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宮大工とオオカミ様コミュの宮大工10:狐誘幻 2

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家に戻ってから、あの少年から貰ったお守りを開けて見る。
中には、艶やかな一房の黒髪。
確かに、俺のお守りだ。なぜ、いつの間に無くなっていたのか。
そして、なぜあの少年が持っていたのか。
混乱しながらも、考えを纏めて行くうちにあの時感じた違和感の正体が閃いた。
神主さんのお子さんは、一人娘のはずだ!
と言う事は、山際で拾った切れ長の瞳の美女はだれだ!?
しかし、確かに神主さんの家に送り届けたし、普通に家に入って言った。
俺は布団の中で考えながら、いつの間にか眠ってしまっていた。

・・・俺は見たことも無い大きな神社の境内に居る。
その広さも、建っているお社の巨大さも驚くほどだ。
大木の根に腰を下ろし、境内を歩くたくさんの巫女や神官の姿をボーっと見つめていると、大きな鳥居を潜ってあの少年が歩いてきた。
俺に気付く風も無くお社に近付いていく。
すると、幾つも有る戸の一つが開いて見覚えの有る艶やかな黒髪が顔を覗かせた。
「オオカミ様!」俺は叫んで、立ち上がろうとした。が、声も出ず、身体も動かない。
少年がオオカミ様に話し掛けているが遠過ぎて声も聞こえない。
なんとか動こうともがいてみるが、辛うじて手指の先が動くくらいだ。
俺は動く指の先に全神経を集中し、動け動け動けと念じていた。

すると、なんとか腕までが動くようになった。丹田に気合を集中して呼吸を錬る。
「ふっ!」気合を入れ、一気に立ち上がると全身が辛うじて動くようになった。
ノロノロと足を出し、オオカミ様と少年が話している方へ歩き出す。
通り過ぎていく巫女達が不振気に俺を注視するが、お構い無しに歩みを進めた。
果てしなく長い距離を徐々に詰めていくとようやく二人の話し声が聞き取れる程の距離まで辿り着いた。
「・・・ありがとう。貴方には苦労を掛けますね。」
鈴の鳴るような澄んだオオカミ様の声が聞こえる。俺はいつの間にか涙を流していた。
「では、これをお渡ししておきます。」
少年がオオカミ様に何かを手渡す。ああ、あれは銀の髪飾りだ。少年は約束を守ってくれたのだ。
オオカミ様はそれを受け取ると、胸に抱くようにして手を交差させた。
オオカミ様の瞳から、涙が流れるのが見えた。
「しかし、あの方は惑わされないでしょうか?人は弱い者ゆえ...」少年が呟く。
「あのひとは...強く、優しいひとです。人ゆえに、迷う事は有りますが、あの方が惑う事は有りません。」
オオカミ様が静かに、ハッキリと答えるのを聞きながら俺の意識は闇に落ちていった。

翌朝目を覚ますと、俺は夢の内容をもう一度反芻した。
そして、親方に電話を入れ、直接神主さんの家へ向かう。
俺が到着した時、ちょうど娘さんが出勤の為に玄関から出てきた所だった。
まあ、と驚く彼女に昨晩のお礼を述べ、出勤するのを見送る。
彼女は家の中へ俺の来訪を告げると名残惜しそうに出勤していった。
「やあ、おはよう。今朝も早いね」神主さんが玄関に顔を出した。挨拶を済まし、中へとお邪魔する。
奥さんが出してくれたお茶を頂きながらお社の事について少し相談した後、俺は意を決して昨晩のことを話した。
「そんなバカな。ウチには一人しか娘は居ないよ。何かの間違いじゃ...」
「いえ、確かにこちらへお送りして、玄関を開けて入っていく所まで確認しました。」
「その時間はもう家族全員眠っていたはずだ。誰も家に入ってきた跡など無い...」

俺は一つ、思い当たる事が有る旨を伝え、電話をお借りして事務所に連絡した。
おかみさんにまだ現場に向かっていないはずの弟弟子の一人を呼んで貰う。
ヤツは、例の一件でお稲荷様に取り憑かれた男だ。
イヤな事を思い出させてすまない、と断った上であの時夢の中でオオカミ様に踏み付けられていた女の人相を聞いてみた。
気の強そうな切れ長の瞳、カタチの良い鼻、少し厚い紅い唇、きゅっと尖った顎。
やはり、間違いない。昨晩拾ったのは、おそらく...
「もしかして、今度は腹いせに○○さんに祟る積りじゃあないか...?」
神主さんが不安気に呟く。確かに、今現在オオカミ様は留守だ。しかし、あの少年も少なくとも敵では無い。
それに、俺には伊勢神宮で手に入れた確信が有る。
「大丈夫です。ご心配には及びません。」俺が力強く答えると、神主さんは安堵の表情となった。
「そうだな、キミがそう言うなら大丈夫だな...ところで、突然話が変わるが○○さんにはお付き合いしている女性は居るのかな?」
本当に突然の問いに俺はビックリしたが、ハッキリと答えた。
「はい、お付き合いしているのでは有りませんが強く想っている女性が居ります。」
「ふーむ。そうか...いや、ヘンな事を聞いた。忘れてください。」

俺は神主さん宅を辞すと、これからやるべき事を整理しながら事務所へと向かった。

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