ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

【S.S.G特設会場】コミュの【もうかりまっか!】

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
子供たちが元気よく駆け回る姿を、その母親たちが見守りながら談笑している。
噴水の飛沫が日光を浴びてキラキラと輝きを放つ。
真昼の公園は、この町の平和の縮図だ。

公園の片隅の公衆トイレの前に、三匹の白い仔犬がちょこんと『お座り』をして待っている。
そのけなげで愛くるしい姿は子供たちがちょっかいを出してもおかしくなさそうなものだが、
誰の視界にも入っていないかのように皆素通りする。

ドジャァ〜〜

「ふぃ〜〜…」

トイレから出てきた男を、三匹の仔犬が尻尾を振って迎える。

「おう? モーカ! リー! マッカー!
 みんなよい子にして待っとったようやな!」

眉毛を剃り、肌は色黒傷だらけ、パンチパーマの目つきの悪い男。
その凶悪かつ巨大な顔を支える体もまた、巨人と見紛う程のサイズ。
その巨躯を、白いエナメルのスーツで包む。
スーツの内側に見える紫のド派手なシャツと金のネックレスが、より悪趣味を引き立てる。

そんな見るからにガラの悪い大男が、仔犬と戯れて笑顔を見せる。

「おうおう! ほんまかわいい奴らやで!
 ほな、仕事行きまっせ!」

男は公園のど真ん中を突っ切って、ドシンドシンと地面を揺らすように出口へ向かう。

子供たちは蜘蛛の子を散らすように一目散に逃げていった。



【もうかりまっか!】


「で…ですから、もう三日待って下さいよ! 頼みます!」

頭の禿げあがった中年の男が懇願する。
その相手は、先ほどのパンチパーマの大男。

「今払えんもんが、あと三日経ったらどうやって返せるようになるちゅーねん!」

腹に響くドスのきいた怒鳴り声が、ボロアパートの室内を揺るがす。
その声を聞くと、男の後に大人しくしていた三匹の白い仔犬たちが嬉しそうに尻尾を振った。

「そんな怒鳴らないで下さいよ…!
 み…三日後ですね、そりゃあもう固いレースがあるんです!
 それ見事に当てまして、金喰井さんにはしっかり返してみせます!」

呆れた男だ。
パチンコ、麻雀で膨らんだ借金を、競馬で返そうという。
この男は、ギャンブルで金がプラスになると本気で信じているのだ。
そんな人間を【金喰井 純(かねくらい じゅん)】は本気で軽蔑していた。

「ほんで山田はん…あんたそのレースに継ぎこむタネ銭はどっから引っ張りまんねや?」

「はぁ、その馬券、10万も買えれば借金全額返せます。
 ここに2万あるんで、これからパチンコ行って10万まで増やしてこようかと…」

「増やせるかい!」

関西にいたころはこれは『ツッコミ』と受け取られたが、
遠く離れたこの地では金喰井お得意のツッコミも『脅し』ととられかねない。
…が、ツッコまずにはいられなかった。

「あんたはパチンコで負けに負けて今の借金があるんでっせ!
 どうして今日に限ってその2万が10万にまで増やせる思とんねん! 頭おかしいやろ!
 それに、あんたが今月、僕に支払わなあかん金額はいくらや思ってますねや!?」

「…2万円です」

「分かってますやん!
 パチンコ行ってその2万なくなって僕への借金も減らないのと、
 僕への借金がちょっとでも減るんと、どっちが得やと思いますか!?」

「し…借金返済…」

「計算できてますやん!」

交渉は成立したようだ。
無理矢理ムシりとってやってもいいが、最近は金貸しに対する世間の風当たりも厳しく、
少しでも暴力的な行為をしてしまうとパクられてしまう。
個人相手のチンケな金貸し業でも、続けていくには国の法律は守らなければならない。

