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小説『俺の流刑地』

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コミュ内全体

詳細 2009年9月5日 11:08更新

【第一部 密室の謎篇】

ノックの音がした。

飯の時間か?この島に送られて何日経ったのだろうか?
もう時間の感覚もない。

俺はドアを開けた。
いつものようにMJ32という名のそいつがトレーを持って立っている。
俺はそのトレーをMJ32の手から払いのけ、言った
「ここは一体何なん何だ?」と。

もちろん、MJ32は答えない。
MJ32はいつものように、にっこり笑って一礼をし、去ってゆく。
肌が黒く、長身で恰幅のいい男だ。
言葉を発するのを聞いた事がない。
はっきりいって、なんでもいいから喋り相手が欲しいと思う時も、相手にしてくれない。それってどんなプレイだ?

「MJ32」という名も、奴がそう言ったのではない。
俺を島に連れてきた「本土」の連中がご丁寧にも教えてくれたのだ。「あの島にはMJ32という奴がいる」と。
それで、最初に会った日に奴に「MJ32か?」と尋ねたら、奴がうなづいたにすぎない。「ケビン・スペイシーか?」と訊いても、奴は首を縦に振ったかもしれない。

この島に俺が連れて来られた最初の頃、自力で島から脱出しようとしたのだが、部屋を出た瞬間、MJ32に捕らえられてしまった。
その時は奴を殴り倒そうとしたのだが、逆に部屋の奥に投げ飛ばされてしまった。

今回の俺は二回目の反抗をしたのだが、
たんにトレーに載った食い物を床にぶちまけてしまったにすぎないわけで、自分が滑稽だ。

この部屋は扉が縦に2つある。
俺が閉じ込められた部屋と外界までの間にもうひとつスペースがあるのだ。
ひとつは外界から、俺の部屋との間のスペースに入るための扉でこれは外側からしか空かない。
もうひとつは俺がスペースへ出るための扉。
これは俺もMJ32も開けられる。
明らかに外界へ通じるドアを開けられない俺のほうが自由度が少なく不利だ。
慇懃なMJ32だが、捕らえられている気がするのは気のせいではあるまい。
MJ32が開ける所をうまく利用して外へ出る方法はないものか?
部屋にあるのはタオルケットとベッドそれにトイレのちり紙だけだ。いや、待てよ。
先ほどぶちまけたトレーとフォークがある。

さてどうするか…。

部屋の隅に転がるフォークを拾いあげる。
今まで気にしたこともなかったが、かなりしっかりしたフォークだ。裏面には見たこともない文字が刻印してある。
こんなところに閉じ込めらるている俺にはまったく何を伝えても無意味なのだから、読める文字だろうが、優しい言葉だろうがなんの慰めにもならない。
薄暗い部屋の中では一際異質な存在にも思える。
コイツとトレーだけが自由にこの部屋を出入りしている・・・
ひよっとしたら「本土」までも・・・
そう思うとフォークの刻印が俺を馬鹿にしているようにも思えてきた。

俺がコイツだったら・・・

そうだ!フォークになればいいんだ!

フォークだ!フォークおじさんになればいいんだ!

スプーンおばさんがあれだけ頻繁にスプーン化に成功していたんだ。子供の頃から友達のいない俺は牛乳パックで一人で遊んでいた。あの創造力をもってすればフォークおじさんになる事くらい・・・

そんな事を考えながらフォークを握り締めていると、ふと扉の向こうに人の気配を感じた。
MJ32ではないな。

その時、俺が妄想したのは美女の出現だった。
それぐらいの人権的配慮があってもいいだろう。
読者サービス、と俺は呟く。
だが残念なことに、人の気配はすぐに消えた。
去ってゆく足音を確かに聞いた。
男か女かはわからないが・・・。
MJ32以外の誰かがこの島に・・・。

