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阿部一徳の、ちょっといい話コミュのヒストリー

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第1回公演からすべての舞台に立ち会い続けている管理人が
つらつらと思い出を書き散らすトピ。

毎公演が「一期一会」ということで、
その日お越しいただいたお客様との間に最高のものを
お届けしていますが、その日の天気や、客席からの反応、
演者同士の仕掛け合いなどで、公演ごとに違った表情を見せるのも事実。
(同じ演目でも、公演ごとにみんな違う魅力を持っているんです)

というわけで、
「ちょっといい話ヒストリー」をひもときながら、
印象的だったエピソードを中心に書きつけていきます。
みなさんの思い出話やツッコミ、ご質問も大歓迎です。

最初の公演からずいぶん時間がたっていることもあり、
記憶が定かでない部分もあります。
話も行ったり来たりするでしょう。

その辺どうぞ温かい目で見守ってやってください。

コメント(30)

◆記念すべき最初の公演は

1998年 8/9(日)10(月)
『異形の愛』
 演出・出演●阿部一徳
   ギター●岩田浩史
    音響●水村良(AZTEC)/千田友美恵

 原作   ●キャサリン・ダン
 構成・脚色●高階經啓

これが最初の公演でした。

会場は渋谷の「Xp / cafe plants」というお店(いまはもうありません)。テーブル席に座って、ドリンクを注文して手元に置いて語りを聞くという、えらくかっこいいスタイルでした。

ご覧になった方はおられるでしょうか?
◆第2回公演

2000年 2/6(日)
『異形の愛』
 演出・出演●阿部一徳
   ギター●岩田浩史
    音響●千田友美恵

 原作   ●キャサリン・ダン
 構成・脚色●高階經啓

第2回は『異形の愛』再演。

会場は第1回と同じ場所の渋谷「Xp」。ちょっとだけ名前が変わり、
営業スタイルもレストランよりにシフトしていたものの、
1ドリンクを手元に飲むという素敵なスタイルは同じ。
あれ、よかったなあ。

     *     *     *

第1回公演の時にも非常に質の高い、いいプロジェクトに
関われたことを誇りに思ったけれど、この第2回公演を見てぼくは
「これはもう何が何でもライフワークとして付き合うぞ!」と決意。

かけた労力と完成度を考えると、これほどの質の高い公演を
one night, one stageというのは極めて贅沢な、
というか非常にもったいない話。

これは阿部が、所属するク・ナウカ シアターカンパニーの
公演スケジュールの合間を縫って、確保できたギリギリの日程で
この公演を打っていたという事情から。

実際このあと、次の公演を打つまでになんと5年間の歳月が流れる。
せっかく「ライフワーク」とまで意気込んでいたのにね。
正直、ぼくも「もう阿部ちゃんはあのスタイルではやる気がないのかな」と思ってました、はい。

     *     *     *

ちなみに第2回までは、現在とは違い公演のシリーズタイトルが「阿部一徳ソロ・アクト」でした。

#そうそう。ネット上には
 「演劇定点カメラ」の「まねきねこ」さんのルポが残っています。
 いいことをたくさん書いてくれています。
 http://homepage1.nifty.com/mneko/play/A/20000206S2.htm
◆第3回公演

2005年 3/8(火)
『異形の愛』
 演出・出演●阿部一徳
   ギター●岩田浩史
    照明●貴之新
    撮影●内田琢磨

 原作   ●キャサリン・ダン
 構成・脚色●高階經啓

会場は阿佐ヶ谷の「ザムザ阿佐谷」。
残念ながら、ドリンクをお手元において……のスタイルは取れず。

実に6年ぶりの公演。しかも火曜日の夜にone night, one stageという、ほとんどお客さんに喧嘩を売っているのかというスケジュール。というのも阿部が「この期間なら公演が打てる」と判明してから劇場を見つけ、ギターの岩田さんが動ける日程をぎりぎり調整した結果。特に『異形の愛』は岩田さんなしには考えられないほど世界が完成しているので、この顔合わせがそろうチャンスはお見逃しなく。

宣伝も不十分、日程も足を運びにくいとあって、客席はガラガラ。
でもこの夜、ベストパフォーマンスが出ました。何度も観ているぼくも
客席のはじっこの通路階段で小さくなって観ながら圧倒されていました。