金喰井は二万円を山田から受け取ると、三匹の仔犬と共にボロアパートを後にした。


「あかんなぁアレは。人間ああなったら終わりや思うわ。
 リーもそう思わへん?」

仔犬の一匹に話かける。すると…

「思ウ思ウー、アレハアカンワー」

リーと呼ばれた一匹の仔犬が、明らかに人間の言葉で返事をしたのだ。
そしてモーカという別の仔犬も語りかける。

「デモ2万ハ返シテモロテ、ホンマヨカッタオモウデ」

「そらそうやわ。まぁ今日はええとしとこ」

「何君ラダケデ話シトンネン! ウチモ混ゼテヨー!」

「マッカー何言うとんねん。今みーんなで話しとったやないか」

人語を解す仔犬たちと戯れる大男。
しかし、その仔犬の姿は周囲の通行人には『見ることすらできない』…

「ほなこの2万頼むで」

金喰井はリーに2万円を近づけた。

「マカセトキー」

リーは鼻先に寄せられた万札をむしゃむしゃと食べていった…


【本体名:金喰井 純
 スタンド名:モーカ・リー・マッカー
 リーの能力:お金を食べる】

コメント(5)

今日はもう一件仕事の予定があった。
一ヵ月前に金を貸した田中という青年の、初回の返済日だ。
貸し付けた時の印象は気弱で真面目そうだったから、取り立てにも苦労することはないだろうと踏んでいたのだが…

ドンドンドン! ドンドンドン!
「田中はーーん! おるんやろー!?」

シィーーーン…

「なんでおらへんねん…」

ガチャ…ギィィィ

思わず手をかけたドアが開いてしまった。
中に入ってみるが、部屋中探しても誰もいる気配がない。

「出カケテルンカー?」
「ナンデ鍵モカケズニ出カケンネン。オカシイヤロー」

「借金から逃げたんとは違いそうやなぁ…
 あ、見てみぃ。携帯と財布が置いてあんで。」
金喰井が指差したテーブルの上には、黒い革財布と開きっぱなしの携帯電話が無造作に置かれている。

「純チャンドウ思ウ? タダゴトヤナイデコレー」

「この携帯、待ち受け画像が自分自身やで。ナルシストやったんかなぁ」

「考エラレヘン! キッショイワー」

「ミンナ何ノ話シトンネン! ウチモ仲間ニ入レテヤー」

「何言ウテンネンまっかー、ウチラハズット仲間ヤナイカイ」

「ソウヤデ、3匹揃ッテノ【もーか・りー・まっかー】ヤナイカ」

「ソヤッタナ…誤解シトッタワ…。ミンナ大好キヤー!」

『『『ワォ〜〜〜ン!!』』』


「…言うてる場合か!!」
突如始まった謎の寸劇は、金喰井の一喝で蹴りがつく。

「純チャン今ノつっこみ冴エトッタデー」

「やかましいわ! それよりモーカ、どうやねん?
 やってくれるか??」

「モウヤットルデ純チャン…
 コノ部屋カラハ…『儲ケ話』ノ匂イガシトル…
 ソレモ『危険ナ儲ケ話』ノ匂イヤ…
 …ソノ携帯カラ、プンプン匂ッテクルデー…』

モーカは鼻先をクンクンさせている。

「その匂い、辿ってみよか。モーカいけるかー?」

「分カルデ! ホナ行コカー!」

【モーカの能力:金の匂い、及び儲け話の匂いを嗅ぎわける】



*********


ここはどこだ…!?

暗い… 寒い… 狭い…

目の前には大きな大きなスクリーンが、
さっきからヤクザと仔犬を映してるだけだ…

それ以外は真っ暗で…

俺はどこに閉じ込められているんだ!?

だ…誰か助けてくれー!


