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古在由重

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詳細 2012年9月15日 21:38更新

闘う哲学者、古在由重のコミュです。

思想、人柄、生き様、時代等について語り、学びあいましょう。




「うわっはっはっはっ」。いまも豪快な笑い声が蘇る。笑いには社会性がある。「優れた批判家はアイロニーやユーモアの達人」(戸坂潤)だと何度思ったことか。

 雑誌編集者だった私が東京・中野にある古在由重さんのお宅を最初に訪ねたのは、一九八二年二月。雑談のなかでの言葉が忘れられない。「現実を変革するのにマルクス主義より有効な理論があれば、私はそれを選びますよ」。大きな声だった。大切なのはあくまでも現実だという断固とした意志がそこにはあった。古在さんはこう書いている。

「学校の教壇で毎年の思想史を講義するときには過去のガリレイやブルーノの勇気を讃美しながら、危機にたつ今日の自由と平和のためのたたかいをわすれようとする学者たちを、わたしは信頼することができない」(『思想とはなにか』、岩波新書)。

 こう宣言するだけの生き方を貫いた生涯だった。足尾鉱毒事件で農民の立場に立ち、のちに東大総長となる古在由直。自由民権運動で活躍した「女闘士」清水紫琴。この二人の間に生まれたのが由重で、一九〇一年五月十七日、二十世紀劈頭の年である。東京帝国大学を卒業した古在さんは、一九三二年春ごろ、革命運動に関与する。翌三三年六月、治安維持法違反で逮捕。このときすでに作家の小林多喜二が逮捕され拷問死している(二月二十日)。ちまたではシャンソンの「暗い日曜日」が発禁となる一方で、ヨーヨーが大流行し、東京中が「東京音頭」に熱狂した時代だ。

 古在さんは母親の重態などで執行停止となるが、三八年に再び検挙。偽装転向して出獄すると、ゾルゲ事件で死刑判決を受けた尾崎秀実のために松本慎一とともに弁護士を探す困難な仕事を引き受けている。あの苛烈な時代にあっての果敢な行動だ。いま体感として記憶をたどれる人などわずかとなってしまった歴史的時代。私たちにとって大切なことは「思想すること」だという行動への情熱は、戦前、戦中にあっても終始一貫していた。

 私は旧ソ連から発掘された機密史料を読む機会を得たことがある。古在さんはそこにも記録されていた。旧制一高の英語講師だったピカートン。彼は古在さんを接点として共産党と接触、その後逮捕され拷問されるが黙秘。イギリス大使館の抗議で釈放されロンドンに戻る。しかし、その後もコミンテルン(共産主義インターナショナル)文書を古在さんに送り、そこからただ一人の共産党中央委員となった袴田里見と連絡を取っていた。古在さんは戦前の反体制運動の重要な部分を担っていたのだ。

「思想は冷凍保存をゆるさない」。古在さんが遺した言葉だ。ベトナム反戦運動、平和運動など、戦後の行動にも連なる核心がここにはある。いまこの瞬間の立ち居振る舞いにこそ思想は現れる。私はそう理解している。精神の基底にあったのはデモクラットとしての岩盤だ。古在さんはデモクラットとしてマルクス主義を選択した。

 哲学界の巨星でありながら、いささかも高踏的なところを感じさせないのも古在さんの魅力だった。たとえば「版の会」。四ッ谷の喫茶店で月に一回、十年間続けられた「哲学塾」は、中学生からサラリーマン、主婦などが集って古在さんを囲んだ。内外の古典をテキストにした現代の寺子屋は、学歴や就職のための「知識」とはまったく無縁の場であった。そこでは吉村昭の『長英逃亡』や『破獄』が参考テキストになったこともある。とくに四回も脱獄に成功した『破獄』の主人公には思い入れがあったのか、獄にあって不敵な眼差しをたたえている写真を入手していたようだ。「外」からではなく「内」からの脱出。それは古在さんの偽装転向の方法でもあった。

 私が出席したときにはトマス・ペインの『コモンセンス』が取り上げられた。古在さんにとっての「コモンセンス」、それは「思想の倫理」でもあった。正しい思想の条件とは、論理だけではなく、強固な倫理を伴うものだ。その理解は古在さんをして共産党からの離脱を決意させる。一九八四年七月十日、原水爆禁止世界大会準備委員会の運営委員会で、ある委員に退場を求める発言があったときだ。古在さんは立ち上がって大きな声でこう言ったという。

「わたしも同じ考えだから退場する」

 この一件をきっかけに古在さんは共産党から除籍された。知人の川上徹にも「あの人たちとのつきあいをやめましたよ」とだけ語っている。それから六年後の九〇年三月六日に亡くなるまで、いっさい黙したままの潔さ。翌日の新聞各紙は古在由重さんの訃報を顔写真入りで大きく掲載した。

 だが共産党の機関紙「赤旗」は一行も報じなかった。




有田芳生「私家版 現代の肖像」より

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2008年6月22日

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カテゴリ
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