ちなみに、この公演からシリーズタイトルが「阿部一徳の ちょっといい話 してあげる」に変更。阿部がやっていることを「ひとり芝居」といえばいいのか「ソロアクト」といえばいいのか、その他の名前で呼べばいいのか、いまなお頭を悩ませています。

すごく素直にいえば、「ものがたり」なんですけどね。
◆第4回公演

2005年 4/12(火)
『ぼくは747を食べてる人をしっています』
   演出・出演●阿部一徳
 アコーディオン●若林充
      照明●貴之新
      撮影●内田琢磨

    原作●ベン・シャーウッド
 構成・脚色●佐々木リクウ

会場は阿佐ヶ谷の「ザムザ阿佐谷」。
スタイルも第3回公演とほぼ同じ。ドリンクなしのone night, one stage。

語り手はギネスブック(原作でははっきりそうは書いていないけど、
まあ誰が読んでもギネスブックなのでギネスブック)の記録認定係の男。
中西部の町にジャンボジェット747をひとりで食べ尽くそうとしている
男がいると聞いて、その町に出かけ……。という壮大なほら話。

でもこれが意外にリアルに聞けるから、あら不思議。
そしてその突飛な話に付き合ううち、これもまた見た目はちょっと
いびつだけど、とても純粋な愛の物語だということがわかる。

ということで、7年ぶりに登場した第2作目の出現によって、
阿部のこの公演は「(ちょっと変わった)愛」がテーマなのではないかと
気づくきっかけともなった作品。激しく胸に迫るエンディングの前作とは
対照的に、見終わったときにあったかくてにこにこしてしまいます。
◆第5回公演

2005年 12/23(金)
『ぼくは747を食べてる人を知っています』
   演出・出演●阿部一徳
 アコーディオン●若林充
      撮影●内田琢磨

    原作●ベン・シャーウッド
 構成・脚色●佐々木リクウ

会場は元・神奈川県立川崎南高等学校の体育館。

かわさき現代彫刻展2005特別企画「クリスマス夢企画」という、
川崎市で文化事業を進める団体からのお声掛かりで急遽上演。
無料で、昼間で、元高校の体育館で、めちゃ寒く、 照明機材はもちこみで、
むしろ外光が防ぎようもなくはいり、近所の人がぶらりとはいってきて、
おじいちゃんが途中で「わしゃあ3時から人に会うんでな」と出て行ってしまい、
主催する団体からいらしたスタッフさんは、お客さんがいても平気で
ざぶとんを片づけ始めてしまうような感じで、まあなんというか、
集中できる環境とは言い難い条件の中、でもしっかり涙腺を刺激しまくる
ほんわかしたクリスマス向けの公演となりました。

ちょっと番外編な感じもあるんですが、第5回公演とします。
◆第6回公演

2006年 4/28(金)、29(土)、30(日)
『もしも僕がイラク人だったら』
 演出・出演●阿部一徳
    脚本●大根健一
    音響●田坂円、諏訪智美
    撮影●内田琢磨
  制作協力●LENZ

「東中野 阿部まつり」と称して、ひとり芝居の3カ月連続公演に挑戦する、
第1弾に選ばれたのがこの作品。

会場はスペースRAFT( http://raftspace.exblog.jp )。
2006年1月に生まれたばかりの新しい空間で、コンパクトながら清潔で
気持ちのいい会場です。

初めて生演奏なし、既成の曲を使うパターンとなり、ついに阿部が舞台に
全く一人きりというパターン。椅子に座ってじっくりお話をする感じが
より強まった感じもあり。

終わったばかりの公演なので、うまくまとめられないので、後日加筆します。
◆第7回公演

2006年 5/26(金)、27(土)、28(日)
『カレーソーセージをめぐるレーナの物語』
 演出・出演●阿部一徳
    音楽●寺田英一
    原作●ウーヴェ・ティム
  構成脚色●高階經啓
    撮影●内田琢磨
  制作協力●LENZ

ひとり芝居3カ月連続公演「東中野 阿部まつり」の第2弾。
この企画のための作品としては『異形の愛』『747』につぐ3本目。

会場は『イラク』に続き、
スペースRAFT(http://raftspace.exblog.jp )。

『イラク』同様、演技空間上には阿部一人というパターン。

ただしこの作品は音楽に寺田英一氏を迎え、オリジナルの音楽を
作曲して貰い、また、当日は寺田氏本人がオペレーションをする
ということで、限りなく共演に近い形での上演となる
(これ、ご来場いただいた方にきちんと伝えていなかったのですが、
とても重要なポイント)。

話者と時制がめまぐるしく入れ替わる作品で、
しかもストーリー上はあまりわかりやすいカタルシスがなく、
またエンディングも常識的に考えると
「それではお芝居は終われない」という原作のエンディングを
ほぼその通りに(あえて)採用したため、
蓋を開けてみるまでわからないところがあったものの、
実際に上演して、これは非常に愛すべき作品であることが判明。

もちろんシリーズのレパートリーに加わりました。
いつの日かの再演をどうぞお楽しみに。
◆第8回公演

2006年 6/16(金)、18(日)
『異形の愛』
 演出・出演●阿部一徳
   ギター●岩田浩史
    原作●キャサリン・ダン
  構成脚色●高階經啓
  制作協力●LENZ

ひとり芝居3カ月連続公演「東中野 阿部まつり」の第3弾。

会場は『イラク』『カレーソーセージ』に続き、
スペースRAFT(http://raftspace.exblog.jp )。

あの空間に阿部と岩田さんが並ぶともうこれだけでえらい濃い。
というわけで(?)、3公演で初めて中仕切りを開けはなって上演。
大久保通りの音はより聞こえるようになったものの、
この公演のスタイルとしてはこれで良かったと思われる。

第3回の阿佐ヶ谷とはまた別次元でのベストパフォーマンス。
どちらが良いとかいうのでなく、「この空間における理想形」。

(※はるこさん、入力ミスをご指摘いただきありがとうございました!)
◆第9回公演

2006年 8/25(金)、26(土)、27(日)、28(月)
『ぼくは747を食べてる人を知っています』
   演出・出演●阿部一徳
 アコーディオン●若林充
      原作●ベン・シャーウッド
   構成・脚色●佐々木透
    制作協力●LENZ

3カ月連即公演で終わったのかと思ったら、すっかり火がついた阿部を
誰も止められなくなっていた……。この年4本目のちょっといい話。
2005年4月、12月に続き3回目の公演。

会場は
 8/25,26,27は東中野「スペースRAFT」
 8/28は小田原「月天」
見終わった後、幸福感溢れる内容なだけに終始和やか。

小田原公演は「月天」という一軒家の居酒屋の2階の座敷を開け放ち、
ざぶとんにかけてアメリカ中西部の話を聞いてもらうという、大変
チャレンジングな試みだったけれど、これがあら不思議、ちゃんと
物語世界に入っていけるんですね。

終演後はそのまま打ち上げパーティー状態に。
おいしい料理(ほんとこの店、おいしいん)とおいししお酒、
さらには阿部&スタッフ一同が各テーブルを回って話が弾み、
とてもいい時間を持てました。

「飛行機の味がわかった」というご感想をたくさんいただきました。
◆第10回公演

2006年 11/18(土)、19(日)
『もしも僕がイラク人だったら』
 演出・出演●阿部一徳
    脚本●大根健一
    音響●棚川寛子
    照明●司田由幸
  制作協力●高階經啓(LENZ)

「東中野 阿部まつり」と称して、ひとり芝居の3カ月連続公演に挑戦する、
第1弾に選ばれたのがこの作品。

会場は川崎ファクトリー。
( かわさき現代彫刻展2006ホームページ http://www.owat.net/kgc2006 )。

この年5本目は、3カ月連続公演の皮切りに登場した『イラク』再演。
会場の川崎ファクトリーが、 かわさき現代彫刻展に合わせて、
ふだんから「カフェ」を運営されていたので、念願のカフェスタイルが実現。

臨海工業地帯の殺風景な景色を歩いて、会場にはいるといきなりお洒落な
空間が出現し、テーブルについてドリンクを頼んでリラックスした中、
「ちょっといい話」が始まる……。

終演後には、川崎ファクトリーさんから「打ち上げに」と
「ふるまい酒」と「ふるまい鍋」を出していただき、そのまま
阿部を交えてじっくりおしゃべりするひとときもとって。

2日目19日にはこの鍋に「ショルバ・バージッラ」が登場!
(この公演を知っている人にはちょっとたまらないサプライズ。
 川崎ファクトリーのみなさん、ありがとうございました!)
◆第11回公演

2007年 2/3(土)、4(日)
『カレーソーセージをめぐるレーナの物語』
   演出・出演●阿部一徳
      音楽●寺田英一
      照明●司田由幸
       作●ウーヴェ・ティム
   構成・脚色●高階經啓
    制作協力●LENZ

