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【S.S.G特設会場】コミュの【Lush Life】

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暗い。

固い感触がする。

息苦しい。

全身が沈み込みそうに重い。まだもう少し、このままでいたい。


「………きろ…………………い………」
曖昧などこかから響く声。いつも通りの、耳障りな声。
(やめろ、今は動きたくない………)
答えない。既に意識はほとんど浮き上がっていたが、体は応えたがらない。
「………おいコール、起きろ。時間だ」
それでも続く執拗な催促。今日も現実は生真面目だ。

「…………」
寝ぼけたような素振りで、コールと呼ばれたトランクス一丁の男は固いマットレスからしぶしぶその筋肉質な上体を起こした。背中にはトライバル系の太陽のタトゥーが入っており、白い肌とのコントラストが美しい。
左手にはコンクリの壁、正面には壁に据え付けられた本棚、
そして右手にはいつも通りの中年の男。
体格は良く、浅黒く日焼けした肌に派手なワイシャツ、白いズボン。どう見ても堅気ではない雰囲気を醸し出す彼は、コールにスポーツドリンクのペットボトルを差し出した。どこかで見たようなアスリートが微笑みかけているラベルの写真。そんな気分ではない。
「1時間後だ。準備しろ」
無愛想にそれだけ言って、中年男はさっさと部屋から出て行った。

背後で鋼鉄の扉が鈍く軋んだ音をたてて閉じ、一人の時間が訪れる。
コールは短くため息をつくと、マッチで煙草に火を点けた。
天井に貼った女優のポスターはすっかりヤニで汚れている。
彼は鉄格子の付いた右手の窓からのぞく入道雲から、3年目の夏の到来を
見て取った。
「………暑いな」
コールは縮れた茶髪をくしゃくしゃとかきむしった。

######

「神よ、私は一生懸命あなたに届くよう努力してきた」
「神よ、私が出来たのはあなたの顔を見ることだけだ」
「時々、信じるというのはあまりに難しい」
「しかし神よ、それは理由あってのことでしょう?」
一人の黒人が、人気のない落書きだらけの公衆便所の個室の中で呟く。
そこは彼の懺悔室であり、名状しがたい苦しみを水に流してくれそうな
気がする聖域だった。もっとも、そんなものは最初からなく、ありもしないことに
言い訳を塗り重ねて物語をつくっているだけかもしれないのだが。

Why do we suffer?
Why do we suffer?

######

「ターゲットはこいつだ」
移動の車中で渡された資料の写真は珍しく、女のものだった。
「コニー・マヨルカ、26歳、会社員。いつも通り………」
「わかってるよ」
中年男の言葉を遮って、コールは深く息を吐いた。
(まったく、何というか…………いや、結局はこうなっただろうな)
彼は助手席の窓から流れる景色をぼんやり眺め、再び、マヨルカとかいう女の
写真に目を落とした。ブランドもののスーツに長い黒髪、大きめのサングラス。
いかにもと言えばいかにもな女だ。

######

公衆便所を出て、黒人の男、アーノルド・パーマーは黒いキャップをかぶり直し、その上からフードをかぶってゆっくりと通りへ歩き出す。
新品のナイキのスニーカーで足取りも軽い。
腰には銃、ポケットにはナイフ。準備もバッチリだ。

自分が育ってきた通り。一番最初に教えられたのは競争の原理。
いつも通りだ。こうやって生きてきた。迷いはない。ただ少し虚しいだけだ。
退屈なのだ。先があるわけでもなく、上を望めるわけでもない暮らしが。
それでいて変えようとする意思はない。どうせ競争は変わらないさ。
彼は

Life is parallel to Hell but I must maintain
and be prosperous, though we live dangerous

(………さて、今日も『仕事』だ。おもしろいことねぇかな……)
警官がいないのを確認してから、吸っていたマリファナのジョイントを道ばたの
排水溝に捨てると、パーマーは標的を探し始めた。

コメント(5)

(まったく………毎日毎日!)
コニー・マヨルカは苛立たしげにハイヒールで歩道を打ち鳴らしていく。
艶やかな長い黒髪を後ろにまとめ、パンツスーツをかっこよく着こなす
その様子はまさに「キャリア・ウーマン」と呼ぶにふさわしい。

しかし彼女自身、その称号を望んだことは一度もなかったし、むしろ
中身は夢見がちな乙女気分である。マンガやアニメを愛し、裕福な実家には
それらのための書庫があるほどだ。