*********



モーカの嗅ぎ分ける力で『危険な儲け話』の匂いを辿って行くこと30分…
一行は『音儲(おともうけ)弁護士事務所』と看板が掲げられた建物の前まで来ていた。

「コノ中ヤデ! サッキノ携帯ト同ジ『儲ケ話』ノ匂イヤ!」

金喰井は、この件は『拉致事件』かとも考えていた。
田中は攫われたのだと…しかし、田中の部屋は荒らされた形跡や、抵抗した痕跡などはなかった。
攫われた痕跡を犯人が消したとしたら、鍵が開けっぱなしなのはおかしい。
ただの拉致事件にしてはどこか奇妙なのだ。

そして辿りついた先は弁護士事務所。
謎は深まるばかりだが…

「お邪魔しまっせぇ!」

金喰井は堂々と正面から乗り込んでいった。
応接用のソファーに待たされること数分。

「どうも初めまして。私は弁護士の【音儲 屯(おともうけ たむろ)】と申します」

現れたのはピシッと上等なスーツを着こなした、エリート感漂う男だった。
今時珍しいピッチリ七三横分けがこれほど似合う男はそうはいまい。

金喰井も簡単に自己紹介をして名刺を渡す。
足元の三匹の仔犬たちもいささか緊張した面持ちだ。

「あはは、かわいいワンちゃんですねぇ。
 えー、貸金業の金喰井さん…ですね。 今回はどのようなご相談ですか?」

「……!」
一同に緊張が走った。

この男は、金喰井のスタンドが『視えている』…!
つまりこの音儲という弁護士も『スタンド使い』ということだ。

三匹にも金喰井同様の警戒が走る。
この男に、自分たちがスタンドであることをバレてはいけない…

「音儲先生は、『田中 ひろし』という青年をご存知でっか?」

「「「…!?」」」

単刀直入すぎるにも程があると、三匹は内心驚いた。
相手は『田中の行方不明』に関わりの深い『スタンド使い』であることは確実であり、
幸いなことにまだ金喰井が『スタンド使い』とはバレてないという有利な状況なのだ。
それをみすみす警戒させるような質問を…!?
三匹には金喰井が何を考えてるのか分からないが、とりあえず様子を見るしかない。

音儲は一瞬考えた後に返答した。
「田中…ひろしさんですか…?
 仕事柄たくさんの人にお会いするものですから、急に言われてもピンと来ないですが…」

音儲がその名を聞いた瞬間、僅かに目線を外したのを金喰井は見逃さなかった。
その目線の方向には2階への階段がある。

「いや、そらそうですわな。
 実は僕、その田中ゆう男に金貸しとったんですが、どうにも逃げられてしもたみたいで。
 そんで弁護士先生のところにご相談に。 これが借用書」

先の登り階段に顔を向けて、モーカが「クゥ〜〜ン」と鳴いた。
音儲は借用書を受け取ろうと手を伸ばす。。

「ああ、そういうことですか。
 そういうことでしたらまずは警察に届けられるのが…」

ド ガ ァ ァ !!

突然金喰井が音儲を思い切りぶん殴った。
その巨躯から繰り出される一撃で、音儲は壁まで吹っ飛ばされる。

「なんでいきなり『警察』やねん!
 債務者が逃げたんならまずは『保証人』、そいで『担保』やないかい!!

 確かに僕は普段『保証人』も『担保』もつけずに金貸ししとる…
 せやけどあんたはなんで、借用書も見る前からそのことを知っとったんや!

 納 得 い く 説 明 し て も ら え ま っ か !! 」


気を失ったであろう音儲に向かってビシッと吐き捨てる。
ズシンと響く低音に、モーカ、リー、マッカーは大喜びで跳び回る。

「こいつが田中を攫ったに違いないわ!
 で、田中はこいつに事情の一切を説明しとるようやで。
 モーカ! あの階段から匂いがするんやな!?
 急いで探しに行くでぇ!」

金喰井と三匹は階段を上って行った。


吹っ飛ばされていた音儲がよろよろと立ちあがる。
その背後から、青っぽい人影が現れる。

「ふ…ふふふ…咄嗟にスタンドでガードしてなかったら、完全に意識が飛ばされていたね…」

音儲は携帯を取り出して110番通報をする。

「け…警察ですか? 3丁目の音儲弁護士事務所ですが、突然やってきた強盗に襲われまして…
 ええ、ええ。そうです。今事務所の2階に行きました…思いっきり殴られました。
 とにかく早く来てください!」