2007年は川崎ファクトリーの年となった。
ご来場いただいた方ならおわかりいただけるかと思いますが、
ここは「ちょっといい話」にとって、本当に理想的な空間です。
(川崎以外の人にとって交通の便が悪いのが難点ですが……)

天井が高く、客席がゆったり組め、どこに座ってもちゃんと楽しめる。
狭すぎず、広すぎず、「ちょっといい話」に最適なサイズ。
「ささやき」から「咆哮」まで、阿部があらゆるテクニックを全開で駆使できる。
カフェ併設なので、このシリーズの理想型「カフェ・スタイル」を実現でき、
おまけに(ここからは川崎ファクトリーさんのご厚意なのですが)、
毎公演「ふるまい酒」&「ふるまいご馳走」が提供されて、
お客様と出演者、スタッフみんなでの打ち上げパーティーが開かれる。

ちなみにこの公演では、川ファクのボス渡辺さんの知人の
フランス料理シェフが「カレーソーセージ」を試作して振る舞ってくれました!

「阿部一徳の ちょっといい話 してあげる」シリーズの理想型が
この公演を皮切りに展開されることになります。
◆第12回公演

2007年 3/31(土)、4/1(日)
『地獄変』
   演出・出演●阿部一徳
   太棹三味線●鶴澤津賀寿
      照明●司田由幸
       作●芥川龍之介
   構成・脚色●高階經啓
    制作協力●LENZ

意外に思われるかもしれませんが、これがシリーズ初の「和物」。
芥川の没後80周年にからめたわけではありませんが、
記念すべき和物第1作は『地獄変』でした。
(実は2006年秋あたりに阿部から「『地獄変』、すごい盛り上がります」と
 川崎駅に向かうバスの中で聞かされていました)

そして共演者には、女流義太夫の鶴澤津賀寿さん!
女義の世界をご存知の方なら説明不要というその道の第一人者です。
顔合わせの席からポンポンと歯に衣着せぬ気っぷのいいセリフで
阿部をたじたじさせながらのやりとりもみものでした。

公演は、あのよく知られた作品が「『地獄変』ってそういう話だったのか!」
と深い感動を呼ぶ作品となり、新しい命を吹き込むことができました。
このコンビネーションはまだまだ続きそうです。乞う、ご期待。

ちなみ川ファク名物「サプライズ打ち上げメニュー」は、ずばり
「地獄鍋」でした。ピリ辛でおいしかった!
◆第13回公演

2007年6/2(土)、3(日)[川崎ファクトリー]、9(土)[銀座・桃李]

『異形の愛』
 演出・出演●阿部一徳
    音楽●寺田宏
    原作●キャサリン・ダン
  構成脚色●高階經啓
  制作協力●LENZ

“ABE's Birthday Special Version”と称した川崎ファクトリー公演
(ちなみに阿部の誕生日は6/4です)、
“GINZA one night stand”と称した「銀座・桃李」公演で2週末に上演。
(6/1(金)には川崎市民限定プレビュー公演も行われました。)

音楽の寺田宏さんは、
『カレーソーセージ』寺田英一さんと同一人物。
前に出て演奏する場合は寺田宏さん、顔を見せずに音楽を担当する場合は
寺田英一さんという具合に使い分けているそうです。

ダブルネックのギターには「エリーとイフィー」という愛称が付きました。
1998年、シリーズ第一作として登場し、岩田浩史さんのギターとの共演で
完成版とさえ思われたこの作品が寺田さんバージョンで、また鳥肌の立つ
新しい感動を生み出しました。

#台本を担当して、何度も観てきて話をすみずみまで知り尽くしている
 ぼくにとっても新たな感動的場面が誕生しました。
 寺田バージョンの『異形の愛』もまたぜひ観たいものです。

ちなみに6/9の「銀座・桃李」はいわゆる銀座のクラブです。
ヒップホップのクラブ(発音:イマドキの「カレシ」)ではなく、
ママさんがいるれっきとしたクラブ(発音:本来の「彼氏」)です。
これ、面白かったですよ〜。

銀座のナイトライフ系のお店が大量にはいったビルの4階を会場にして、
お客さんの大半は銀座のクラブに足を踏み入れるのが初めて。
なんだかヘンな緊張を強いてしまったみたいですみませんでした。
でも、濃厚な密度の中での公演はまた格別な味わいでした。

