ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

【執筆中】オリ小説【下書き】コミュのインセクト 第1話「憂鬱な休日」

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2010年、日本、東京。

 4月のとある日曜日。
 少し遅めに起き、軽くシャワーを浴びた後、カズヤは出かけるための身支度にかかった。テレビではニュース番組のレポーターが何かを早口でしゃべっているが、耳障りだったので音量を最小ににしぼる。
 今日は銃器取扱免許甲種に義務付けられた、年4回の講習の日であった。

 今まで狩猟用の銃器のみであった民間人の銃器の所持・使用が、2000年から狩猟免許とは別に施行された「銃器取扱法」により、すべての銃器が取扱可能となり、免許の試験の簡略化もあいまって「銃」は国内に広く復旧し始めた。
免許には大きく分けて3ランクあり、
・拳銃類・セミオートの散弾銃やライフルが「丙種」
・さらに口径20ミリ以下のフルオートが取扱可能な「乙種」
・口径20ミリ以上とグレネード弾などすべての銃器が取り扱える最上級である「甲種」
がある。

 彼は最上級である甲種所持であるが、一般的に甲種を所持しているのは銃器マニアか傭兵くらいである。彼はどちらかというと後者よりであった。これら取扱免許には各種法律・実射の試験があるのだが、試験が免除される条件がある。‘2年間以上の自衛隊経験’を持つもので退官時に希望する者、であった。
 18歳から入隊し20歳で退官するまで自衛隊で過ごした彼は、「せっかくだから」と希望したものの、この免許、特に甲種の維持条件の一つである年4回の講習(学科と射撃テスト)に正直うんざりしていた。春の気持ちいい日差しの中、眠気に耐えながらの学科と、室内で轟音と硝煙にまみれながら受ける射撃テストは、なんだか時間がもったいない気がしてならない。
 できることなら公園で昼寝していたいが、甲種免許所持の自衛隊上がりなら最悪食いっぱぐれることは無く、どこの警備会社でも欲しがるのだ。彼はただの会社員であったが、一緒にやめて行った同期たちにはこちらの道へ進むものもちらほらいた。失効するにはちょっともったいない資格だった。

 カズヤは部屋のタンスから愛用の拳銃であるH&K社のUSPコンパクトを取り出した。フルサイズのUSPに比べザイズの小さいこの銃は、彼が退職してすぐの頃、ぶらりと入ったガンショップでついでだからと買った物である。握りやすさからすぐにコレに決めた。
 彼はコレをおもむろに手提げバックの中に詰めた。ホルスターに入れて脇や腰にぶら下げることも法律で許可はされているが、彼は重いので嫌いだった。もっとも、マニアたちはコレがしたくて免許を取るのだが。

 それと、もうひとつ。大きめな布製のライフルケースを担ぐと、彼は玄関に向かう。
 途中、テレビを消し忘れていたことに気づき居室に戻ると、なにやらひっくり返った車の前でレポーターが興奮気味に現場中継していた。結局ミュートにしていたまま見なかったな、と思いながら電源を切ると、彼は都内の銃器管理局へと向かうのだった。



 外に出て暖かい日差しを浴びる。太陽はまだ昇りかけで、まさしくぽかぽか陽気と呼ばれるものだ。ゆっくり駅に近づくにつれ日曜日らしく人通りが増え・・・
増えて、来ない。人はまばらで、なんだか活気が無い。まるで早朝のような静かさが町に漂っていた。
 いつも使う改札口まで近づいたとき、たまに見かける看板が目に入る。
「‘緊急事態’につき運転を見合わせています」
「復旧予定時刻 未定」
電車は止まっていた。彼の使う路線は風や雪に弱く、また混雑で遅れることもある路線であるが、どうにも気にかかる点があった。
「緊急・・・事態?」
彼は口に出してみて確認する。「緊急事態」と書かれている部分は駅員が手書きで原因を書き込むスペースであるのだが、普段は「強風のため」「機材故障」なのに今日に限っては「緊急事態」なのだ。こんな表記は今まで見たこと無い。あいまいすぎる。

 改札周辺に、復旧を待っていると思われる人が2人いる。普通は復旧するまでの間、人がごった返していて身動きが取れないのだが、今日は皆家に帰ったというのだろうか?せっかちな東京人のことを考えると、ちょっと不思議な感じである。
 駅員は改札横の窓口の中で落ち着き無くそわそわしている。駅員に話しかけようと歩き始めたとき、遠くからスピーカーでしゃべる男の声が耳に入る。車だろうか?だんだん近づいてくる。選挙の時期ではないはずだし、選挙だとしてもなんだか声が低く、印象は良くない。窓口の前まで来て話しかけようとしたとき、スピーカーの男の声がはっきり聞こえ始めた。
「・・・は、鍵を閉め、家の・・・・・・外出は控えてください。繰り返します・・・」
もう一度耳を澄ます。
「こちらは警察署です。都内にて危険な昆虫が発生しております。住民の皆さんは鍵を閉め、家の中で静かにし、無用な外出は控えてください。繰り返します・・・」
「昆虫・・・?虫??」
思わず口に出してしまった所に、駅員が話しかけてきた。
「お客さん、ニュース見てないの?なんかでかい昆虫が都内で出て大変らしいですよ。何でも人に襲いかかるとか・・・電車はしばらく動かないからお客さんも早く帰ったほうが・・・ひぃっ!?」
道路でバタバタバタ、という騒音が聞こえたと直後に「ドスン」と大きな音がした。駅員が後ずさりする。改札から駅の入り口は近く、すぐ横を通る幹線道路が見えるのだが、この展開は、モンスター映画だと振り向けば何かがいる展開だ。
「ぎゃぁ!ああああああああっ!ぐぅっ」
駅の入り口近くにはいらいらしながら携帯電話をいじる男がいたはずだ。今はそのあたりから何かをかじる音が聞こえる。嫌な予感がするが振り返るしかない。
「・・・まじか・・・。」
そっと振り返るとそこにはモンスター映画のような光景が広がっていた。こげ茶色で、ぬらぬら光っていて・・・でかい。全長はゆうに10メートルは超えている。長い触角をゆらゆらさせる様子は、まさしく‘ヤツ’そのものだった。
「・・・ゴキブリ??」
そいつの口から携帯を握り締めた腕が生えていた。この状況は・・・どう見てもヤバイ・・・。
「うわぁ・・・」
カズヤの声に反応し、そのでかいゴキブリの動きが一瞬止まった。口元からポトリと、肉片と血ダマリのなかに腕が落ちる。
こっちを見ている。触角をぴくぴくと動かしながら。
 カズヤがゆっくりとかばんの中に手を入れるのと同時に、ゴキブリは狩の体勢に入っていた。かばんからUSPを出すと同時にスライドを引いて初弾をチャンバーに送り込む。同時に引き金を引いた。「パン」という小気味のいい音と同時にゴキブリが突っ込んで来るのがマズルファイアの奥に見える。間違いなく頭部に叩き込んだはずだった。15メートル先にいたゴキブリはすでにその距離を半分にまで詰めている。
 とにかく撃つしかなかった。正直さっきの男のようなハメになるのだけは避けたい。カズヤに残された道はたて続けに引き金を引くことだけだった。2発目、3発目は速射だが頭部に命中している。ゴキブリが目の前まで来たとき、死を覚悟しながら4発目をを叩き込んだ。床が欠けるのが見えた。頭部を、外した・・・。
 「もう終わりかよ、俺」心の中でぼやくと同時に、学生時代の記憶がよみがえる。「・・・コレがいわゆる走馬灯ってやつか・・・。」
 だがカズヤはすぐに現実世界に戻される。ゴキブリはカズヤをそれ、横の壁に激突した。ぎちぎちと気色の悪い音を立てながらもがいている。よく見ると左の触覚がなくなっている。4発目は触覚を削り落とし、ゴキブリの動きを乱れさせていた。
 カズヤは床に投げ捨てていたライフルケースを手に取りすばやく後方に回った。ゴキブリは頭をぶつけた衝撃と頭、触覚を失ったせいか動きがノロい。移動しながらすばやくチャックを開け、無理やりライフルを引き出すと、弾倉を装填する。
‘64式小銃’かつては国の誇りとして自衛隊に採用されていたが、現在は退役の進む純国産のアサルトライフル。「傑作銃」とも「欠陥銃」とも呼ばれる風変わりな銃だ。
 レバーを引き、連射にセットし脇にしっかり抱え込みながらまずは3発撃ち込んだ。しりと背中に命中し体液のしぶきが上がる。「行ける!」手ごたえはある。驚いたゴキブリが入り口へガシャガシャ走り出した。その音はやはりそのサイズにふさわしい迫力だった。
 カズヤは冷.静に銃を単発に切り替え、構える。射撃試験のときのように。しっかりと肩にストックを当て、いつもの位置に頬を押し付ける。息を吸い、少し吐いて、止める。左手は優しく銃をにぎり、右手の人差し指で静かに引き金を引いた。機関部から「カキン」という音とバネのたてる「ギチギチ」という音を感じた直後、銃口から吐き出された弾頭はゴキブリの背中に命中した。
 ゴキブリはビクン、と反応して一瞬立ち止まった。若干よろけながらさらに歩き続けるゴキブリの背中にカズヤはありったけの弾を撃ち込んだ。