現れた青い影は、人の形をしているものの明らかに人間ではない。
発光する数字の書かれたボタンが体中にびっしりとついていたり、
アンテナのようなものが肩から伸びていたりと、
どこか音儲の持つ携帯電話に似ているデザインだ。

「ふ…ふふふ… 彼がアレを見つけ出す前に、警察が間に合えばいいんだ…
 暴行で逮捕…慰謝料もたっぷり踏んだくってやる…
 それまで彼の『足止め』をするのは、君の役目だよ…【コーリング】…」

【本体名:音儲 屯
 スタンド名:コーリング】



「イキナリブン殴ッテ! 純チャンカッコヨカッタデ!」

「惚レルトコヤッタワ! 孕ムトコヤッタワー!」

「なんで僕が人殴ったらリーが孕むねん!」

「認知シタッテヨー! りーガカワイソウヤワー!」

「認知ッテ何ノ話シテンノ!? ウチモセナアカンノ!?」

「話聞イテナカッタンカイ!」

ふざけながらも2階に駆け上がる。
音儲が意識を取り戻す前に、あるいは立ち塞がる前に田中を救い出さねばならない!
2階は事務所になっていて、業務デスクと資料用書棚ばかりの部屋だった。
部屋の真ん中まで来て周囲を見渡すが、人が隠れられそうな場所はない。
そこへ…

ズズズズ…

「アレ…敵すたんどヤデ!」

現れたのは青っぽい人型スタンド。
どことなく携帯電話をイメージさせる。顔なんて液晶画面そのものだ。

「めーるモデキソウヤネ!
「言ウトル場合カ!

敵スタンドが襲いかかる。
その拳を、金喰井は難なくかわす。

「動きはすっトロいようやな!」
敵スタンドの方を振り向くと…

いない…!?

「純チャン危ナイデ!」

リーに後ろから突撃されて、よろめく金喰井。
「何すんね… リー!?」

振り向くとリーは、敵スタンドに捕えられていた。

「ジ…純チャン…コノすたんどハ…危険ヤァ…」

「リー!!」

敵スタンドはビリビリと電流を迸りながら、リーと共に姿を消してしまった。
突如背後から声が響く。

「まさかその三匹のワンちゃんもスタンドだったとはね…
 まぁ、戦闘向けには見えないが…」

階段から姿を現したのは、音儲 屯。

「おいおい、ピンピンしとるやないか… 思いっきり殴ったんやで?」

「不意打ちであのパワーはさすがに意識を失うところだったよ。
 だがギリギリのところで私のスタンド【コーリング】のガードが間に合った」

油断させての不意打ちも意味はなかったか。
確かに金喰井のスタンド【モーカ・リー・マッカー】にはさほどの攻撃力はない。
だからこそ、スタンドバトルに持ち込む前の、肉体による一撃だったのだが。

ニヤニヤとほくそ笑む音儲の背後に先程のスタンドが現れる。
リーはいない。

「リーをどこへやった!?」

「遠〜〜い場所へ連れていっちゃったよ。
 私の【コーリング】の瞬間移動能力で、ね」

「し…瞬間移動やと…!?」


「言っておくが、君を瞬間移動させるつもりはない。
 君はこの場で警察に逮捕されて、この私に訴えられるんだ。
 さっきはよくも殴ってくれたな……
 多額の慰謝料を請求してやる…!

 貴様から…金を…踏んだくれるだけ踏んだくってやる!

 貴様の家族も! 友人も! 貴様に関わるもの全てから金を!!

 骨も皮も残らぬほどにしゃぶりつくしてやるぞォォオ!!」


【コーリング】が突進して襲いかかってくる!!

「カァァネカネカネカネカネカネカネカネェェェエ!!」
ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴ!!

パワーもスピードもさほどではないにしても、生身の肉体でスタンドのラッシュを受けているのだ。

「ぐわぁッ!!」

「ふふ…うふふふ… ほらほら、金をよこせ金を!
 私に金をよこすんだよォォォオ!!」

またも【コーリング】が攻撃を仕掛けてくる。

金喰井はとっさにデスクの裏に回避をし距離をとった。
…しかし【コーリング】はいつの間にか、金喰井の背後に回っている!

「金だぁ! 金金ェ! うっふふひゃはははは!」

ドゴァ!
「ぐふぁ!」

吹っ飛ばされながら、金喰井は違和感を感じていた。
このスタンド、確かに気がつけば背後に回っていたり、リーを消したりと『瞬間移動』のようなことをしてはいる…が、
何かが違う。そんなに便利で万能なシロモノではない…。

仕方ない。アレをやるか…

「マッカー! 頼む!」
金喰井は自らのスタンドに声をかける。

「ヤッタルデェ!」
その返事は、音儲のすぐ足元から聞こえた。

「戦闘向ケヤナイト油断シタンカ? ソレトモ小サスギテ見逃シテタカ…
 トニカモカクニモ、金ガホシインヤロ…」

マッカーは口を大きく開き、音儲の顔面に向ける…

「クレタルデェェェ!!」

バババババババババババッッ!

マッカーの口から凄まじいスピードで発射されたのは、500円硬貨だった。

【マッカーの能力:リーが今まで食べた金を発射する】


「かっ金ェェ!? ガードしろ【コーリング】!」
硬貨の散弾からガードするために【コーリング】を呼び戻す音儲。

ババババババッ!

「カネカネカネェ!!
 うふふひゃははは! 大儲けだ! 全部私のものだぁ!!」
硬貨を次々と拳で落としながらも、その金にはしゃぐ音儲。



音儲が完全に金に気を取られているうちに、金喰井は隠れさせていたモーカを呼び戻す。

「モーカ…、今朝リーが食べた『2万円』の匂いは分かるか…?」

「マダまっかーガ発射シテナケレバ…イケル思ウデ…クンクン…」
嗅覚に集中するモーカ。

「…!? …コ…コレハドウイウコトヤ!?」
「…アソコノですくノ電話機カラ匂ッテキテルデ!
 りーハアソコニオル!?」

それを聞いた金喰井はニヤリと笑う。
「…やっぱりそういうことやったか…。
 あの電話機は『内線3番』と書いてあるな…」

金喰井はすぐ手元にあった事務の電話機で内線の3番を呼び出す。
すると…

トゥルルルルル!
ポンッ!

呼び出し音とともに、電話からリーが姿を現した。

「プッハァ! ヤット出レタデー!」
「りー! 無事ヤッタンカイ!」

「…リーが無事なのは分かっとった…
 スタンドが傷つけられたら僕にもダメージくるからな。
 かき消えた感じもせえへんから、射程範囲内にいるってことも。

 奴のスタンドの能力は、『電話の中に人を閉じ込めること』や。
 別の電話とつながれば解放されるようやな。

 そして、よう観察してれば分かる…
 瞬間移動は『電話から電話へ』でないとあかんねや…!」

よく見ていると、【コーリング】は足元から紐状になって音儲のポケットへと伸びている。
いや、そこから伸びているというべきか。
奴のスタンドはその時出ている電話機からは離れられないのだ。

金喰井は周囲にある事務用電話を全部取っ払い、自分の携帯電話も放り投げた。

「マッカーもうええ! 戻ってこい!」

「ナンデヤネン!」
と言いながらもすぐに戻ってくる。

「待てェ! もっと金を撃ってこいよォ!!」
【コーリング】をけしかけようとするが…

「あ…あれ…? 『電話』が…!?」
金喰井たちの元へスタンドを飛ばせない。

金喰井の近くにはもう、【コーリング】を飛ばせる電話が無いのだ。


「あの小銭も後でリーに食わせなあかんな…

 さて音儲先生、あんたのスタンドの謎は解かしてもろたで。
 田中の他にも、色んな人間を拉致って電話の中に閉じ込めて、
 いろいろ悪い金儲けばっかしとったんちゃうか!?」


「か…金儲けして何が悪い!?
 社会は、法律は働いて金を得ることを奨励している!
 人から金を奪わなければ奪われてしまうのが、この社会のルールだ!