ずばり環境が、彼女を「キャリア・ウーマン」たらしめている。
物わかりの悪い男性社員、妙に楽観的な上司、週末の予定にしか興味のない
女性社員。正直、やってられない。
(今日こそ、今日こそやめてやる、こんな会社!)
そう思い続けて、しかし気づけば弱冠26歳にして重要なプロジェクトを任され、
何故か役員たちの信用も厚く「君に辞めてもらっては困るんだ!」と言われ続けて
ダラダラここまで来てしまった。ようやくプロジェクトは終わったが、今度は
部長クラスへの昇進の話が来ている。どう考えてもおかしい。

そんな彼女は今、自分の中で決めた「最後の仕事」に向かっていた。

There's something in your heart
and it's in your eyes
It's the fire, inside you
Let it burn

######

中年男ことマグ・ライトは横に座るコールと初めて会った時、可哀想な奴だと
思った。銃弾を食らっても、斬りつけられても死ねない男。
どういう仕組みかはわからないが普通の人間である彼からしてみれば、
それは道理の外で生きる哀れな運命でしかなかった。
(もっとも……哀れなのは俺も似たようなもんか)
自嘲気味に小さく口元を歪め、彼は車を進めていく。

ライトの商売は古典的な呼び方をするなら、人攫い、人身売買、といった
ところである。因果な商売だが、身に染みつけばそれが一番居心地がいい。
そうやって30年ちかくやってきた。そして今日もやっている。
多分死ぬまでやっているだろう。あくまで自分の金のためだ。そのためなら
他人の不幸は仕方ない。

(それにしても今回の依頼は変わってる。『スタンド使い』なんて人種が
いるなんてな。兵隊かモルモットか知らんが、そういう人間を金払ってまで
集めようとしてる………まるで漫画みたいに荒唐無稽な話だ。しかし……)
彼は横で写真を眺めるコールをちらりと見る。
傍目から見れば、その辺にいそうな普通の若者だろう。
だが事実、彼は死ななかった。自分の目で確認済みだ。
(目の前にいるからには事実だろう。………それにしても依頼人が顔を見せないのは………いや、いい。金が入るならこれは仕事だ)
ライトは姿勢を正すと、目的地へとアクセルを踏み込んだ。

######

車はミッドタウンとダウンタウンの中間にある大通りで止まった。
「情報によれば、その女はあと5分ほどでここを通る。人通りは少ないが白昼堂々だ、
警戒しろよ」
「ああ」
ライトの相変わらず無愛想な指示を受けてから、コールは車を降りて
そばにあった雑貨屋へと入る。窓から外を見ると、向かいの通りの路地では髭を伸ばしたユダヤ人が集まって立ち話をし、少し先の公園では黒人の男達がチェスに興じている。すぐそばではヒスパニックの若者達がたむろしている。
(日常。およそ予想通りに進んでいる風景。ともすれば、これから自分たちがすること
すら予定調和かもしれないな)
そんなことを思いながら、彼は適当な雑誌を手にとって読むふりを始めた。
(………あれでいいか)
パーマーは向こうからやってくる、スーツ姿の女を標的に決めた。
コツコツと石畳を鳴らし早足で進む女の背後を、彼は音もなく尾行していく。
やがて女は裏路地の入り口付近に差し掛かった。
そのタイミングを見計らって、彼は女の肩を叩いた。
「失礼」
「?」
女が振り返った刹那、片手で口元を押さえ、もう一方の腕で体を抱きかかえるとパーマーは一気に裏路地へと連れ込んだ。
突然のことに少しの間体が固まっていたが、すぐに事態を把握して悲鳴を
あげようとする。
「黙っててくれないか?財布と貴重品を出せ、今すぐにだ」
そう言って彼は腰に差していたコルトを女に突きつけた。
いつも通りの『仕事』。イージーだが、退屈だ。

######

(どうしてこんな目に遭わなきゃいけないの………!!!)
いきなり黒人に裏路地に連れ込まれたかと思うとあっという間に銃口が向けられ、助けも呼べない。たしかに非日常を求めてはいたけど、こんなドラマのクライムシーンみたいな展開は違う!
(もっとラブコメとかラブロマンスみたいなのを求めてたのに!!何で強盗なんかに
遭ってるの!?)
そんなことをマヨルカは思ったが、目の前の状況は変わらない。
「あ、あの………」
「こっちも女を射殺する趣味はないんだ。いいから金出しな、早く!」
交渉の余地もない。まさに絶体絶命。
(くそっ………こんな奴のせいでうまくいかないなんて………)
思えば会社に入る前から、今までうまくいった記憶はなかった。
自慢じゃないが、能力も、器量も、十分あった。それなのに最初はうまくいっても
あとからどんどん方向がそれていく。それさせるのはいつも他人だ。
これから先もずっと意に沿わない形で進む人生だなんて……
(夢がないッ!!)
彼女は怒りに震え、急に目の前の男が腹立たしくなってきた。
「いい加減に………………」
「……?」
「いい加減に、しろッ!!!!」
もう死んでもいい、せめてこのふざけた不運に一矢報いてやろう。そんな
気持ちで彼女は男に殴りかかった。

######

(おかしいな……そろそろ来てもいい頃なんだが………)
雑誌より歩道に目をやる時間の方が長くなってきた頃、コールは
いきなり店の右脇から黒人の男が吹っ飛んできたのを目撃した。
黒人は車道すれすれのところに倒れ、その頭の先をバスのタイヤが
かすめていく。彼はすかさず起き上がり、路地からやってくると思われる
相手に向けて手にしていた銃を構えた。
「おいおい、昼間っから………!」
ギャングの小競り合いかと思って見ていた彼は驚愕した。
黒人の視線の先から現れたのは、イカついラテン系でも、刺青だらけのチャイニーズでも、すかしたイタリアンでもなく、自分のターゲットであるコニー・マヨルカだったのだ。
「おいおいマジかよ………思った以上にタフだな!?」
思わずそう口走り、彼は雑貨店を飛び出した。
(……なんてこった。相手の男の正体はわからんが多分スタンド使いだろうな………
こりゃあ想定外だ)
彼が路上に出た時、予想通り、黒人の方もスタンドを発現させていた。
その姿はまるで黒い霧が仮面をかぶったようだった。

######

(なんだかよくわからねぇが………すごいことになってきたな)
スタンド使いではないライトだが、その悪党としての直感が、今の事態の奇妙さを理解させた。今はまだコールが参戦する様子はないが、すぐに三つどもえになるだろう。
(どうやらこれは……………チャンスらしい。黒人もスタンド使いとやらのようだしな。あいつら3人を戦わせて、バテたところで漁夫の利って寸法だ)
「ククク……」
彼は思わぬもうけの算段に、かみ殺したような笑みを浮かべた。

######

(この女、スタンド使いだったのか……でも何で最初からスタンドで追い払おうとしなかったんだ?)
パーマーは自身のスタンドを発現しつつ、相手の様子をうかがう。
女のスタンドは人型。白を基調にした体に水色のラインが入っている。
殴られた時、特に何も起こっていないため能力はまだ不明だ。
「あんた、スタンド使いだったんだな。誰が言ったか知らないが
『スタンド使い同士は引かれ会う』。おもしろい、これも何かの縁だ」
「え、あんた何言ってるのよ?縁?引かれ会う?何で強盗とそんな状況に
ならなきゃいけないのよ!」
女は相当苛立っており、すぐにでも殴りかからん剣幕である。
(どうやらついさっき、目覚めたみたいだな。ますますおもしろい……!)
「まあいい、すぐわかるだろう。スタンドは力だ、運命を変えられるほどのな。
そして運命は交差したんだ」
そういうと彼はおもむろに、女との距離を詰め始めた。
「退屈してたんだ、楽しませてくれよ!」
(こいつが何を言ってるのかはよくわからない。でも、今自分の横にいるこれが
何なのか、名前も、その能力も、どう使えばいいのかもわかる!)
この異常事態の中、奇妙なことだが、マヨルカは冷静だった。
迫り来る黒人の言葉は理解不能だが、何をすればいいのかは
「心」で理解した。彼女は相手の動きに集中する。仕掛けてくる様子はない。
「……このスタンド、『ラヴァーズ・コンチェルト』が全て教えてくれたわ。運命だかなんだか知らないけど………あんたを倒して先へ進めって!!!」
彼女のスタンドが何かを引っ張るような動作をする。
すると黒人とそのスタンドが思い切り彼女に「引き寄せ」られた。
「吹っ飛べぇぇぇぇ!!!」
『ラヴァーズ・コンチェルト』の拳が男めがけて唸りを上げた。

######

パーマーは引っ張られながら、自分が先ほど殴られた右の胸元あたりに
相手スタンドの水色のラインが繋がっているのを見て取った。
(切り離せるか?)
しかし拳は目前だ。もし切れなければそのままノックアウトだ。
迷っている暇はない。
「それなら……『インスペクター・デック』!」
彼のスタンドが、拳が到達する瞬間に本体との間へ割り込む。
そしてその黒い霧が、『ラヴァーズ・コンチェルト』の拳を飲み込んだ。

######

状況を見守っていたコールが動く。どんな能力かは知らないが、マヨルカは
黒人を引き寄せた。そしてそのパンチを、黒人のスタンドが自身の中へ
取り込んだように見える。
(よくわからねぇが………そろそろ行くべきかな)
彼は膠着した2人のところへと駆け寄っていく。
「ヘイお二人さん!あんたら何を………」
しかし彼のセリフは遮られる。先ほど放たれたはずの『ラヴァーズ・コンチェルト』の拳が、突然霧の中から現れ、彼の腹に直撃したのだ。たまらず路上に倒れ込むコール。
「え?え?なんで?なんでよ?!」
想定外の相手に拳がヒットし、マヨルカが動揺する。

「おっと部外者が邪魔するなよ」
そう言い放ったのは黒人の男。
「俺の『インスペクター・デック』の中に入ったら、行き先は俺の思うがままだ。それがわかったら………」
そう言いながら彼は拳銃を自身のスタンドに向け、そのまま4発ほど霧の中へ発砲した。
響き渡る銃声に、いつの間にか集まっていた野次馬が悲鳴を上げる。
しかし着弾したような音はない。
「おとなしくしてな。命まで取る気はねぇから、早いところ金を出せ」
彼の言うとおりなら、漂う霧のどこからでも彼は銃弾を放てる。
マヨルカは事情を理解したらしく、動きを止めた。
「ほら、お前もだ」
黒人は起き上がろうとしているコールに銃口を向けた。
しかし彼は構わず立ち上がり、黒人に向かい合った。
「それはゴメンだ。さっき言い損ねたが、俺はあんたら2人を攫っていかなきゃならない」
「なっ!?」
「いきなり何言ってんだお前は?俺の仕事の邪魔をするなよ」
彼の唐突な発言に、動揺するマヨルカと怪訝な表情を浮かべる黒人。
「だから、おとなしくしてくれ、って言ってるんだ。そうすれば痛い目には遭わないで済む」
「………何を言ってるかよくわからねぇが……イカレてるのか?この状況で。死にたいのか?」
「ああ、やれるんなら是非そうしてみて欲しいもんだ」

3人の間に、不穏な沈黙が訪れる。
再び状況を理解出来なくなった上、下手に動けばスタンドがガードするより
早く殺されかねないため動けないマヨルカ。
自分の絶対的有利な状況で、何故か自信満々で自分に迫る男の出現で
殺気立つパーマー。
死ぬことがなく、『仕事』の成功のためにどうやって2人を制圧しようか考えを巡らすコール。
そしてもうひとり、銃を見て散らばった野次馬達から更に少し離れた
車の陰から現在の状況を見ている男がいた。

######

(くそっ!!どういうつもりだコールの野郎!?てめぇは死なねぇから
いいだろうが、あの女は銃弾食らえば死ぬんだよ!何無茶してんだ!)
スタンドが見えないライトには、黒人が銃を抜いた時点で現状がかなりマズい
ものに感じられた。もっとも、それはかなり当たっているのだが。
苛立ちを抑えるように彼は歯を食いしばる。
(奴がうまくいくのを祈るか?でももししくじったらボーナスどころか元のもうけ自体がパーだぞ!コールに死んだふりさせて残り2人を戦わせるか?だがどっちも死んだらどうする?黒人に金を渡して女だけでも助けるか?いや、最終的には全員始末するかもしれねぇ………)
「畜生………こうなったら………!!」
ブツブツと彼は呟くと、手にしていたリボルバーの撃鉄を起こし
野次馬をかきわけて3人のいるところへ近づいていった。
「そこのニガーッ!!調子のってんじゃねぇぞ!!」
彼はパーマーに向かって発砲した。
「ばっ………!」
コールは即座にパーマーの前に身を躍らせた。放たれた弾丸は正面から
左胸を貫く。彼はその場でがっくりと崩れ落ちた。
(これでいい………あいつを撃ったら標的があの男にいく。そうすりゃ…!?)
心臓を射貫かれ、激痛が全身を襲い口に鉄の味がこみ上げる中で彼は
自分の行動のミスを悟った。

(何でこいつが俺をかばったんだ?……まあいい。これで正当防衛だ。ついでに人種差別もしてやがる。負い目はない)
「おい」
「あぁ!?」
目の前で倒れる男を無視し、パーマーはライトに声をかける。苛立ち、しかし
動揺はしていない彼の様子を少し疑問に思いつつ、パーマーは続ける。
「あんたが何か知らねぇが、俺に銃を向けたからには死んでもらうぞ」
「何をべらべらと!」
瞬間、ライトが引き金を引いた。