会場のユニークさもこのシリーズの楽しみの一つです。
(ちなみにこれまでユニークな会場は全部、阿部が見つけています)


記憶が曖昧ですが、川ファク名物サプライズ料理は
「さすがにこの話にちなんだものはグロテスクすぎるので……」
と、特にタイトルはつけなかったように記憶しています。
◆第14回公演

2007年 9/8(土)、9(日)[川崎ファクトリー]、10(月)[Cafe Kanon (カフェ・カノン)]

『水に棲む猫』
  演出・出演●阿部一徳
 コントラバス●スズキケンタロー
      作●天沼春樹
  構成・脚色●高階經啓

ここから始まる3カ月連続公演「阿部まつり2007」の第1弾。
川崎ファクトリーと、阿部の(思いきり)地元、西荻窪のCafe Kanonを
会場に展開されました。Cafe Kanonは閑静な住宅街の中の落ち着いたカフェで,
ピアノがあり、キャンドルをつけるとまたぐっと雰囲気の出る会場でした。

コントラバスのスズキケンタローさんは、
ふだんはパリを拠点に演奏活動をされている方。
毎度のことながら、稽古場での顔合わせから始まる試行錯誤は
手に汗握る緊張感と、不意に訪れるブレイクスルーという感じで、
立ち会っていても非常に刺激的でした。

そしてこの巨大な存在感ある楽器と、ケンタローさんと、阿部と、
まるで「3人舞台にいる」ような不思議な視覚的印象のもと、
昭和30年代の東京近郊をいつかどこかの異国のように描き出す
詩的で幻想的でおまけに土着的な物語が生まれました。

     *     *     *

■原作者・天沼春樹さんのことなど

確か『地獄変』のときだったか、川崎ファクトリーのボス渡邊さんが
「天沼さんという人がいてね」と話し始め,『水に棲む猫』をすすめて
くださいました。川ファク(や、川ファクが運営するイベント)には
過去にもいろいろなアーティストが集ってきたようですが、渡邊さんは
天沼さんともそんなつながりで面識もあるとのことでした。

その後、阿部が本を入手し,読み,これをやろうと盛り上がり,
ある日ぼくのところにも「天沼さんとスズキさんと顔合わせをやります」
という連絡がきました。

こうして『水に棲む猫』は「ちょっといい話」史上初、小説家さんご本人と
お会いして立ち上がるプロジェクトとなりました(作家さん本人でいえば、
『もしも僕がイラク人だったら』の大根健一さんが第一号です)。

天沼さんは公演にも何度も足を運んでいただきました。
ありがとうございました!!!
◆第15回公演

2007年 10/6(土)、7(日)[川崎ファクトリー]、9(火)[Cafe Kanon (カフェ・カノン)]

『ぼくは747を食べてる人を知っています』
  演出・出演●阿部一徳
  歌・ピアノ●ボンバードラミ
    ベース●越智泰彦
      作●ベン・シャーウッド
  構成・脚色●佐々木透
   制作協力●LENZ

「阿部まつり2007」の第2弾。
以前はアコーディオンとの共演だったものを、
ピアノ&ベースのユニットとのコラボレーションに変え、
「ちょっといい話」史上初めて3人が舞台に立つという試み。

ボンバードラミさんと越智泰彦さんの元々の持ち歌が、まるで
この公演のために書かれたサウンドトラックであるかのように
ぴたりぴたりとはまっていき、全く新しいリニューアル初演と
なりました。

お二人は息もぴったりで、2人を相手にするというよりも
1ユニットとの共演と言う感じがしたのも印象的です。

Cafe Kanonでは、ピアノを演奏することもあり、
『水に棲む猫』とはまた別なレイアウトで上演。
公演ごとに空間を自由に使わせていただけ、大変感謝しています!
(住宅街の中の上品なカフェで、地下のレンタルスペースを貸すことは
 あっても、店舗を貸すことはなかったようで、最初は「この人たち
 大丈夫?」とかなり驚かれたり怪しまれたりしちゃいました。陳謝です)
◆第16回公演

2007年 11/10(土)、11(日)[川崎ファクトリー]、13(火)[Cafe Kanon (カフェ・カノン)] 、追加公演12/21(金)、22(土)、23(日)[RAFT]、2/15(金)[小田原・9th Chord(ライブハウス・ナインスコード)]

