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mixi小説:白球のゆくえコミュの第8話

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「うわっ!」

タイミングが合わず大振りした土井は、バッターボックス内で態勢を崩し、ドテっと尻餅をついた。


「ナイスボールや!」

武司は大きな声を出し、僕へボールを返球した。


「今の球はエグイわぁ。
真っ直ぐかと思ったら、ボールがビタ!って止まるんやもん」


いつもの気持ち悪い笑いが土井の表情には無い。

それくらいの威力がこの球にはあるらしい。



この前、土井と武司に連れてかれたバッティングセンターの帰り際、武司にこう薦められた。

「チェンジアップを投げてみないか?」


これまで僕はストレートとカーブの2球種を投げていた。

この2種類の球はそれぞれ全く違う球筋を描くので、少しいいバッターになるといとも簡単に見分けられてしまい、通用しなかった。

どうしてもコースによる揺さぶりしか掛けられず、ちょっとでも甘く入るとたちまち打球は外野へ打ち返されてしまっていた。


しかし、真っ直ぐと同じ軌道でスピードの違うこのボールならばコースと緩急の2次元の揺さぶりを掛けることができ、少々甘いコースでもバッターのタイミングを外せる。


非常に有効な球種だ。


「お前は真っ直ぐもそこまで速くないし、カーブだけやと組み立てが大変やったんや。
でもこのチェンジアップがあれば、投球の幅が格段に広がるぞ」


キャッチャーとしてもバッターとしても素晴らしい選手である武司の言うことなら間違いないだろう。


「ま、こんなに早々とモノにするとは思わんかったけどな」

そう言って武司は僕の左肩をポンと叩いた。


「これが決まれば、光陽打線も少しは黙らせられるやろう。リベンジ出来るんちゃうか?」

気持ち悪い笑いを取り戻した土井が僕に言った。



この前の電話の最後、キャプテンの康之が言った高校の名前は、1ヶ月半前の夏の大会の準決勝でサヨナラ負けを喫した相手、光陽学園だった。

毎年強力打線を誇るあの強豪校と、秋の大会でも顔を合わせることになったのだ。


僕はそれを聞いた瞬間、頭がパニクってしまった。

しかし、時間が経つにつれ、絶対にヤリ返してやろうという気になっていた。



順当にお互いが初戦を勝てばの話なのだが…。





第9話へ続く




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