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ボブの華麗なる日々コミュのアリとキリギリスとボブ

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昔々、虫達の世界に、真面目で勤勉なアリがいました。

真面目で勤勉なアリは、毎日せっせとご飯を巣へと運びます。



















アリはワーキングプアでした。


「働けど働けど、我が暮らし楽にならず、じつと手を見る。」


アリは石川啄木信者でした。


それでも毎日せっせと働くアリ。



そんなアリを馬鹿にしたように見つめるキリギリス。

キリギリスは言いました。

「君、そんなにあくせく働いてどうしようっていうんだい?
今は春!この素晴らしい季節を楽しもうとは思わないのかい?」


花見に、歓迎会、送別会、新歓コンパに同窓会。

キリギリスの肝臓に休むヒマはありません。


「君こそ今のうちから餌を蓄えておかないで休んでばっかりいると、冬になった時に後悔するよ?




そして肝臓は休めないと。」


「僕の肝臓は鋼鉄製さ!」

キリギリスは嘘吹きます。

「おっと、もうこんな時間だ。今日も飲みがあるから、君に構っている時間なんてないんだ。
じゃ、そゆことで〜。」


キリギリスはスキップを踏みながら去っていきました。


今日は東京へ行っていた友人が6年ぶりに帰ってくるのです。

中学時代から、楽しい事も悲しい事も共有してきた友人。
時にはぶつかる事もあったけど、拳で語り合った大切な友人。

同じ女性を好きになった事もありました。
自分の感情を押し殺し、その女性とうまくいくようお膳立てしてくれた友人。
「お前が幸せなら、俺はそれでいい。」
そう言って笑う友人の顔を忘れた事はありません。
それがうまくいかなかった時も黙って胸をかしてくれました。

高校を卒業した後、突然東京へ行く、と言った友人。
どんなに反対しても頑として譲らなかった友人。
「いつかビッグになるんだ。」
周囲の反対を余所に飛び出したあの日、プラットホームには無言のまま俯く二人がいました。

「…俺なぁ…、自分の可能性を試したいんだ…。その為にはこんな田舎じゃだめなんだ…。都会に出て、自分の力で歩きたいんだ…。お前なら、わかってくれるだろ…?」

キリギリスにはわかりません。

東京という街に友人が変えられてしまうのではないか、自分の事なんて忘れられてしまうんじゃないか。
いくな、いかないでくれ!
その言葉が口をついて出てきそうになります。



でもキリギリスに彼を止める事など出来ませんでした。



いや、キリギリスでなくとも、誰も彼を止める事など出来なかったでしょう。

それほど彼の目は純粋に前だけを見詰めていました。





「行ってこいよ…。」



キリギリスはそれだけ言うのがやっとでした。

これ以上は涙が邪魔をして上手く喋れません。



「三番線のホームに東京行きの電車が参ります。白線の内側に下がってお待ち下さい。」




別れを告げるアナウンスが流れ、



電車が到着すると友人は乗り込みこう言いました。

「どんなに離れていても俺達の友情は変わらない!俺は絶対にお前の事を忘れない!だからお前も俺の事を忘れないでくれ!」

キリギリスはうんうんと頷くだけです。

新たな門出に涙声で喋る訳にはいきません。




事務的な機械音をあげて閉まるドア。

非情なまでにダイヤに沿って走り出す電車。

追いかけるキリギリス。

中にいる友人に声は届かないかもしれない、そんな事を考えている余裕はありません。

キリギリスは夢中で叫んでいました。




















「実は俺、今度お前のとーちゃんになるんだ!」






友人の母の再婚相手はキリギリスだったのです。




その場に崩れ落ち泣くキリギリス。




プラットホームには「ギーッチョン、ギーッチョン」という鳴き声がいつまでもこだましていました。







その友人に久しぶりに会えるのです。

さらに『弟達』というビックサプライズも用意してあります。

今夜は飲まない訳にはいきません。







キリギリスを見送ったアリは、
「やれやれだぜ、こりゃ今夜は血の雨が降るな…。」

と、溜息をつき、また仕事に戻るのでした。





その日夜遅くの事でした。

アリが眠りについていると、玄関を

ドンドン、ドンドン

と誰かが叩きます。


「はは〜ん、さてはキリギリスの奴め、友人に追い出されたな。
しかたない、入れてやるとするか。」

昼の話を思い出したアリは、眠い目をこすりながら、玄関を開けました。


しかし、そこには漆黒の闇が広がるばかりで人影など見えません。

「おかしいな…。確かに玄関を叩く音がしたと思ったんだけど…。


…まさか、オバケ…?」

少し恐怖を覚えたアリが扉を閉めようとした時でした。












………何か………いる………?


何かが確かに、開いた扉の向こうにいます。

アリは恐る恐る、目をこらしてみました。























全裸のボブがいました。


生れつき肌の色が黒いボブは、一糸纏わぬ姿で闇と同化していたのでした。



びっくり仰天したアリは急いで扉を閉めました。


「なんだあいつは!何故あんなに黒いんだ!何故全裸なんだ!何故胸と股間を手で隠しているんだ!」





ボブはセクシーポーズをキメていました。


アリはパニックです。


すると、扉の向こうからボブの声が聞こえてきました。


「ボブはいそっぷのようせい。あなたにでんごんをつたえにまいりました。

あなたのおともだち、きりぎりすさんがたいへんですよ。
さあ、はやくいっておあげなさい。」


「こんな夜中に、見ず知らずの全裸のおっさんにそんな事言われても信じられるかっ!」

「ボブはまだにじゅうだいですっ!」


ボブはOLみたいに怒りました。


「とにかく、きりぎりすさんがたいへんなんです!はやくしないと、いっしょうこうかいしますよっ!」

ボブは玄関先でギャーギャーわめき散らします。

「わかったよっ!行けばいいんだろ、行けば!」


しぶしぶ家を出たアリは、キリギリスの家へと向かいます。
全裸のボブと共に。









アリがキリギリスの家に着いた時、中では親子(?)喧嘩の真っ最中でした。


「テメー一生友達だって言ったじゃねーか!なんで友達じゃなくて、親父になってんだよ!意味わかんねーよ!」

「そんな事言うもんじゃない。お互いが魅かれあった結果じゃないか。お前にだってそんな経験あるだろう?息子よ。」

「息子って言うな!」


それはもう凄まじい喧嘩です。


「こりゃ凄い喧嘩だ。このままじゃマズイぞ。でも一体どうしたら…。」

アリが途方に暮れていた時です。

「ボブにまかせてください。」

そう言うとボブはおもむろに呪文を唱えだしました。

「ボブはいそっぷのようせい。いっしょうにいちどだけ、いのちとひきかえにまほうをつかうことができるんです!

ボブはこれでさよならだけど、ありさん、きりぎりすさん、どくしゃのみんな、ボブのことわすれないでください。




それーっ!『みんなすてきなひとになる』まほうっ!」


まばゆい光を放つボブ。

アリも、喧嘩中のキリギリスも光に包まれていきます。






光がおさまり、ゆっくりと目を開けたアリは、すぐにボブを捜しましたが、ボブのいた場所には強い光によるコゲ跡しかありませんでした。



ありがとう、ボブのおかげでみんななかなおりしたよ。


そう呟いたアリは自分も変わっている事に気付きました。





























みんなボブになっていました。


おしまい。

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