さて、気を取り直してそのMJ32対策だ。

次回の食事の時、うまく奴の死角に入り、タオルケットを顔に投げつけ、フォークで喉元を一突き! なんていうのはどうだろう。

だが現実はそうはうまく行かないであろうことが想像できた。
あの巨体は殺しても死なないのではないかとさえ思う。
また、以前鮮やかに投げ飛ばされたことを思い出すと、
いささかリスクが高すぎる。

もっと知的な脱出方法はないか。

たとえば、ユリ・ゲラー…
フォークの先の付け根を手でこすると
フォークの先が「ごろ」っと取れてしまう。
その結果フォークは使い物にならなくなり…
…いやいや(汗)そんなことをしている場合ではない。
落ち着くんだ。チャンスはそうそうない。
慎重に考えるんだ。

フォークで壁か地面に穴を掘って脱出、というのはどうだろう。
穴はタオルケットやベッドで隠すのがいいかもしれない。
そうだ!その方法だ!
昔映画で見たことがある!
少しずつ少しずつ掘って、囲いの向こうまでトンネルを作るのだ。
明るい展望が見えた。

…が、それも一瞬にして絶望へと変わる…
外がどうなっているのかまるっきりわからないのだ!!

しかしこのままではMJ32プレイのままだ。
このプレイは俺の好みではない。
取りあえず掘るぞ!

俺はこれから頼もしい相棒となるフォークをシーンと静まった部屋でまじまじと見た…裏の文字は何語だ?
点やらカンマやら()やら羅列してある奇怪な文字だ。
日本語のようなものも混ざっている気持ち悪い。まあMJ32も意味不明なやつなのでお似合いだが…

あれ?ちょっと待てよ…
これ改行すると顔文字じゃないか?

俺はさっそくフォークで裏の文字をコンクリートの床に
けがいてみた。

 ,.――――-、
 ヽ / ̄ ̄ ̄`ヽ、
  | |  (・)。(・)|
  | |@_,.--、_,>   
  ヽヽ___ノ 
ニンニン


たかだかフォークの裏に刻まれている割に意外に字画が多かったが、予想した通り、顔文字・・・いやアスキーアートだ。
しかし、この思わせぶりな仕込みに秘密はあるのだろうか?
たんにMJ32に(あるいはまだ見ぬもう一人の奴に?)馬鹿にされてるのではないか・・・。
だが念のため分析してみよう。

俺の日本語文字の知識からすれば、
「ニンニン」とは「忍忍」。
あるいは「似ん似ん」「煮ん煮ん」か。
また、この頭巾をかぶった、
@の頬にどんぐり眼の人物は、忍者のようだが・・・

そうか!

きっとあの忍者専用フォークに違いない!
あのハンズにもヤフオクでもショップチャンネルでもお目にかかる事はないと言われる、幻の忍者アイテム(しかも伊賀忍バージョン)忍者フォーク・・・

こんなレアなアイテムを監禁している人間の食事にうっかり使うとは、この場所はかなり忍者に関係の深い繋がりがあるはず。

「本土」から隔絶されているのも忍者養成所や忍術更新セミナーなどの極秘施設だからかもしれない・・・
とっさに天井を見上げて良く目をこらして見ると、天井のコンクリートの染みに紛れて小さな鍵状のフックが一定の幅をとって並列に並んでいる。

これこそ伝説の忍者マスターの秘技、「ケンイチ氏、おやすみでござる」のための布団固定チェーン用フックに違いない。

しばらく呆然と立ち尽くしたまま、今考えられる限りの状況に愕然としていると、突然部屋の隅で何かが動いた気がした・・・
「これが忍法、隠れ身の術よ!!」

おもむろに隅っこから人影が浮かび上がる。

こやつ忍者か? ?

ここにきてかなり経つが全く気がつかなかった。
俺はどう話していいのかわからなかった。
また、人語を耳にするのも久しぶりだったので戸惑った。
しかし聞かずにはいられないことがあった。

「…ここは一体なんなんですか?」
「フフフ…おぬし、いいところに気がついたな…ここは…

流刑島だ。お前のようなキモボウズにはお似合いの場所だ。
ところでそのフォーク。それは俺からの贈り物だよ。
その絵はこの島の地図だ。お前は今鼻のところにいる。
逃げたかったら勝手に逃げなさい。」

「では、」 

モクモクモク……

「あっ、もうひとつ。ベッド側の壁を掘っちゃいけないよ。
タイタニックも真っ青な水難に見舞われるよ。
ついでにもう一つ、俺からのプレゼントだ。ほれっ!」

「では!」

モクモクモク…ボヨヨヨヨ〜ン

ケムマキ氏はプレゼントを置いてモクモクと消えていった。
ケムマキ氏だったか?まぁいい。似たようなもんだ。
俺はプレゼントを拾い上げた。

それは1冊の日記だった。

「1905年11月3日 軍の施設建設のため我々は「島」へ到着した。現地に着くまで目隠しをされていたため、どこなのかわからない。ただ気温はかなり寒い…朝は窓が凍ってしまい開かなくなるくらいだ。」

「1908年3月20日 施設はあらかた完成した。あとは「本部」のいう細胞を手に入れるだけだが…。25名ほどいる隊員にはまだこのことは知らせてはいない。例の部屋の扉がちゃんと外からしか開かないかどうか確かめて寝る。」

「1912年12月26日 当初3年の予定だったが8度目の正月を「島」で過ごすことになった。電気もなにもない。「本部」との連絡はとっくに途絶えている。軍隊としての機能は失われつつある。軍服もみなちゃんと着てはいない。我々の中で派閥化が始まりつつある…」

「1918年 8月10日 「本部」から伝書鳩が飛んできた。人類統一の忍法、発見す!果報は寝て待て。何年待たせるつもりだろう。しかしあともう少しか…。伝書鳩に「例の黒色人種未だ確認できず(従って細胞なし)」と持たせた。これでわかるだろうか?」

???
日本軍の日記か?それにしても随分古い。
何か施設を作っていた記録だ。
日本軍は怪しいから何を作ってたか分かったものではない。

俺はさらにページをめくった…その時

ガチャガチャ!

MJ32だ!!!
俺はとっさに日記を隠し身構えた。

MJ32はトレーを持って立っていた。
もう晩飯の時間か?
晩飯はなんだろう……?

ちなみに昼飯−−あれが昼ならばということだが。ドアが開いたときわずかに日光が差し込んできたのでおそらく昼だったのだろう−−はオムライスのようだっだが、今は床の上でひっくり返った皿の下で、ぐしゃぐしゃだ。

晩飯は冷めたチキンライスだった。
俺は推理した…オムライスが余ったのかも知れない――つまり
つい作りすぎたということか――ということはまとめて作っている…
…そうか!捕虜は俺一人じゃない可能性もある。

MJ32は今回はすぐに帰らずしゃがんで丁寧にオムライスを拾い始めた。指でつまんでは床のトレーに拾い上げる。
執拗に拾い上げる。何か探しているようだった。
ふと拾うのをやめギョロっとした目でMJ32が俺の方を凝視した。
だが目は合わない。ずっと俺の右のほうを見ている。
手に持ってるフォークを凝視しているのだ!

フォークをじっと見たままMJ32は殺気だって立ちあがり、身構えながら静かに俺に近づく。

襲われる!だが密室では逃げ場所は無い。
MJ32が手をフォークの方へそっと伸ばす。
もう少しで俺に触れる…ドクンドクン…
ああーもうだめだー!!MJ32に殺される!!
と、その時俺はありったけの声で

「ニンニン!!」

と叫んだ!!