 裁判で私の犯した行為を立証できなければ、私は罪にはならない!
 確かに私は人を騙して、不当に金を得させてそれを奪い、証拠隠滅のために閉じ込め隠した!
 しかし誰も私の不法行為を! 犯罪を立証できはしない!
 無論貴様もだァァ!!」

【コーリング】を手元の携帯から発現させたまま、本体自ら駆け寄ってくる音儲。
金喰井のスタンドにさほどの攻撃力がないからと、力まかせに突っ込んでくる。

迎え撃つ金喰井は右腕を高く掲げる。
その右腕に、【モーカ・リー・マッカー】がしがみついた。

「スタンド使いがスタンドを利用して、弱い者から金を得るんは『邪悪』やでェ…
 そんな邪悪で果たしてほんまに…」

3匹がガッチリと纏わりついたその右腕を振りかざして…

「 も う か り ま っ か ァ ァ ァ ア !? 」

ド ッ ゴ ォ ォ ン !!

金喰井本人のパワーで【コーリング】をぶん殴った。
スタンド共々吹っ飛ばされた音儲は…完全に意識を失った。

金喰井は音儲の持っていた青い携帯を真っ二つにへし折る。

「『悪銭身に付かず』…
 スタンドを使って悪さして金儲けしたらあかんで。
 何のために金儲けをしとるのかを、人間は忘れたらあかんのや…」

モーカ、リー、マッカーがフラフラと腕から離れる。
3匹とも激しく頭突きをした後のように頭を抑えていたが、
500円硬貨をリーが食べまくることですぐに皆回復していった。

「音儲先生よ… 僕にとっての金はなぁ、こいつらの餌なんや。
 せやから僕は、日銭を稼げるこの仕事を始め、
 より仕事ができるこの都会へ来たんや。
 愛する家族のために頑張るから、僕はウハウハもうけさせてもらっとるわ」

【音儲 屯
 ・・・・・・・再起不能 】



警察がくる前に、音儲が拉致監禁していた被害者たち電話から解放した。
2階に隠されていたたくさんの携帯電話から、その人数は25人。
彼らが音儲の悪事を立証することで音儲は改めて逮捕となった。

田中の部屋にあった携帯電話から、田中ひろしを解放することもできた。
彼は真面目な男で、家庭の事情でやむなく借金したもののその全額を一気に返してくれた。

「謝礼金もつけてくれたで。これほんまウハウハやでー」

「ウハウハカー! ソラエエコトヤノー」

「ウチラモ純チャンノコト愛シトルデー!」

「ありがとうなぁリー、ほんま愛する家族やでお前らは!」

「何何ー? 誰ガ誰ヲ愛シトンノ!?」

「「「 聞いてなかったんかい! 」」」


【もうかりまっか! 完】
『もうかりまっか!』書かせていただきましたはるやです。
感想とか投票とかたいへん嬉しかったです。ありがとうございました。

最初の段階では『追う借金取りvs逃げる負債者』だったんですが、
話を組み立てようとすると案外難しく、結果『借金取りvs悪徳詐欺弁護士』になりました。
機会があれば逃げる負債者も書いてみたいです。

よくリレー本編で失敗する時って「何か変わったことをしよう」とするとヒドいことになることが多く、
じゃあもう今回は変わったことはやめて、書きやすいものを伸び伸びと書くことに重点を置いてました。
あと『初心にかえる』って意味で、処女作『タゴサクが来るッ』を見返したりとか。

金喰井 純、音儲 屯なんかのネーミングは、2秒でできましたw
『純』と『屯』が似てるのに気付いたのはりのりのさんの感想で。ひどい話ですね。

自分で書きながら、仔犬3匹は可愛くて仕方がなかったです。

バトルに緊迫感がないという感想は大変参考になりました。
勝ったらこうなる、負けたらこうなる、絶対勝たなきゃいけないって状況が弱かったですねー気付かなかった。
次回はそこに気をつけて、さらに小動物に頼らず魅力的なキャラを書きたいと思います。


ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

【S.S.G特設会場】 更新情報

【S.S.G特設会場】のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング