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「倫理」が好きコミュの第二話 ギルガメシュの人間論

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-------------------第二話 ギルガメシュの人間論---------------

   陽一は砂漠で目覚め彷徨り、キャラバン隊長ギルガメシュと呼ぶ

上村 陽一は自分のはらわたからの激しい衝撃で、粉々にはじけとび真っ白になるのを覚えた。自分は消滅したのだ。しかし消滅したという意識は矛盾している。消滅したのなら消滅したことを意識できない筈だから。これは消滅の疑似体験にすぎないのだ。

消滅のショックで上村 陽一の記憶が戻った。そうだ、これは榊周次の「人間論の穴」の世界なのだ。

「第一話、鉄腕アトムは人間か」でどじを踏んで、これから「第二話」だな。こんな迫真のアドベンチャーゲームを榊周次は発明していたのか、しかしどうもこれは嘘くさいじゃないか、だって二十一世紀にこんな体験型ゲームが作れるわけがない。千年早いよ。

砂漠の中で倒れていたら三年ぶりの雨が降り、驚いて目覚めた。どこからそんな力が出たのか、粉々に砕け散ったような脱力感を引きずりながらも、ずぶ濡れになり、砂漠の中をさまよい続けた。

何も食べずに七日七晩歩き続けたところで、疲れ果ててもうだめかと思ったが、隊商に助けられた。隊商の隊長は陽一を見覚えがあるといい、ベルトと額の三日月の傷からウルクの王ギルガメシュに違いないという。そういえば陽一もこの隊長に見覚えがある、どこかで見た顔だ、というより自分はこの男を追って旅に出たような気がした。それもその筈、隊長は榊周次が演じているのだから。

陽一は自分が陽一であることはすっかり忘れていたし、ウルクの王ギルガメシュについてどこかで聴いた覚えがあるが、それが自分だという覚えはまるでなかった。オアシスの水溜りに写った自分の姿を見て陽一はたじろいた。精悍だが白髪まじりの皺の深い初老の男だった。



コメント(5)

暴君を倒してウルクの王となりシュメール治め並ぶものなし

エンキドゥ、ギルガメシュと戦えど戦士の哀しみ通いて抱けり

森の神フンババ殺し拓きたり文明の世の人の栄えは

森の神殺しし罪を贖いてエンキドゥ逝く我に代わりて
 

死霊住む地の果てにあるマルシュ山エンキドゥ求め我は旅立つ

洪水で生き残りし人たずねては不死の薬を求め還らむ

十五年経ちて還らぬそのときは、新王立てて栄え引き継げ

ウルクは意外に近くだった。一月あまりの旅で隊商に送り届けられたのである。もちろん隊商はウルクからたっぷり褒美をせしめようとしたのである。記憶をすっかり失っていたギルガメシュは帰途で、ギルガメシュの伝説を隊長からできるだけ詳しく聞いた。隊長の話は概略こういう内容だ。

ギルガメシュ王は、ウルクの出身だが、キシュの暴君アッガを倒して、その功績でウルクの王となり、シュメールの覇権を握った。その権力があまりに強大だったので、臣下が牽制のために半人半獣のような野生児エンキドゥを神に作ってもらった。

エンキドゥは獣たちの中で暮らしていて、人間の横暴から獣たちを守っていたが、シャムハトという宮廷お抱えの娼婦に誘惑され、手なづけられてウルクの町に連れてこられた。ところがエンキドゥはシャムハトとの関係をからかわれて、怒り狂い、ギルガメシュと格闘になった。

最強の男同士の格闘はなかなか決着がつかず、両者は疲れ果て、互いに戦士の孤独が伝わったのか、抱きあったのである。それからギルガメシュはエンキドゥを女を愛するように愛したというのだから同性愛だったのだろう。エンキドゥはギルガメシュの忠実な部下となり、ギルガメシュの権力基盤はさらに強固となったという。

ギルガメシュはシュメール文明をさらに繁栄させようとした。農地や牧場を拡大し、船や建物の用材やレンガを焼く燃料の材木を得るためにディルムント森を伐採することにしたのである。しかし森の木を伐ることは森の守り神フンババが許さない。ギルガメシュはフンババに立ち退きを要求し、戦争となった。エンキドゥは反対だったが、ギルガメシュを見殺しにできないので、フンババとの戦争に参加し、一緒にフンババを殺してしまった。

森の神を殺し、森を伐採したことでシュメールの文明は隆盛を極めることになる。しかし、人間でありながら神を殺したということで神々の怒りは収まらず、天上の法廷で神殺しに対して審判が下される。この判決は主犯であるギルガメシュはお構いなしで、代わりに最愛のエンキドゥを死刑にして、ギルガメシュに反省を促すという内容だった。

最愛のエンキドゥを失ったギルガメシュの哀しみは深かった。エンキドゥの死はギルガメシュの身代わりだっただけに、神々の判決は納得できない。死霊が集まる死者の国にでかけ、エンキドゥを取り戻そうと旅にでたというのである。そして死者の国で番人をしているといわれる『バイブル』のノアにあたるウトナピシュティムに逢って、不老不死の薬を手に入れ、ウルクの人々を死から救う究極の偉業を成し遂げようという野望を妻に語っていたという。

もし十五年過ぎても戻ってこなければ、ギルガメシュは死んだことにして、新しい王を即位させるように言い残した。その十五年が既に過ぎてしまったので、王の葬儀を盛大に行い、旅立ちの日に王妃の胎内に宿っていたギルスドゥ王子が即位したという。それはもう五年前だ。この五年間のギルスドゥ王の治世は善政で評判がいいらしい。

隊長の話を聴いているうちに陽一は、すっかり自分がギルガメシュだと思い込んでしまった。しかし過去の記憶は喪失したままだ。ウルクに着いたら信用されるだろうか。ギルスドゥ王やその側近たちは、ギルガメシュをどう扱うのか、いまさら王に復位させられても困る。そんな能力も気力もない。しかも父と子の間にどのような亀裂や葛藤から権力争いが起こらないとも限らない。この帰還は極秘にうちに済ませよう。しかしウルクの神々には報告しなければならない。記憶を失ったままで何を報告すればよいのだろう。

隊長に新しい王には極秘にし、妻とシャムハトへの報告だけで済ませたいと申し出たが、それでは隊長は褒美に預かれないから困るという。

隊長によるとシャムハトが神殿の巫女になっているので、まずシャムハトに逢い、神殿で復位はせず、ウルクから立ち去ることを神に誓って、その後息子のギルスドゥ王とギルガメシュ王のかつての王妃エメサルと再会してはどうかという提案である。それでは叙事詩はもちろん梅原猛の戯曲ともかなりずれてしまうのだが、陽一はそういう事情も全く記憶になかったから、この提案を呑むことにした。
 
シャムハトが逢えばギルガメシュが本物か偽者かはすぐに分かるはずである。ギルガメシュに対して官娼として何度も同衾したことがあるので、皮膚感覚からも誤魔化しは利かないと思われる。

シャムハトはギルガメシュを見るなりしっかりと抱きついて、激しく泣き崩れたのである。なんとシャムハトは智子の顔をしている。でも記憶を消されているので懐かしさやいとおしさはあふれるのだが、名前が出ない。

「おまえを探していたんだ、シャムハト、会いたかった」ときつく抱きしめた。シャムハトは「私のいとしい夫、エンキドゥにはお会いになれたのですか、ギルガメシュ王」と言った。

ギルガメシュは、われに返って、抱きしめていた手を離した。「エンキドゥは私を恨んでいる演技をして、私を死者の国から早く返そうとしたのだ」と淋しそうに答えた。

さっそくシャムハトは神々にギルガメシュ帰還の報告をした。すると神々が直々にギルガメシュの見舞いにやってくるというのである。
ーー自らの限界超えて進み行く、そこに価値あり人として生く−−

 太陽神ウトゥと水の神エンキがまず神殿に姿を現した。

 この二神は人間に好意的なのである。太陽神ウトゥは、早速ギルガメシュをねぎらって、「ご苦労だった、ギルガメシュの勇敢さには敬服するよ。地の果ての向こうマルシュ山の死霊の国までエンキドゥと不死の妙薬を求めて旅をしていたというじゃないか、人間の限界に挑戦する勇気は見上げたものだ。