次の瞬間、にわかには信じられないことが起こった。

MJ32が何かに怯えたような目つきになり、
奇声(彼が俺に対しはじめて発した声だ)をあげて逃げていったのだ。
俺はフォークを床に落とし、心を落ち着かせてMJ32が去っていった方角を見た。

かすかな月明かりが部屋に差し込んでいた。
ドアはふたつとも開いていた。

【第二部 流刑の島篇】

考える前に俺は走り出していた。
一つ目のドアを抜け二つ目のドアの影に隠れる。
そっとドアの外を見渡す…

空だ!月が見える!
高い壁に挟まれた廊下が先まで続いている。
先のほうは徐々に広がっているようだが暗くてよく見えない。
ただ、前にMJ32の脇をすり抜けて脱出を図った時は左右に道がわかれていた。
その時は右へ曲がって行き止まりになり追いかけてきたMJ32につかまったのだ。

ん?なんだ?あれは女?

それにしても、

「…ニ…ニン…ニン……か…ウフフフ…
 ハハハ!ニンニン!か!!ハハハ!!」

これでもう一度MJ32にあっても恐れることはない。
「ニンニン」でいいのだ!あの怯えようといったら傑作だ。

(その絵はこの島の地図だ。お前は今鼻のところにいる。)

ケムマキ氏の言葉を思い出し、けがいた絵を爪で書き写した日記を見た。
「ハハア、今目と目の間のところだな。するとこの口の部分の壁は…」

(ベッド側の壁を掘っちゃいけないよ。タイタニックも真っ青な水難に見舞われるよ。)

この建物はもしかしてベッド側が貯水池になっていて
口はダムではないか? とにかく俺はとうとう脱出できる!
有頂天になっていた俺は
(流刑島だ。…)
というケムマキ氏の言葉を完全に忘れ「女」の動きを見ていた。

女は遠目にも筋肉質のがっしりした体型で、黒く長い髪が確認できる。
赤いウェットスーツのようなものを着ている。
夜空の月を見上げているのだろうか?
じっとしていて動かない。
こちらには気付いてないようだ。
MJ32、ケムマキ氏、謎の女・・・。
当然彼らは互いを知っているのだろうか?

MJ32は俺に対し慇懃だが逃げるのは許さない。
ケムマキ氏は俺にヒントをくれ、逃げたければ逃げろと言った。
ケムマキ氏はこの島に詳しいようだ。
気になるのが
(ところでそのフォーク。それは俺からの贈り物だよ。…)
と言ったケムマキ氏の言葉だ。
MJ32に持たせたということか?
いや、暗号の「ニンニン」にMJ32はあんなに怯えていた。
MJ32に内緒でフォークを仕込んだのか?
そしてMJ32に命じてフォークを取りに来させ、俺にニンニンと言わせるよう誘導した…罠か?
だとするとMJ32も俺もケムマキ氏の術にはまっている。
奴は何物だ…。

そしてあの女。
恐らく以前俺のドアのところまで来たことがあるのではないか?
そうだ。あの時俺は「フォークおじさん」になればいいとか、気が散っていたのだ。その時、足音がして…フォークで穴を…そして、裏の字を解読し…ニンニンと…

…まてよ…うまく出来過ぎてないか?
もしかして奴等は繋がっていたのではないか?
例えば「ニンニン!!」といって怯えたのは、ケムマキ氏に指示されたMJ32の演技だったのではないのか?

しかし日記は?何のために…俺に何を望んでいるのだ…

仮にこの推論が当たってる立場をとるにせよ
3人が繋がっていることは知らない振りをしておこう。
とにかく3人はばらばらに動いているように俺にみせている。
俺にばれたからといってまとまられては危険過ぎる。

それにこの推論が外れても困ることはない。

しばらく様子見で奴らの裏をかくのだ。

奴等は俺にあの女とここで今、出くわすことを期待しているのではないか?

毒を食わらば皿まで…か。だまされてやる。
俺は左右の塔から照らされるサーチライトに注意しながら
女に近づいた。

波の音に紛れて俺の足音は消されていた。
しかし、月明かりが俺の影を女に重ねた。
女は俺に気づいた。
サーチライトが女の顔を一瞬照らす。
馬鹿な・・・さっき部屋の中で俺が妄想した美女そのものだ。

俺は萌えるよりも先に驚かざるをえなかった。
だが驚きは彼女のほうが大きかったらしい。
「あなた、脱出できたの!?」
女は目を丸くしてそう言った。
「ねぇ、私はあなたを救出しに来たの。
あの部屋の入り口までは辿り着いたのだけど、
ドアの鍵はあの強そうな大男が持ってるようだから・・・
次の一手を思案していたところなのよ」
「あんたが・・・俺を救出に・・・?」

俺は女を疑った。
これも「忍術」ではないか?
試しに俺は言った。

「ニンニン」

あれ?もういっかい。

「ニンニン」


「……あなた…何やってるの?…」
「あ、いや…そうそう脱出方法…作戦会議をしよう。」
美女の手前ちょっと恥ずかしかったがまあいい、
まずはこの女から情報を引き出すのだ。
「じゃあ私についてきて…」

俺はとりあえず女を信じることにした。
訊きたいことが次々と浮かんできた。
女はMJ32を知らなかったような口ぶりだったが、
ケムマキ氏のことは知っているのか?
なぜ俺を救出しに来たのか?
どういう素性のものなのか?
そして最大の疑問。
俺はなぜ本土からこの島へ送られてきたのか?

本土。
あの日、俺はいつものように仕事をこなしていた。
俺は県の教育委員会で県史を編集している。
その日も一人書庫で膨大な写真の整理にあたっていた。
戦争の焼け跡を詳細に記録した写真だ。
長く見ていると気が滅入ってくる。
煉瓦造りの駅が崩壊した写真や噴水の前で生きたえる人達…
いい加減気分転換をしようと、窓を開けた。
パサッ…
角型2号の大きさで紐の留め具のついた封筒が落ちてきた。
封筒そのものは古くなさそうだ。
裏の隅には鉛筆の走り書きで「助けて…」と書かれている。
なんだろう?俺は早速紐を解いて中を見た。
写真が3枚。
ん?なんだこのたくさんの黒人は?日本軍か?
もう一枚には染色体のようなものが写っている。
そして、もう一枚には…
・・・なんだろう。
これは巻物というやつか?
題名のようなものを確認できるが、草書体で読めない。
俺は窓の外に視線を移した。

一羽の鳩がこちらを向いている。
じっとこちらを見ている。
じっと…こちらを…
「そのまま鳩の目をじっと見てなさい…」
いつの間にか現れた所長が後ろからゆっくりと
声をかけている。
鳩はゆらゆらとゆれている。
「そうそう…鳩の動きにあわせなさい…」
所長の声が遠くから聞こえる。
ゆらゆらと…
「そうそう…ゆったりとして…フフ…」

ゆらゆらゆったりと…
ゆったりと…
…フフ…?…

気がついたとき、俺は所長の部屋のソファーに寝ていた。

「気がついたかね?」
「えっと…確か鳩を…」
「鳩?窓際で倒れていたからここに連れてきたんだよ?」
「倒れて…ました?…」
「そうだ、バタッと書庫の方で音がするので見に行ったら
窓に寄りかかるように眠ってたのさ」

しかし、俺はあの時所長の声を聞いた気がする。
だが頭がぼーっとしてはっきりと確信がもてない。

「あ…あ…そう…だったんですか…でも、もう大丈夫です。所長、あの…封筒は…」
俺はソファーから立ち上がろうとした。
「いや、いやそこで寝てていい。ここのところ働きすぎだからね。見てみろよこれか?何で巻物の写真なんか見てたんだ?君は太平洋戦争の編集をしてるんじゃないか?全く時代が分からなくなったのかい?」
「いえ、そういうわけでは…確か黒人?の写真もありませんでしたか?」
「!?…あっはははは!!君どうかしてるよ!黒人の写真がどうしてここにあるんだね?少し休暇でも取ってきなさい。私が次長には話ししておくから。あははは!早く仕事のことなど忘れなさい。封筒は私が棚に戻して置くから心配しないでくれ。」

疲れていたのだろうか?休暇をとるのはかまわないが
釈然としないものを覚えていた。
染色体の写真を口にしなかったのは幸いだった。
何故なら染色体の写真も歴史棚に片付けたのか?などと
余計な事を聞かずにすんだからだ。

俺は一度帰った振りをして密かに残り
夜まで待って、再度館内を調べてみようと考えていた。

夜になったので俺は隠れていた階段の下にある
物置からそっと抜け出し、書庫の扉をあけ様子を窺った。
奥の所長の部屋から次長と所長のひそひそ声が聞こえる。
そっと近づいて聞いてみる。
「…写真…見られてしまったな…」
「ええ…しかし、なんだか分かってませんよ」
「いや、ああいうキモボウズは、こういうのずっと気にしてて
ことあるごとに思い出すんだよ。そして、まるで、同心円の
渦巻きの中にいるように、ぐるぐると同じところを回っているようでいて、いつか真実に到達するんだよ…」
「そうですね…」
「だがその真実が歪んだ形で受け止められることもある。
そうなると俺達「本土」の人間にとってやっかいだ」
「…確かにやっかいですね」
「まあかわいいとこもある奴だったが…こうなったら…」
「まさか!所長!あの島に?」
「…」
「所長!!まだ荷が重過ぎます!」
「…あとはあいつ次第だ…」
どうやら俺のことを話しているようだ
本土?あの島って何なんだ?
「とりあえずこの伝書鳩を飛ばして…「島」に連絡してくれ」
その時、またしても後ろからそっとハンカチを鼻にあてられた。
学習能力の無さに自分でもあきれる。意識がかすれていく中、俺は(なんで主任まで?みんな何かを隠してる…の…か…。しかし、一日に二度も意識を失うなんて…)などと考えていた。

気がついたときは俺は
目隠しをされていた、飛行機のコンテナに載せられてる気がした。

「いまからお前は休暇に出かけることになる。だが休暇に期限は無い。帰って来るかこないかはお前次第だ。行き先は「島」とだけ言っておこう。それと、あの島にはMJ32という奴がいる。俺達はお前を憎んでるわけではない。むしろ手伝って欲しいんだよ…」
こうやって俺は「島」にやって来たのだった…。

あれこれ考えながらも、俺は女の後ろ姿に見とれながら
歩いていた。塔の下の扉を開けると女は入っていった。
俺もその後に従った。

女が振り返る。黒髪がゆれる。美人だ。
何も言わず女はじっと俺を見ている。
緑色の目が美しい。ウェットスーツのチャックを
下げる。胸元が見える。
そして、かすかに女の唇が
動き出したとき、いろいろ聞きたいことが
頭によぎったが、
俺は思わず女を抱きしめた。
なめらかな背中の曲線があらわれ、

【以下18禁】

奇跡的とさえいえる輝きの肌が

美しくはじけそうなくびれた腰のわきとウエットスーツの間の両側に手をそっと差し伸べた。

以外にやわらかい彼女の体に茫然としながらも開いた手は
ぴったり 彼女の腰に落ち着き、産まれたままの背中を見つめ、

さらに手を先にのばし、密着した…

「あっ…」

彼女が呻く。





そんな妄想をしつつ、
俺はウェットスーツのチャックを言われるがままに下ろした。

その背中には異様な刺青が彫ってある。

これは本土で見た写真と同じ…染色体…?
「染色体が…」
「いやん!声に出さないで。とってもはずかしいんだから…お願い!」
「ううん。とてもきれいな染色体だよ」
「いやあああん!えっち!」
俺はこういうのが好きだ。

「ところで、この染色体の意味は?」
「お願いだから、もう染色体なんて言わないでね…これはね…」
女は語り出した。

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2007年2月9日

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