 弾倉が空になりスライドが後方で固定される。ゴキブリはピクピクと動きながら地べたにその体をゆだねていた。

 だが正直まだ安心はできなかった。ゴキブリは頭部を切り落としても生きているという都市伝説がある。それを裏付ける証拠として、ゴキブリの脳は頭部だけではなく、脊椎に沿うように複数あるのが確認されているのだ。
 カズヤを弾倉を付け替えた後、尻から頭に向けて弾が抜けるように1弾倉分を念入りに撃ち込んだ。
 とうとう、ゴキブリが動かなくなった頃、銃声を聞いた住民が通報し、警察がやってきた。
 カズヤは安心してその場座り込んだ。

 「はぁ、つかれた・・・。」


 
 その後のカズヤはと言うと。
 警察署に任意同行を求められ事情聴取でたっぷり5時間絞られたあと、書類を何枚か書かされ開放された。市街地での正当防衛以外の発砲(昆虫に対しての発砲に正当防衛は法律的にはグレーゾーンなのだとか・・・)は今回は特別に不問となり、駅の器物破損(弾痕)も駅員の命を救ったということで駅から被害届は出ないこととなった。
 全部片付いた頃には太陽はすっかり西に傾きはじめ、都内も安全を確保したとのニュースが流れていた。
 今回の事件でた巨大な生物は都内で12匹が確認され、超法規的に出動の許可された自衛隊によってミンチにされたのが8匹、企業のビルに進入したところを警備の傭兵達に蜂の巣にされたのが1匹。一般人(カズヤ含む)に始末されたのが3匹、とのことだった。
 死者は28名、いずれも原型を留めていなかったそうだ。

 家に着きニュースをつけて必要な情報を確認したカズヤは、今回の件で気になることがあり頭にまとめていた。とにかく不自然な点がありすぎた。まだ特番では触れていなかったようだが、何かと対応が早かったような気がするのだ。
  ・・・早朝のニュースからすでに市民に警報が出され、このことが報じられていたおかげで、死者や事故は少なかったように感じる。そこも気になるが、もうひとつ。警報解除が早すぎる。12匹目の破壊が確認されて割と早い段階で警報が解除されているのだ。まるで、「12匹しかいない」と知っているかのような・・・。12という数字が数を数えるにあたり「1ダース」という単位に当てはまるのも気にかかる。
 どうにも人為的な何かを感じずにいられない。そして政府は何かを知っているとしか・・・。
 そしてもうひとつ思い出した。
 「あ・・・試験どうしよ・・・。」

つづく?

第1話 終了

第2話
→未

【感想】インセクト(仮)第1話
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=29284255&comm_id=3179274

【感想】インセクト(仮)総合
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=29284132&comm_id=3179274

コメント(1)

感想は感想トピへどうぞ!

誤字脱字はこちらで指摘いただけるとありがたいです。

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

【執筆中】オリ小説【下書き】 更新情報

【執筆中】オリ小説【下書き】のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング