまま現代に持ってきた単純なストーリーだけに、観る者は難しい事抜きに胸踊るビートと共にスっとロマンと冒険に満ちた作品世界に没頭できる。
　 そしてこの作品の主人公・トム・コーディに扮するマイケル・パレがまた文句無しにカッコイイのだ。無口で無愛想、不精ひげに何処か悲しみを宿したクールなまなざし。コールテンのパンツに薄汚れたシャツとサスペンダー、着古したベージュのコートを無造作に羽織っただけの風来坊的ファッションは、使い古しのボストンを手にフラリと街に舞い戻ってきたヒーローに良く似合う。洋楽を聞く人はこの作品をきっと単純に楽しめるに違いない。ストーリーを追うのも良いし、全編を通して流れるナンバーに身を任せ、MTV感覚を堪能するのも手だ。
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