突然男が撃たれ、黒人と中年男がにらみ合う状況。マヨルカは怯えていた。
(なんで、なんでこんなことに巻き込まれてるのよ!くそっ………)
今自分にできること、それはせいぜい自分が殴った男を引き寄せて争いの場から引き離すくらいだ。逃げることも、争いを止めることも出来ない。
「ねぇあんた、大丈夫……なわけないよね。………何でこんなことに」
コールから返事はない。そのとき、彼女の背後で銃声が響き渡った。

「な……んで…だ………」
スタンドを持たないライトには、何故自分の撃った銃弾が消え、自分目掛けてそれが飛んできたのかは理解出来なかった。ただわかるのは、自分が死にゆくことだけだ。
(これは……ツケか?だとしたらもう少しツケといてくれてもいいだろ………いや、俺がその程度だったってことだな。スタンドなんてもんに関わったのが間違いだったのか?………それにしても依頼主は一体誰だったんだ…………)

路に倒れ込んだライトに興味をなくしたように、パーマーはマヨルカとコールへと目を向ける。と、少し離れた場所からパトカーのサイレンが聞こえてきた。どうやら野次馬の誰かが通報したらしい。
「……チッ。死体漁りは嫌いだが仕方ねぇ。おい女!」
自分をにらみつけるマヨルカに彼は呼びかける。
「次は、決着つけようや。どうせ『引かれ会う』だろうしよぉ……」
彼はライトのズボンから財布を抜き取ると、裏路地へと消えていった。

警察が到着し、マヨルカは事情聴取のためパトカーへ乗せられた。
取調室で、彼女は調書を書いている刑事に聞いた。
「あの……撃たれて倒れてた若い男の人って、どうなりました?」
刑事は怪訝そうに顔を上げ
「そんな奴はいませんでしたよ。勘違いじゃないですかね?」
と答えてまた調書に目を落とした。
(そんなはずはない………彼は一体何者なんだろうか?もしかしたらスタンドを得て………私の冒険は始まったのかも知れない)
この取り調べの後、彼女は「最後の仕事」、辞表の提出を行った。
「このスタンドが相手と繋がるというなら……私はそれを引き寄せる必要がある。もし彼もスタンド使いなら………『引かれ会う』、か)


「………ご苦労だったな」
「いやぁ、長かったですよ。散々痛い目に遭いましたし。……約束は守ってくださいよ?」
「もちろんだとも。君はこれで自由の身だ。どうせ死刑にしても意味ないしな」
「その通りです」
「………今後はどうするつもりだ?」
「まぁ………未定ですね。楽しくやりますよ、『ラッシュ・ライフ』と共にね」
「…………」

「あ、刑事さん」
コールは刑務所の門の前で見送る刑事の方を振り返る。
「……いや、何でもないです」

This is a game
I'm your specimen
You've got to let me know baby
So I can go, I'd have to fake it
I could not make it
You could not take it
人気のない落書きだらけの公衆便所。
その個室のひとつに籠もり、パーマーは「戦利品」の財布をチェックする。
およそ500ドル。上出来だ。
彼は短く、しかし丁寧に、信じてもいない神へ感謝を告げた。

便所を出ると、目の前に見覚えのある茶髪の男が立っていた。
路上に倒れていた時と違い、服装がこざっぱりしている。仕留めたはずだが………。
「………お前」
「『スタンド使いは引かれ会う』、だろ?」
「………」
警戒したパーマーが『インスペクター・デック』で周囲を覆う。
それに対し、男は悠然と霧の中へ向かってくる。
そして彼の背後に現れた深紅のスタンドが、拳を振るった。

「そんなことしても無駄……?!」
拳を振るった部分の霧が晴れている。
見ると霧の一部が、中心となっている仮面へと吸い込まれ、『戻って』いた。
動揺したパーマーはすぐに銃を抜こうとする。
しかし既に間合いに入っていた男に組み伏せられ、あっという間に
頭部に銃口が突きつけられた。

「いいスタンドだ。これほどの能力を持ってるのにこんなとこで燻らせとくのは惜しい」
「………何が望みだ」
訝しがるパーマーに、男は言い放つ。
「俺と一緒に、Lush Life(楽しい人生)を送らないか?」
「…………」
「あ……」
彼は何か肝心なことを忘れていたかのように宙を見上げ、ポンと膝を叩いた。
「そういえばまだ名乗ってなかったな。俺はコールだ」


Come on outside, today's gon' be the day we
Start livin in the new world

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