『サーカスの犬』
  演出・出演●阿部一徳
 トランペット●山本ヤマ
      作●リュドヴィック・ルーボディ
  構成・脚色●高階經啓
   制作協力●LENZ

この作品は個人的な思い出を語らせてもらえば、構成脚色の作業を
ずっと担当してきて、初めて「ああ、おれはすごい」と思えた本です。
阿部はいつも「こんな作業、他にまかせられる人はいない」なんて
おだててくれるんですが、「まあ、そうは言っても、原作を短くする
だけだし、他にもできる人はいるよ」なんて思っていたんですが、
『サーカスの犬』の作業を乗り越えて、ついに心から自信を持って
「こんなことできる人、他にそうそういないぞ」と思えた記念すべき
作品でした。

そんなぼく個人のささやかな自負を別にしても、この作品はシリーズの
中でも一種特別な位置づけのものとなりました。

まず、この公演での阿部は、徹底的に演じる方針を採用しました。
その結果,少しセリフがあるキャラクターも入れると15人に及ぶ、
普通なら大混乱を引き起こしそうな作品を見事にコントロールし、
徹底的に世界をつくりこんで表現しました。

もちろん、できるだけ淡々と提示してお客さんの想像力に委ねる比率を
高めるという基本形も重要なのですが、この作品に関しては
阿部のアプローチは正しかったと思います。

そしてその結果,ここには実にカラフルで愛すべきキャラクターが、
それこそ、顔つきも口癖も性癖も体重も体臭も持って出現しました。
シェパというみんなが可愛がる犬と合わせて、たとえようもなく
愉快で笑えて泣かせてくれる奴らと、彼らが生み出すエピソードが
あいまって、この公演は、お客様にも、演者にも、スタッフにも
異常なまでに愛される不思議な公演となりました。

12月のRAFT公演,2月の小田原公演と追加公演を重ね、
そして2008年6月のリニューアル初演を合わせて、なんと1年で
10ステージを重ねるという、これまた新たな達成を成し遂げました。
◆第17回公演

2008年 3/13(土)、14(日)
『地獄変』
   演出・出演●阿部一徳
   太棹三味線●鶴澤津賀寿
       作●芥川龍之介
    制作協力●LENZ

この公演は会場の「目白・赤鳥庵」と、2日間の天気の話を抜きには語れません。
赤鳥庵は、目白駅から5分ほどのところにありながら、住宅街の中に突如出現する
日本庭園の中にあり、ふだんは茶室として利用されているようです。

公演では襖や障子をとりはらい、二間分に畳敷きの縁側部分を加えて広々と
利用しました。縁側からはお庭が見渡せ,そこには鯉が泳ぐ池、こんもりと外界を
さえぎる緑,四阿(あずまや)や石塔などが目に入ります。

夜間はところどころがライトアップされているため、
東京とは思えないような一種,幽玄かつ荘厳な雰囲気が漂います。
昼間は小さな滝から流れる渓流からの水音も聞こえてきます。

そう。『地獄変』にはぴったりな会場なのです。

初日はよく晴れた一日で、会場の頃には上弦の月が東の空に姿を見せ、
終演の頃には朧月風に天にかかる、という絶好の天気。上演中に
池からなにやらあやかしの生き物の鳴く声が水面をわたって聞こえて来る。
そんな、ひそやかで、しかも何かがひたひたと迫り来るような心地よい緊張感が
会場にみなぎっていました。

二日目(楽日)は打って変わって,雨の一日。
池に降り注ぐ雨音が、いやがうえにも興趣を添え、「雨の赤鳥庵もよいなあ」
などと思っていたら,開場時刻あたりには遠雷がごろごろと響き始め,
いよいよ開演という頃には沛然と降りしきる雨,いなびかりに続き炸裂する雷!
「おい、これは野外公演か?」と言いたくなるようなありさまで。

おどろおどろしい天然の照明と効果音に、いやがえにも『地獄変』への
期待が高まり,そして上演中はほどよい遠雷と、場を鎮めるような雨音が
絶妙な背景音となるという、二度と味わえないような素晴らしい環境を
つくってくれました。

もちろん公演は二日とも「この日,この場,この二人でなければありえない」
という素晴らしい内容となりました。あの二日間に観にいらした方は本当に
貴重な体験をされたと思います。
◆第18回公演