 私は人間は人間の限界に挑戦するということに存在価値があると思っている。他の動物や神々だって、それぞれの与えられた限界からはみでようとはしない。人間だけが己の限界を超えようとするのだ。」

 ギルガメシュは恥ずかしそうに応えた。「何も限界に挑戦しようなんて考えているわけではありません。やむにやまれぬ気持ちからしたことです。他の動物だって環境が変れば、その変化に適応しようとして姿を変えるということですよ。」

 「それはそうだが、他の動物は姿を変えて別の種類の動物になってしまう。人間は、人間の姿のままで、人間のこれまでの限界を超えていく、そこが素晴らしい。

 それでエンキドゥには逢えたのか。」

 「それが……」記憶喪失だといえば、行ったことも疑われてウルクの王としての面目が立たない。

 「何だ、逢えなかったのか」と太陽神ウトゥはがっかりした面持ちで言った。

 「逢えたことは逢えたのですが…」

 「ほう逢えたのか、それでどんな様子だった、わざわざ尋ねてきてくれて大感激していただろう。」

 「本当はうれしかったのでしょうが、あそこは死者の国で生者が長居すると帰れなくなるからでしょうか、わざとそっけなくしていました。

 私の身代わりにされたことで私を恨んでいるとさえ言われました。いや、ほんとに悲しかったですよ。私があんなに愛したエンキドゥですから。」

 こう答えておけば、神々も疑わないだろうと考えた。なぜなら、エンキドゥはギルガメシュを愛していたのだから、大感激して喜んでくれたに違いない。だからそう報告すれば、一番自然である。

 マーシュ山までたどり着けなかったのに嘘をつくとすれば、「エンキドゥは大感激して喜んでくれた」と神々に報告するはずである。わざわざエンキドゥがそっけなかったとか、恨んでいたとか言う筈はないのである。だからかえってギルガメッシュの報告は真実味があるのだ。

 「そうか、でもどうしてわざとそっけなくしていたと分かったのだ」水の神エンキは突っ込んでたずねてきた。

 「ウ…ウ…」なんて答えればよいか返答に窮した。「ウトナピュシュティム様ですよ。ウトナピュシュティム様がそのようにエンキドゥの態度を診断されたのです。」

 太陽神ウトゥは感心して言った。「そうだろう、そうだろう。それじゃあ、ウトナピュシュティムに逢えたのだな。それはよかった。」

 水の神エンキは弾んで訊ねた。「じゃあ不老不死の薬は手に入ったのか。」

 しかしギルガメシュは空の手を上げ、肩をすぼめた。

 「ご覧の通り、何ももって帰れませんでした。

 死者を取り戻したり、不老不死の妙薬、若返りの妙薬を手に入れようとしても、それは人間には運命があって、できっこないのです。

 ところが私は、自分のことを三分の二ぐらいは神で、自分にとって不可能はないと思い上がっていたのです。自分の情熱の力で死者も甦り、不老不死の願いすら叶えられると思い込んでいたのですから、本当にお恥ずかしい限りです。」

 シャムハトが目を輝かして訊ねた。「ウトナピュシュティム様が不老不死を保っておられるのだから、不老不死の妙薬はやはりあるのでしょう。」

 「ウトナピュシュティム御夫妻も単調でいつまでも死なないことに耐え難いご様子でしたね。彼らがどうして不老不死なのか分からなかったのですが、彼の友人クルラがどうも不老不死の妙薬を持っているという話なのです。不老不死の妙薬を手に入れるための資格試験がありましてね、私は見事落第しました。」
---------ただ七日眠らすにいるそれだけで不死の妙薬手にせしものを----------

太陽神ウトゥは驚いたように言った。「三分の二は神といわれた超人ギルガメシュでも落第するとは、相当難しい試験だったのでしょう。」

「いや、合格できないことはないのです。フェイントですね、あれは。見事にひっかけられましたよ。」

水の神エンキはじれたように言った。「そのフェイントの内容を是非聞かせてくれ。神々の中でいい四方山話のネタになるよ。」

「七日七晩寝なければいいのですよ。死と睡眠は近いので、不死の薬を手に入れようとするのなら、せめて睡眠を七日七晩我慢できなくては駄目だというので、すぐに挑戦したのです。」

シャムハトは意外な表情をした。「それなら私でもクリアできそうね」

「それが見張りがなくて、一日に一回お婆さんが朝パンを届けてくれるだけで、あくる朝パンが残っていれば失格だということなのです。」

「なあにじゃあ朝起きていればいいのだから、普通に生活していれば合格じゃない。」シャムハトはあきれた。

「簡単だろう。簡単すぎるよな。それでつい油断して二・三時間眠るつもりが、旅の疲れからか七日七晩眠り続けてしまったのだ。アッハ、ハ、ハ」しばらく間をおいてからその場の一同が大爆笑となった。

「つまり人間起きていようと思えば、眠らなければならない。起きていることの中に眠るということが織り込まれているのだ。それと同じように、生きるということは、死に向かって生きるということであり、いつまでも死なないということは、生きないのと同じことなのだ。

もし絶対に死なないのだったら、何も食料を集めてくることもなければ、富を積み上げることもない、あくせく働かなくてもいいわけだろう。勉強をしなくてもいいし、物を食べたり、息をするのだって面倒くさくなるかもしれない。

つまり死があるから生もあるのだ。それを生だけとって、死を捨てようとするからかえって苦しくなるのだ。与えられた有限の生を精一杯充実して生きれば、それが幸福なので、死がなくなったとたん、人間はいかに生きればよいか分からなくなるんだ。」

ギルガメシュになっている陽一はまだ高校三年生の筈なのにすっかり六十年は生きてきたような気持ちになっていた。
 
「ギルガメシュ、よく生還できたな、なかなか悪運つよいじゃないか。どうもエンキドゥも取り戻せなかったと、不老不死の妙薬も手に入れられず、体力は使い果たし、とってきたのは歳だけだったようだな。まあ人間共の思い上がりには、いい薬になっただろう。」大気の神エンリルは人間には厳しい、皮肉たっぷりにそう言った。

アン大神の道楽娘イナンナは、入ってくるなり「あらー、ギルちゃんもずいぶん皺くちゃ爺さんになったわね、あんなに精悍な若者だったのに、私と遊んでいれば、そうなる前にたっぷり生まれてきたことの悦びを味わうことができ、官能的な死を体験できたのにさ。

ところで死霊たちの国はどうだった、私はああいうのは、気持ち悪くていやだけど」と突き放すように言った。

「森の神フンババを殺したのは私の罪でした。それを私を罰せずに、エンキドゥを身代わりにしてしまわれた。それがどうにも納得できない。エンキドゥをどうしても取り戻したいという気持ちを抑えられなかったのです。

私はウルクの王として人間たちをもっともっと豊に幸福にしてやりたかった。そしてできることなら、死の哀しみからも人間を解放したかった。

エンキンドゥは土になってしまった、私も土になってしまうのか、それでおしまいとは、なんと恐ろしいことでしょう。

それに私にとってエンキドゥを失った哀しみはとてつもなく大きく、それを招いた自分の罪への後悔は激しくて、とても王位に居座ってウルクにいることはできませんでした。エンキドゥを取り戻せないくらいなら、地の果てで野たれ死んだほうがましだとさえ思ったのです。」

 
    森焼きてこの手に入れし幸福も森なくしてはやがて費えぬ

 「ギルガメシュが考えていることは、常に人間たちの幸福であり、自分や自分の友、自分の愛する人のことだけだ。そのためには、森や森の木々、森の動物たちがどうなってもよかったのだ。それで森の神フンババだって殺すことになってしまった。しかし森の神を殺し、森を焼き尽くして得た人間の幸福というものは、果たして本当の幸福なのか、エンキドゥを失ってはじめて、その間違いに気づくことになったわけだな。」大気の神エンリルは確認した。

 ギルガメシュはエンリルを睨み付けた。「私はエンキドゥの処刑を納得しているわけではない。ただ、エンキドゥは獣のような素直な心を持っていた。私はそんなエンキドゥが好きだった。獣の血が通っているエンキドゥを森の獣たちと戦わせることになったのは、私の罪だ。

 エンキドゥを失ったことは、我々人間と獣を結び付けていたものを切断したことでもあるのだ。それは人間と自然との断絶を意味する。森や森の獣たちと共に生きることによって、我々人間は自然の生命を生きることができるのに、人間のためだけにある牧場や畑にしてしまえば、しまいに自然は人間に復讐の牙を剥いて災いをもたらすようになるだろう。」

 太陽神ウトゥが口を挟んだ。「私は人間たちの森を切り開き町や牧場や畑を作ろうという遠大な文明構想を応援した。森の神フンババをやっつける戦いでも、日照りを起こして森の神を弱らせたりした。もちろん森がなくなれば、自然環境のバランスが崩れ、最後には人間だって暮らせなくなるとは分かっているが、なにしろ森を本格的に切り開くのはこれが最初だから、まだまだ大丈夫だと思っていた。しかしギルガメシュがいなくなってからも、森林の伐採が各地で広がり始めている。だんだん心配になってきた。」

 大気の神エンリルは大声で叫んだ。「そうなんだ、第二、第三のギルガメシュが登場している、人間の欲望には際限がない。これから何百年、何千年と人間たちは森林を伐採し続けるのだ。森の神フンババ殺害は一度きりの事件ではない、おそらく森が地上から消えてなくなり、地上が砂漠で蔽われ尽すまで、人間はフンババを殺し続けるのだ。

 そして森を破壊した人間は、川も湖も平原も海も地上や天空のすべての神々を殺し、唯一つの自らの守り神を信仰するだけになり、最後にはその神も殺してしまうだろう。」
  日光の猿でもするや反省は、知恵寄せ合って自然再生

「人間には考える力、反省する力がある 。」主神アンの大神が登場した。

「人間は欲望に任せて、自然を自分勝手に作り変え、獣たちを滅ぼしていくだろう。しかし自然を破壊するということは、自分の命の源を破壊することだ。やがて耕地は砂漠に侵食され、自らの文明を滅ぼすことになるだろう。

その時に、考える力、反省する力が働けば、自然との調和を学び、森の再生や獣たちとの共生に取り組むことになる。自然の中に宿る生命への信仰に帰ることになるのだ。

果たして彼らの考える力、自然から学んだ知恵を分かち合い、寄せ合って共に力を出し合って、自然と共生する能力が彼らと大いなる生命を守るだろうか。」

「お父さん、人間が考える力を持ったのは、偶然樹上生活ができなくなって二足歩行をするようになったからでしょう。お父さんがおもしろがってやらしたからでしょう。それで直立して頭脳が大きくなったのと、手の働きや目の働きが活発になったので急激に賢くなり、喉も発達したので発声が自由になり、それで声を信号化して言語を使うようになったからでしょう。

  それもこれも彼らが肥大していく欲望を充足させるための活動の結果なのよ。だから目先の欲望を実現するための知恵はいくらでも発達するけれど、それを抑制して、自然全体の調和を図るとなると、彼らの欲望に邪魔されてなかなかできないのじゃないかしら。

 それより、これ以上人間が自然を破壊するようなら、そろそろ人間共を滅ぼしにかかりましょうよ。」イナンナは父神アンに反論した。

 大気の神エンリルはうなずいて言った。「そうですねぐずぐすしていると我々が先に人間に滅ぼされかねないですからね。」

 これはやばいことになってきたとギルガメシュはうろたえた。「神々よ、私がよくウルクの人々に話して聞かせます。環境問題を教える仕事を息子王を補佐して私が専門にやりますので、どうか滅ぼすなどと脅かさないでください。」

 主神アンは苦笑していった。「残念ながらギルガメシュよ、あなたの寿命はもう尽きようとしているのだ。」

 そう叫ぶと突然神々の姿は消え、人間たちが神殿になだれ込んできた。「ギルガメシュ王を騙る偽者はどこだ。」ギルスドゥ王が先頭に立っている。

 「お前か、なるほどそっくりだな。しかし本物は今しがた帰還されるや息を引き取られた。彼は背中の獅子の刺青から間違いない。背中を見せてみろ。ほらないじゃないか。やはりお前は真っ赤な偽物だ。」

 なんとギルガメシュ王ではなかったのか。上村 陽一は愕然とした。しかし彼は王の刃を逃れることはできなかった。大上段から振り下ろされた王の刃は見事に陽一の脳天を真っ二つにしたのである。

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