破れた電報
―――静かすぎて耳鳴りが止まらない。
無口に祈る時間。
聞き飽きた言葉の裏には、涙がすんでいるのだろう。―――
良く知っている見知らぬ人がいる。
子供がしゃがんでその人を見ている。
「この人は誰なんですか?この人は誰なんですか?」
―――って言っているのに!
楽しかった思い出が溢れ出せば、
そっと責め立てる懐かしい残酷さ。
現世に貼り付けられた儚さも、
今はいつの日か見た正夢かな?
「この人は誰なんですか?この人は誰なんですか?」
―――あの頃の僕が見ている。
僕は笑って口を噛み切って答えた。
木漏れ日に染まる暖かい闇に、
真っ赤な世界がすべてを認めている。
テーブルの上で死んでいた電報が、
破れたまんまで僕を叫ぶ!
「帰りたい―――!」