2008年 6/20(金)、21(土)、22(日)[RAFT]

『サーカスの犬』
  演出・出演●阿部一徳
 トランペット●山本ヤマ
    ギター●石井鉄也
      作●リュドヴィック・ルーボディ
  構成・脚色●高階經啓
   制作協力●LENZ

阿部まつり2008のトップを飾ったのはこの会場、この作品でした。

     *     *     *

初演であること。
それがこの公演の場合、特に重要な意味を持っています。
前年の秋から数えて通算10ステージを、わずか8カ月間でやったのも
初の試みでしたが、実はその全公演が、形式上もすべて初演という
形をとっていました。

山本ヤマさんのトランペット1本で始まった秋から冬にかけての初演は、
その音のシンプルさも相まって、とても“いさぎよい”舞台だったと思います。
物語そのものもほとんど直線的にどんどんどんどん突き進んで行くし、
解決すべき難題も、立ちはだかる敵も登場しないストレートなお話。
登場人物&動物たちがだべったり、喧嘩したり、笑ったり、通じ合ったりする、
その群像の姿そのものが魅力的。そういう公演でした。

この6月公演ではギターの石井鉄也さんに参加していただき、
基本ラインはヤマさんが書き上げた曲に沿って行ったのですが、
やはりちゃんと「リニューアル初演」と呼ぶにふさわしい別な舞台、
別な物語が立ち上がりました。

パリも、少しみんなが知っているパリらしい表情を見せました。
初演の『サーカスの犬』が、観光客は見たこともない労働者たちの
むさくるしくも生活感溢れるパリの下町だったとすれば、
リニューアル初演の『サーカスの犬』はセーヌ河のせせらぎが
見えたり聞こえたり、観光客たちの姿もちょっと垣間見えたり。
そんな公演となりました。

そして「すべてが初演」というこのこだわりは、
おそらく「ちょっといい話」の全ての公演に一貫するテーマでもあると、
遅まきながら気づくきっかけとなった公演でもありました。

原作者リュドヴィック・ルーボディの前で演じるパリ公演に向けて、
小さくとも一歩を踏み出して、10周年記念にふさわしいスタートを切りました。
◆第19回公演

2008年 8/8(金)、9(土)、10(日)[RAFT]

『猫のゆりかご』
  演出・出演●阿部一徳
     音楽●寺田 “SONY” 宏
      作●カート・ヴォネガット・ジュニア
  構成・脚色●高階經啓
   制作協力●LENZ

阿部まつり2008第2弾は、新作『猫のゆりかご』。

     *     *     *

会場はおなじみスペースRAFT。
受付、案内スタッフも髪に花かざりをつけたり、首からレイをかけたりして、
なんだかインチキ臭いリゾート気分を盛り上げる。というのも、物語の後半に
出てくるのがサン・ロレンゾ共和国なるカリブ海の国だったからだ。

作品はカート・ヴォネガットの実質的なデビュー作で(だから名前にはまだ
ジュニアがついています)、ヴォネガット特有の「盛り上がりそうになると
わざと水を差す」スタイルで書かれており、台本が上がった段階では
「これ、いったい、どうすんだよ?」という感じでしたが、阿部の演出&演技、
寺田さんの音楽があいまって、「ちょっといい話」の中でも抜きん出て
“音楽ライブ”感あふれる愉快な作品が誕生しました。
(話の中身は大変なことになっているんですけどね)

「ナイス、ナイス、ヴェリーナイス」
というあの歌が、頭にこびりついてしまったお客さんも
多かったのではないでしょうか。

公演当時、さんざんあちこちに書いていたことの繰り返しになりますが、
たまたま(ボコノン教的にいえば「定められていた通り」)、
この8/8,9,10という日付は、「ちょっといい話」シリーズの誕生日的な
日付でもありました。1998年の『異形の愛』が8/9,10の2日間の公演で、
まさしく「誕生日とその前夜祭」みたいな日付だったんですね。
記念すべき誕生日に、こういうチャレンジングな作品をできたことがまた
関係者的には嬉しかったりしました。
◆第20回公演

2008年 9/19(金)、20(土)、21(日)[RAFT]

