*まずはこちらの文章をご覧下さい*
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「愛!」
「お兄ちゃん!」
愛は翼に向かって手を伸ばす。
「愛!」
翼も手を伸ばしながら引きずられて行く愛を必死に追った。あと五メートルほどで手が届くところだった。翼の目の前に二人の鬼が立ちはだかり、翼の両脇をガッチリ掴まえ、行く手を阻んできた。
「離せ! 離せ、この野郎!」
翼は乱暴な口調で激しく暴れた。それでも鬼たちは無言だった。
「おい! 離せ! どけ!」
精いっぱいの力を込めて翼はもがいた。
「お兄ちゃん!」
愛との距離が少しずつ離れていく。
「愛!」
もがきながら翼は叫んだ。
「お兄ちゃん!」
徐々に愛との距離が遠ざかっていく。
「おい! 離せって言ってんだろ!」
更に暴れる翼に鬼は腰の辺りからおもむろに銃を取り出した。それを見た途端、翼は動きを止めた。一瞬にして、洋が撃たれる光景が蘇ったのだ。
「愛!」
もう一度叫ぶ。愛は銃を突きつけられている翼の姿を目にし、これ以上騒ぐと翼まで殺されてしまうと思ったのだろう。静かに首を横に振った。十四年ぶりに再会した兄への思い。愛の目からは一言では言い表せないほどの複雑な思いが伝わってきた。
「愛……」
「お兄ちゃん……」
愛が泣きながら、お兄ちゃん、と言っている姿が、翼の瞳に揺れて見えた。
「お兄ちゃん……ありがとう……」
愛のこの言葉はしっかりと翼の胸に届いていた。
「愛……」
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これは、ある小説の主人公と妹との別れの場面です。
普通であれば感動する場面なのですが・・・・
どうでしょう、この文章を読んでいると、何故かニヤニヤしてきませんか?
理由は一つ。これがクソ小説だからです。
ここは、そんなクソ小説を「これはクソだ!」と切り捨てずに、いかに楽しく読めるかを考察し、読むのに費やした無駄な時間を取り戻す場所です。