『白の闇』
  演出・出演●阿部一徳
     音楽●寺田英一
      作●ジョゼ・サラマーゴ
  構成・脚色●高階經啓
   制作協力●LENZ

阿部まつり2008第3弾は、2公演連続の新作。共演の寺田英一さんは
『猫のゆりかご』のソニー・寺田と同一人物です。

     *     *     *

会場は、パーティースタイル公演がすっかり定着したスペースRAFT。
『白の闇』は、いままであちこちに書いてきたように、6年ほど前にいったん
取り組んだものの、構成作業があまりに難しくて放棄していた作品。
(スケジュール的に公演の目処がたたなかったせいもあるものの)

今回まとめ始めて、やはり構成脚色作業は困難を極めた。
できあがった第一稿を元に阿部が再構成を進めるのだがこの作業も
実に困難を極めたらしい。そして物語のどこにフォーカスするべきなのか、
音楽の寺田氏、阿部、ぼくの三人で議論を重ね模索を続ける。

結論として選んだのは、やはりハードな道。
うすっぺらい分かりやすさ、親切さに頼ることなく、
ぎりぎりまで刈り込んで純粋な語りの言葉そのもので勝負しよう。

そしてできあがったのがご覧いただいた公演。
「こんな演出でお客さんははたして最後までついてきてくれるのだろうか」
という事前の不安をよそに、いまだかつてないほど高い緊張感に包まれた
会場に、「こわくて逃げ出したくなる」くらいの臨場感を持って上演。

『白の闇』は、10年やってきた「ちょっといい話」の一つの達成!
と言ってもいい作品になりました。
このトピックの更新をずっとサボっていました。
間があいたので簡略版でキャッチアップしましょう。
まずは誤表記の修正を兼ねてvol.21公演から。

◆第21回公演

2008年 11/7(金)、8(土)、9(日)[RAFT]

『カレーソーセージをめぐるレーナの物語』
  演出・出演●阿部一徳
    ピアノ●高橋聡
      作●ウーヴェ・ティム
  構成・脚色●高階經啓
   制作協力●LENZ

会場は、ごぞんじ、スペースRAFT。
「阿部まつり2008」では4作品すべてでお世話になりました。
ありがとうございました!

そして「阿部まつり2008」をしめくくる第4弾に選ばれたのは、
“ちょっといい話 of ちょっといい話”とでも言えばいいか、
酸いも甘いもかみしめた人生経験豊かな人にこそ伝わる大人の作品というか、
非常に人気の高い作品、通称『カレーソーセージ』です。

共演にはピアニストの高橋聡氏をお迎えしてのリニューアル初演。
いままでさんざんお世話になってきたけど
使うのは初めてのRAFTさんのアップライトピアノ。
そして阿部自身も、いままでにやったことがないようなスタイルに挑戦し、
これまでとはまた別な新しい『カレーソーセージ』が誕生しました。

個人的な話ですが、公演後も1週間くらい気がつくと頭の中で
いくつかのピアノ曲が流れ出し、なんともシミジミしてしまうという
後を引く公演でありました。すばらしかったです。
ドイツあたりの大衆的なピアノバー的な雰囲気から、
孤高のピアニストのクラシカルなリサイタル的雰囲気まで、
たっぷりと味わっていただけたのではないでしょうか。

     *     *     *

さて、この公演、12/21に小田原で追加公演(?)が行われました。

izumi JEWERLY Shimano presents
『カレーソーセージをめぐるレーナの物語
 〜X'mas Special One Night Stand〜  』

2008年 12/21(日)@ Pizzeria MARZO dal Peschereccio(小田原)

小田原の超おいしいイタリア料理店の雰囲気ある空間をつかっての
『カレーソーセージ』。やたら風の強い冬の嵐のような日だったのを覚えています。
終演後もおいしい料理とお酒を楽しみながら、いろいろ感想をうかがうことができて
楽しい夜でした!

ピアノの高橋聡さんと、『サーカスの犬』の山本ヤマさんはご夫婦で、
この日は一家で小田原入り。終演後にお二人のプチライブも決行され、
盛りだくさんなクリスマススペシャルとなりました。
◆第22回公演

2009年 2/1(日)@MAREBITO

『サーカスの犬』
  演出・出演●阿部一徳
 トランペット●山本ヤマ
      作●リュドヴィック・ルーボディ
  構成・脚色●高階經啓
   制作協力●LENZ

この公演以降、「ちょっといい話」のベース会場になっていく
茅場町MAREBITOの最初の公演。アンティークに囲まれた古びた空間が
いい感じでパリのアパルトマンでのサロン・ライブ風に決まりました。

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